「山の中でひとり」  第154話
1236167021073.png 「あーーー、いや。どうも。はじめまして。えーーっと、いい天気ですね」
 何だかおじいちゃんが対応に苦しんでいた。
 最初、おじいちゃんは胸の小さい女の人が好きなはずだから、照れてるのかと思っていたらそうではないような感じだ。あれ?
「あーーー。もぅ。高志さん!呆れられてるじゃない!!」
「いや。これは一つの精神的修行ですよ!気まずくなるのが怖くて、良いこと言ったふりして逃げ帰ってきた弱い心を克服するために…」
「絶対嘘だ!」
 半泣きだったおばちゃんが、段々鳴き声になってきた。
「いや、大丈夫です。クオリティ高いですって。35才越えて一児の母でこのクオリティはちょっと出せないですよ」
 おじいちゃんが二人の仲裁に入った。
「34才です!!」
 でも、あまり効果はなかった。

「まぁ、好江さんのことは横に置いておいて…。君の分も作っておいたから、良かったら着ておいで」
 そう言っておじさんが紙袋を渡してくれた。やった!

「好江さん。今日は写真撮らないから警戒しないでください」
「じゃぁ、そのカメラは何なのよ」
 もらった服に着替えて居間に来ると、おばさんがみんなに麦茶を配っていた。
「タカヨシ君。楽しいご両親だね」
「いえ。馬鹿な人たちだな、と思います」
「あっ、すいません。着替えてきました。ちょっと恥ずかしいかな?」
「あーーー」
 チャイナドレスの裾を引っ張りながら、みんなの前に出た。
「大丈夫大丈夫。かわいいかわいい。それじゃ写真撮ろっか」
 そう言っておじさんが、写真を撮ってくれた。気が付くとおじさんにのせられて色んなポーズをしていたように思う。
 途中で何故か真っ赤になって固まっていたタカヨシ君を連れて、おばさんが居間を出ていった。
 出ていく好江さんを見て、気づいた。
 私の方が胸がある。
 成長の幅を考えても私の勝ちだ。と、思った。

<< Back || Next >>


|| 山の中でひとり  Top | 描いていただきました | CG | Profile | BBS ||