「山の中でひとり」 第151話
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おじいちゃんが漁師さんに謝りながら船の掃除をしてくれている間に、港の横の岩場から海に入った。もうフラフラだ。 空を見上げながらぼーっとしていると、私の周りに小魚が集まってきた。まるで竜宮城みたいだ。水着をつついてきて、少しくすぐったい。こういうのを南国リゾートというんだろうか。 「美しいな。この国は…」 いつの間にか、掃除を終えたおじいちゃんが岩場に腰を下ろしていた。 「大抵の人々はたおやかだし、向上心があって勤勉だし。いい国だと思う」 ようやく落ち着いてきた。バスの時間までまだ時間がある。 このままゆっくりしていたい。 「ねぇ、おじいちゃん。どうしてお母さんはこの国が嫌いだったのかな?」 「…わからない。ただ彼女は世界平和を謳っていたけど、自分の国を愛せない人間が他人の国を愛せるはずはないと思う」 そのまま二人で海を見ていた。私はおかあさんを思う。
ふと、気づく。
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