「あなたに許してほしい」  第11話
 さっちゃんは私の耳を持って、部屋の外に出た。
 まだ鏡で確認していないせいか耳を失ったダメージは意外と少なかった。それよりも、友恵が心配だった。
 友恵がさっちゃんにヒドい事をされていないか…
 あの子はおとなしそうでいて、気が強いからひどい目にあわされているはずだ。
 そう思うと、胸が張り裂けそうになる。
 さっちゃんに懇願しても、友恵は解放されるわけがない。
 どう考えても、友恵を救い出す方法が思いつかなかった。
 でも、そのおかげで不可思議な事に気が付いた。

 さっちゃんが友恵をさらったとして、髪の毛の束と眼鏡だけを見せて、
 友恵の声すら聞かせないという事が本当にあり得るだろうか?
 髪の毛なんてウィッグで誤魔化せるし、眼鏡だってそうだ。さっちゃんは私を追いつめるために嘘をついたのかもしれない。
 考え出すと、さっちゃんが嘘をついてると考えた方が合理的だった。
 さっちゃんはかしこい娘だから、最終目的が何にせよ、そんなリスキーな事をするはずがない。
 私はもう、友恵がさらわれたのは嘘だとしか考えられなくなった。だからさっちゃんに対する怒りがこみ上げてきた。
 この感情こそが、さっちゃんの狙いなのかどうかは分からない。でも、そんなのは関係なかった。ただ、さっちゃんが憎らしくなった。

 ドアが開く。さっちゃんは微笑んでいた。
「友恵ちゃんって意固地ね。全然私の言う事信じてくれないの」
 嘘だ…。友恵がいるなら携帯でも、MDでもいい。声を聞かせるはずだ。
「人を信じられないのは悲しい事よね?私はそう思うの…。頭に来る。」
 嘘つき。友恵はここにいない。
「美術部なら、ダリのアンダルシアの犬って知ってるよね」
 そう言ってさっちゃんはカッターを見せた。背筋が凍り付いた。怖さで身体が動かない。
「相互責任って言ったよね?妹さんのペナルティはお姉ちゃんが払わないとね」

 

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