「山の中でひとり」  第157話
1236425998522.png  「相変わらず、スゴいわねぇ」
 気が付くとタカヨシ君と一緒におばさんがタオルを持ってきてくれた。息を整えながら、お礼を言って汗を拭く。
 タオルを受け取るときにおばさんを見て、目をそらした。
 汗を拭いてシャツを羽織って、息が落ち着くと、タカヨシ君がおばさんの後ろに隠れていた。
 当たり前だけど、タカヨシ君はおばさんには冷たい態度を取らない。
「すいません。タオルありがとうございます…」
 だからというわけじゃないけど、ちょっと胸を強調してみた。
「あぁら?案外発育がいいのねぇ」
 しまった。またやってしまった。何か言って取り繕わなきゃ…
「いいえぇ。まだまだこれからですよ」
 あぁあっぁあっぁぁあああああああっ!

「それだけ発育がいいと、すぐに追いつかれちゃうわね。まぁ、私は胸が5センチ大きいよりかは体重が5キロ少ない方がいいけどね」
 おばさんはニコニコしていた。でも声はいつものにこやかさはなかった。
 まずい。タカヨシ君。こう言う時に上手いこと場を和やかにするのが男の仕事じゃないかな。いや、今のタカヨシ君はおばさんの手中に…
「お母さん、ちょっと…」
 タカヨシ君がおばさんのズボンのを引っ張った。さすがタカヨシ君だ。ナイスタイミング!
「あぁ、ごめんなさい。えっと、タカヨシがお話ししたいって」
「えっ…?」
 タカヨシ君の背中を叩いて、おばさんは言ってしまった。
 残ったのは私とタカヨシ君。二人だけ。ちょっと気まずい。何となく、目を合わせれない。
「あの…」
 二人同時に話し始めて、また目をそらした。なんだか二人でもじもじした。 「神社まで散歩しよっか」
 そう言ってタカヨシ君が先に歩き出した。
 並んで歩くのも恥ずかしかったから、少し後ろをついて行った。

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