「山の中でひとり」  第170話
1237488736242.png  目が覚める

 長い夢を見ていた。あぁ、学校に行く準備をしなくちゃ。
 今日は新学期、遅刻しちゃダメだ…
 顔を洗って、歯を磨いて、髪をとかして…
 おじいちゃんと朝ご飯を用意しなくちゃ。
 今日こそおじいちゃんに納豆を食べさせてやる。

 …とかだったら、本当に良かった。
 結論から言うと私は失敗した。
 絶え間ない頭痛と吐き気と悪寒。
 病院のベッドの中で体力が切れるまで苦しんで、気絶するように眠る。
 眠っているときですら苦しみ続けていたらしい。汗だくだ。

 どの位の時間、苦しんだのか分からない。
 目が覚めたとき、ベッドの脇で私の手を握って眠っているタカヨシ君がいた。
 気が付くと頭痛も随分楽になって、冷静に考えることが出来るようになっていた。
 わざわざ村から来てくれたんだ。
 またみんなに迷惑をかけてしまった。
 嫌われたかな?
 こんなに思い女と一緒になったらこれから大変だ。

 タカヨシ君が起きたらどんな顔をすれば良いんだろうか?
 何て言って謝れば良いんだろうか?
 分からない。
 気が付くとタカヨシ君のそばでお母さんが優しく手招きしていた。 

 思わずびくっとして身体が動いた。
 「ううぅん…?」
 あぁ、しまった。タカヨシ君が目を覚ます…

「よぉ、カール」
 最悪だ!
「あっ!あぁ、お姉ちゃん!!おかあさん!!お姉ちゃんが!!」
 タカヨシ君が叫んだ。スルーされた!
 ドタドタと靴音を鳴らして、廊下からおばさん病室に入ってきていきなり私の頬を叩いた。
「目が覚めた!一体どれほど心配したと思ってるの!!」
 さすがに言葉もない。つらい。
「ちょっと!黙ってるんじゃないわよ!!見なさい!!」
 そう言っておばさんがベッドの脇から何かを引っ張り出した。
 それが何だか分からなかったけど、目をそらた。
「見なさい!!私の言うことが聞けないの!!」
 そう言っておばさんは何かをピンっと引っ張った。
 下腹部に針で刺すような痛みが走る。
「いたいたいたいたいたいいいたいたい!!!」
「見ろって言ってんのよ!!見なさい!!何回取り替えても、血が混じって午後の紅茶みたいになってるアナタのオシッコ袋よ!!」
「ちょっ、かお。げふっ声が出なっ!ごっほ。顔に!顔に押し付けないでください!!」

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