「山の中でひとり」  第149話
5e40a5ed2b-1235668455.png  結局、おじいちゃんはおじさんにお酒を飲まされて一杯でダウンした。普段、白湯くらいしか飲まない様な人が無理するからだ。
「いい人ね。お酒は弱いけど…」
「えぇ…。お父さんも、私も生まれたときからお世話になってました。お酒は弱いけど…」
「そう。あのね。こんな事今聞くべきか分からないんだけど…。行くところないんでしょ?施設にはいるくらいなら、息子の家に…」
 帰るまでに話し合わなければならないこと。目的の内の一つ。
 私は首を振る。
「遠慮しているなら、気にしなくてもいいんだよ?家族が一人くらい増えても何とも…」
 立ち上がって伸びているおじいちゃんの頭を膝の上に置く。
「おじいちゃんと一緒にいようと思います。生まれたときからずっと、私たちを気にかけてくれた優しい人です。お酒は弱いけど…」
 おじいちゃんは真っ赤になって苦しそうにしている。浴衣の袖で汗を拭いてあげる。
「案外ね。最後までかっこよくできない人だし、寂しがり屋さんだから…」
 少し頭を持ち上げる。大事な話をしているときに、何してるんでろう。この人は。
「だから、私が付いていてあげないと…」
 自分で言って、少し恥ずかしくなってきた。
 頭頂部を口を付けてぷぅと息を吹き付ける。
 全く、こんな大事なときに…。禿げてしまえ。

<< Back || Next >>


|| 山の中でひとり  Top | 描いていただきました | CG | Profile | BBS ||