「私…」  第5話
その後、私はことあるごとにため息をついた。
 哀れむように、悲しむように、同情しながら、わざと目をそらしてため息をついた。
 私も私から目をそらした。

 ある日、データをチェックし終えた後、ふっと自然にため息が出た。意識せずに出た、心からのため息…。

「うまずめ」

 私の足下で私が言った。
 あえて言葉を教えなかった私が、言葉をしゃべった。そんなことよりも私の言葉に私は凍り付いた。
「石女」
 私は確かにそう言った。ほかの研究員が教えたのか、それとも陰口を覚えたのか。そんなことはどうでもいい。
 私は目の前が真っ赤になって、持っていた画板を私の顔目がけて振り下ろした。  顔が深く切れ、大きく割れる。
 うずくまった私に向けて、画板を投げつける
 殴る
 蹴る
 踏みにじる
 私が泣き叫んでもやめない。また殴る
 そしてお腹に埋め込まれたセンサーを引きずり出そうとコードに手をかける。私が抵抗する。殴る
 女とはいえ大人の私の力に私は勝てない。だんだんと引きずり出されるセンサーがいとおしい。抱きしめたい。

 それを胸に抱く前に、私は同僚に取り押さえられた…。

<< Back || Next >>


|| 私…  Top | CG | Profile | BBS ||