「山の中でひとり」  第169話
1237422503274.png  苦しくても意識は飛ばない。ただ、苦しみもがいた。  おじいちゃんの声。
 何をされているか分からなかったが、自分のカラダを伝って何回も吐き戻す音が聞こえる。

 おじいちゃんが泣いてる。
 ここは田舎だから、救急車なんてすぐに来ない。
 おじいちゃんが私を抱いて、私に話しかけ続けている。
 だけど、何を言っているか分からない。
 お母さんの手紙を読んだみたいだ。なんとなく、それだけは分かった。
 もう私のために頑張らなくていいと思う。自分のために生きていいと思う。
 この家に帰ってきたとき、私はお母さんを殺して私も死ぬつもりだった。
 お母さんも失敗したけれども、私を殺したと思って自殺した。
 親子だな、と思う。
 あははは。親子だなぁ。ほんと、そっくりだ。

「どうして、あなたは人に強烈なまでの反省を迫るのに、自らは決して反省しないんだ!!」

 おじいちゃんが叫んだ。
 それはね。おじいちゃん。
 多分、お母さんは他の人のことが大嫌いで、でも自分のことはそんなに嫌いじゃないからだよ。

 だから自分を好きになってくれたお父さんが好きで、
 私のことばかり話すお父さんが大嫌いで、
 自分のことが嫌っていると思っていた私のことが大嫌いで、
 自分のことを褒めてくれる仲間が好きで、
 自分を捨てた仲間に絶望していて、
 自分が好きな生き方が出来なかった自分のことが許せなくて、
 でも自分のコトだけは、大嫌いになれなかったんだよ。

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