「山の中でひとり」 第158話
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私もタカヨシ君も何も話せないまま、神社に着いた。
境内に入って手を洗ってから、お賽銭なしで拝礼した。 それからタカヨシ君が神楽殿に座ったから、私もタカヨシ君の横に座った。 やっぱり会話がない。少しもじもじする。暑くなってきたから、シャツを脱いだ。 「あの…。タカヨシ君?」 「えっ、あ…。うん。なに?」 「えっと…。怒ってるのかな…って」 「ううん。でも、お姉ちゃん、怒ってるんじゃないの?」 タカヨシ君が驚いて私を見て、すぐ目をそらして言った。良かった。昨日のことで怒ってるんじゃないんだ。 「そんなことない。どうして?」 「今朝、恥ずかしくてなって逃げちゃったから…。さっきもお母さんと話してたとき、何だか、怖かった…」 あぁ、おばさんに後で謝らなくちゃ…
「ううん。怒ってないよ。でも、どうして恥ずかしかったの?」
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