「山の中でひとり」  第171話
1237617145079.png 「ごめんなさい…」

 我ながら謝意の感じられない言葉だった。
 もう一度、思いっきり私の顔を叩いておばさんはまた出ていった。
「お母さん、どこ行くの!?」
「トイレよ!!来んな!!」
 あぁ、おばさんが怒ってる。どうしよう…
 つらい。
 うなだれたとき、一瞬、テレビ台の袖机にお母さんを見た。
 優しく微笑んで手招きをしていた…、様な気がする。

 でも何度見直しても、そこにはいなかった。

 私のことを心配そうに見るタカヨシ君の視線が痛かった。
 私がどうしてもタカヨシ君の目を見れなかったのは、
 おっかなびっくりオシッコ袋を定位置に直してくれていた。
 彼に対する気恥ずかしさせいだけじゃない。

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