「山の中でひとり」  第135話
fff4eeb31f-1234353285.png  私は激昂した。
 立ち上がり、お母さんの遺影を壁にたたきつけ、花を叩ききり、仏壇を蹴り飛ばした。
「誰だ!?」
 おじいちゃんが仏間に入ってきた。滅多に表情を変えない人が驚いた顔をしている。
「お嬢?お嬢なのか?ほんとに…お嬢なのか?」
「おじいちゃん!これはなに!?」
「お嬢…。やっぱり生きて…」
 近づこうとしたおじいちゃんに対して、思わずナイフをでたらめに振る。寸前で自制を効かして手を引く。
 おじいちゃんは目を見開いて驚いたけど、すぐ悲しそうな顔をした。
「色々言いたいこともあるだろうけど、危ないから…。とにかく、ナイフを捨ててくれ。」
「そんな事はどうでもいい!お母さんはどうしたのよ!?」
「お前の母さんは、首をつって…自殺した」
 苦しそうに、悲しそうに、でも冷静な声でおじいちゃんは言った。
 それは分かっていた答えだった。
 どこかで安堵している自分がいた。
 それでも私は自分を見失った。
 叫び、泣き、ナイフをただデタラメに振り回した。
 そして気が付くと制圧されていた。

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