「山の中でひとり」  第163話
1236908292220.png  おじさんのお友達からマツダのバンを貸していただいた。
 これだけの広さがあれば私たちの似持ちは全部入る。
 バン一個分の荷物。
 それが私たち二人の日本での生活。

 お家の中にあるもう着れなくなった服は捨ててしまおう。
 私の部屋にあるガールスカウトの時の私物。
 エディカルの手紙と薬莢二つ。
 隠れ家を出るときに盗んだキーホルダー、クボタン。
 空港で取り上げられそうになったけど、返してもらえた。
 お父さんの遺してくれた鞄。それに入りきる荷物。
 それが私の人生。

「運転に疲れたら、言ってね。代わるから」
 そう言うと、お爺さんは免許がないからダメだといって笑った。
 さぁ、お家に帰ろう。

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