私もタカヨシ君も何も話せないまま、神社に着いた。
境内に入って手を洗ってから、お賽銭なしで拝礼した。
それからタカヨシ君が神楽殿に座ったから、私もタカヨシ君の横に座った。
やっぱり会話がない。少しもじもじする。暑くなってきたから、シャツを脱いだ。
「あの…。タカヨシ君?」
「えっ、あ…。うん。なに?」
「えっと…。怒ってるのかな…って」
「ううん。でも、お姉ちゃん、怒ってるんじゃないの?」
タカヨシ君が驚いて私を見て、すぐ目をそらして言った。良かった。昨日のことで怒ってるんじゃないんだ。
「そんなことない。どうして?」
「今朝、恥ずかしくてなって逃げちゃったから…。さっきもお母さんと話してたとき、何だか、怖かった…」
あぁ、おばさんに後で謝らなくちゃ…
「ううん。怒ってないよ。でも、どうして恥ずかしかったの?」
「あっ、いや。あの…。昨日の…、おねえちゃん。可愛かったから…」
二人とも顔が真っ赤になった。その後、何だか緊張の糸が切れて力が抜けた。体勢を立て直そうとして、タカヨシ君の手に私の手が当たる。
「あっ」
思わず二人で見つめ合った。ドキドキしてる。とてもドキドキしている。
タカヨシ君の顔も真っ赤になってる。耳まで真っ赤だ。なんだかタカヨシ君が可愛いと思う。
だからタカヨシ君の手に私の手を被せて、寄り添った。
自然と顔と顔が近づいて、私たちはキスをしていた。
なんだか暖かくて、ドキドキして、でも満たされていて、少し震えた。
タカヨシ君の手が暖かい。あぁ、こういう気持ちを幸せって言うのかなぁと思う。
唇が離れた後もドキドキしていた。
「えっと…、もう一回して?」
隠れ家にいたときは嫌で嫌で仕方がなかったこと。それなのに今はとても満たされている。幸せだと思う。
あの頃を思い出して、舌を入れてみたら、二人ともトロンとしてしばらく動けなくなった。
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