「山の中でひとり」  第151話
5e40a5ed2b-1235877603.png  おじいちゃんが漁師さんに謝りながら船の掃除をしてくれている間に、港の横の岩場から海に入った。もうフラフラだ。
 空を見上げながらぼーっとしていると、私の周りに小魚が集まってきた。まるで竜宮城みたいだ。水着をつついてきて、少しくすぐったい。こういうのを南国リゾートというんだろうか。
「美しいな。この国は…」
 いつの間にか、掃除を終えたおじいちゃんが岩場に腰を下ろしていた。
「大抵の人々はたおやかだし、向上心があって勤勉だし。いい国だと思う」
 ようやく落ち着いてきた。バスの時間までまだ時間がある。
 このままゆっくりしていたい。
「ねぇ、おじいちゃん。どうしてお母さんはこの国が嫌いだったのかな?」
「…わからない。ただ彼女は世界平和を謳っていたけど、自分の国を愛せない人間が他人の国を愛せるはずはないと思う」
 そのまま二人で海を見ていた。私はおかあさんを思う。

 ふと、気づく。
「この水着、少し生地が薄いけどサポーターとかいるかなぁ」
「……。なんだ、それ」
「知らなならいい。そう言えばおじいちゃん」
 肩をすくめて、胸の上に手をおいて少し胸を強調したポーズを決めてみる。
「せくしぃ?」
「ゲロまみれで何を言ってるんだ?お前さんは」
 ちょっとぷーっとして、すねる。
「おじいちゃん。好きかなぁって思ってた」
「好きだよ。本当の孫のように思ってる。可愛い孫娘だ」
 普段、そう言うことを言わない人だったから思わず照れた。顔が真っ赤になるのが分かる。
「えへへ。ありがとう。よろしくお願いします。大事にしてね。」
 昨日、みんなで時間をかけて話し合い、おじいちゃんに引き取られる事に決まった。  私がおじいちゃんにお願いした。
「さ、そろそろバスの時間だ。着替えなさい」
 そう言ったおじいちゃんの顔が赤かった。

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