だからね。ペナルティよ…」
そう言ってさっちゃんは私の目の前に何かを落とした。ひとつ、ふたつ、みっつ…
それが私の太ももに落ちた。
それは切断された指だった。
思いも掛けなかったショックで過呼吸になる。一気に口の中が乾く。
パニックになりながら、太ももの上の指をふるい落とそうとして、壊された足の激痛にうめく。
痛みで冷静になってすぐに誰の指か気が付いて、青ざめた。
「漫画家になりたかったのね。友恵ちゃん。でも、もう無理ね!」
またパニックに陥る。友恵がいた。友恵がいた。
さっちゃんの笑う声。私の叫ぶ声。泣き声。どこにも友恵の声が聞こえない。
私は自分の軽薄さに打ちのめされた。この部屋の外に友恵はいたんだ。
少しずつ落ち着いてくるたびに、さっちゃんの顔を見る。そして耐えきれず泣く。そのたびにさっちゃんは嬉しそうに笑った。
「私が…。私がいったい何したってのよ…。何してたって、友恵は関係ないじゃない。友恵ぇ。」
私はさっちゃんに何か言おうとする。でも、最後まで言えなかった。そして、さっちゃんの笑い声がぴたっと止まった。
怖いと思ったけど、もうどうでも良いとも思った。
「なに?その言い方。まるで私が悪いみたいじゃない。あなたのせいじゃない。」
さっちゃんが突然感情的になった。
「貴女が私のことをすぐに殺していてくれたら!貴女さえ私のお願い聞いてくれたら、友恵ちゃんは怪我しなくてすんだのよ!」
「そんなの知らないわよ!友恵の手を治してよ!友恵をかえしてよ…。もうやだよ…」
さっちゃんは私の顔を平手で叩いた。口の中がまた切れた。血の味。
「だったら私を殺しなさい。この部屋の鍵も、友恵ちゃんのいる部屋の鍵も、この階から出るための鍵も私が隠して持ってるわ。私を殺して、探し出しなさい」
さっちゃんは激昂していた。それを理性で無理矢理押さえつけながら話した。
「分かったわよ!殺してあげるわよ!!包丁でも何でも持ってきなさいよ!!」
もう一度私を殴って、息を整えながらさっちゃんは言った。
「またそうやって嘘付く気でしょ?もう何回も嘘つかれたもん。そんなの信用できないわ」
|