「あなたに許してほしい」  第13話
OB1196693180417.png 「いやよ」
 さっちゃんは無下に私の要求を却下した。
「さっちゃん!友恵にあわせて!!」
 間髪を入れずに怒りを込めて叫ぶ。私はさっちゃんの肩がびくっとしたのを見逃さない。
 絶対的な立場の人間は驚かない。冷笑するのみだ。友恵はここにいない。
「フェアじゃないわ!友恵が無事だと証明して!」
「私に命令できる立場だと思ってるの!?」
 はじめてさっちゃんが感情的になった。
「そんなの関係ない!!友恵が心配なの!!友恵が無事じゃなきゃ、さっちゃんの言う事聞く意味がないじゃない!!」
「うるさい!黙れ!!」
「あなたこそ黙りなさい!!」
 出来る限り理性的な声でさっちゃんの気勢をを削ぐ。さっちゃんが黙る。
 たとえ一時的でも、イニシアチブを私が握った。
「ホントは友恵はここにいないんでしょ?さっちゃん一人で二人も誘拐できるとは思えないわ。
さっきの髪の毛や眼鏡だっていくらでも代わりがあるはずよ…。ここに友恵はいないわ。この嘘つき!!」
 形勢逆転で私は昂ぶる。このまま手玉にとってやる。さっちゃんの思い通りになんてさせるものか。
 私はさっちゃんをにらみつける。
 さっちゃんは私から目をそらして、部屋を出て行く。彼女の泣き顔が私に勝利の優越感と希望を与えた。

 

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