「山の中でひとり」  第141話
2cb900a038-1235048864.jpg  神様は時として残酷だ。
 誰かが神様を怒らせたとしても、誰がその報いを受けるか分からない。
 だからこそ、死んだ人を責めてはイケない。

 お父さんが捨てた物で私はここまで命をつないだ。
 お父さんがあそこで大怪我を負っていなければ、
 私は山の中で死んでいたかもしれない。
 お父さん。貴方のおかげで、私はお家まで帰り着いた。
 死体袋を開ける。鼻をつく、独特のすえた臭い。
 袋の底に溜まった生きているウジ虫と死んでいるウジ虫。
 耳がない。指もない。彼だ。

 貴方を見つけたとき、私は他人だと決めつけた。よく似ている人だと思いこんだ。
 貴方をお父さんと認めずに、私を捨てたお父さんを責めた。
 それなのにその日の夜は貴方のそばにいた。
 多分、あの時から分かっていたのだ。
 それでも認めたくなかった。
 お母さんの残酷な嘘を信じ続けようとした。
 私たちは同じ崖から捨てられた。

 それを認めるのが怖かった。
 それ位なら、お父さん。
 例え憎しみの対象でもいい。生きていて欲しかった。

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