「山の中でひとり」 第149話
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結局、おじいちゃんはおじさんにお酒を飲まされて一杯でダウンした。普段、白湯くらいしか飲まない様な人が無理するからだ。 「いい人ね。お酒は弱いけど…」 「えぇ…。お父さんも、私も生まれたときからお世話になってました。お酒は弱いけど…」 「そう。あのね。こんな事今聞くべきか分からないんだけど…。行くところないんでしょ?施設にはいるくらいなら、息子の家に…」 帰るまでに話し合わなければならないこと。目的の内の一つ。 私は首を振る。 「遠慮しているなら、気にしなくてもいいんだよ?家族が一人くらい増えても何とも…」 立ち上がって伸びているおじいちゃんの頭を膝の上に置く。 「おじいちゃんと一緒にいようと思います。生まれたときからずっと、私たちを気にかけてくれた優しい人です。お酒は弱いけど…」 おじいちゃんは真っ赤になって苦しそうにしている。浴衣の袖で汗を拭いてあげる。 「案外ね。最後までかっこよくできない人だし、寂しがり屋さんだから…」 少し頭を持ち上げる。大事な話をしているときに、何してるんでろう。この人は。 「だから、私が付いていてあげないと…」 自分で言って、少し恥ずかしくなってきた。 頭頂部を口を付けてぷぅと息を吹き付ける。 全く、こんな大事なときに…。禿げてしまえ。
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