「山の中でひとり」  第165話
1237107477429.png  アナタじゃ、ちゃんとした字は読めないだろうから、
かんたんな言葉で書きます。

 おじいちゃんを送り出した後、私はお母さんの部屋の戸棚を開いた。
 そこには「娘へ」と書かれた一通の封筒と何か液体が入ってる白いポリ容器。
 私は読み書きがあまり出来ないが、話し言葉で書かれたお母さんの手紙は漢字には丁寧にカナが振ってあった。さすがに元先生だっただけあって、ポイントを押さえた分かりやすい文章だった。
 あははは。
 台所の上からコップを置いてちゃぶ台において、もう一度読み返した。
 あははははははは。

 この手紙を誰かが読む頃には、私はもうこの世にはいないでしょう。
 娘以外の人はこの手紙をこれ以上読むことなく、捨ててください。
 この手紙を読んでいるのが、アナタであることを祈っています。
 アナタは山の中から出てこれたのね?

 アナタの部屋から、たくさんの手紙を見つけました。
 きたない字で、まちがいだらけの英語ばかりで、
 とても読めたものではありませんでしたが、お母さんガンバりました。
 アナタのお友達はとても、あたまがわるいようですね。
 そのお手紙でアナタががいこくでしてきた、わるいコトを知りました。

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