「山の中でひとり」  第172話
1237653542718.png  私は今も生暖かい泥の中にいる。

 おばさん達が私のことを心配してくれている。
 それは痛いほど分かる。

 お母さんの手紙をみんなが読んだことだろう
 警察がその内容を信じても、信じなくても、
 今、この国で私は罰せられることはない

 おばさん達は私のことを軽蔑するだろうか、
 それとも同情するだろうか
 わからない

 もはや私は許しを請う相手すら分からなくなった

   みんな優しくて思いやりのある人たちばかりだ
 私は泥の中でのたうち回りながら、自分だけでは飽きたらず、
 差し伸ばされたみんなの優しい手まで泥まみれにする
 みんなの手は綺麗で、柔らかくて、優しい…

 タカヨシ君といっしょに神社で身体を寄せ合った日
 私はその手を握りしめることを知った筈だ

 あのお母さんは私自身の罪の意識そのものだ
 身勝手なのは分かっている
 見るな。忘れろ
 ここから抜け出さなきゃ…

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