家に帰ると、いつもと同じようにおばさんがお昼ご飯を食べさせてくれた。
よくよく考えてみると、おばさんは小さな事で怒ったりしない人だった。取り越し苦労だった。タカヨシ君と二人でホッとした。
お昼ご飯はお素麺と茄子を焼いたのを味噌に付けて食べる何かとオクラの白和え。キュウリと茄子のどぼ漬け。美味しい。
「タカヨシ、ほうれん草の種をおばあちゃんちに行って貰っていってくれる?貴女は片付け手伝ってね」
ごちそうさまして、タカヨシ君を送り出してから、私はおばさんと食器を片付けた。
「さて後片付けも終わったわね。お話があるからこっち来なさい」
そう言ったおばさんの声に、いつものにこやかさはなかった。
しまった。と思ったときにはおばさんはおじいちゃんと一緒に並んで座っていた。
「はい…」
怒られるな。これは怒られるな。あぅう…。
「さて、お話があります」
あぁ、来たよ。来ましたよ。
「お嬢。お前スペイン語は話せるな。ポルトガル語は分かるか?」
意外なおじいちゃんの言葉。あれ?
「ポルトガル語?ブラジルの人が話す言葉?ガールスカウトに沢山ブラジルの人がいたから、一応、話せるよ」
「話せるの!?」
おばさんが驚いていた。
「英語以外は読み書きは出来ないけど…。漢字もほとんど読めないし…」
「あのね。駐在さんが警察で通訳さんを探しているっていってたから、聞いてみたのよ?そしたら、さすがに子供は雇えないって断られたのよ」
それはそうだろうなと思う。
「でもね。協力者に対する謝礼金としてなら、お金は頂けるそうなの。そりゃ定期的にお仕事がある訳じゃないし、小学校とは別の難しい勉強もしなくちゃならないと思う。それに、こっちに越してこなくちゃならないけど、家計の足しにはなると思う。一度話を聞いてみる?」
こっちに引っ越す?
「こっちに引っ越す…」
こっちに引っ越せば…。引っ越せば…、引っ越せば………
うん、いい話だ。
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