「?」 第12話
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「私…、子供の頃お母さんに捨てられたんですよ」 今は大人の体。大きな手。 「お気の毒に…」 隣の女性が気の毒そうに謝りました。優しい人… 「別にそんな事は…。多分お母さんにはお母さんの事情があったんですよ。仕方がないです。でも、もう一度お母さんにまた会いたいって思ってたんですよ」 「その髪がお母さんとの約束?」 「いえ。でも、よくお母さんがこの髪を結ってくれたんですよ。だから…」 ふと気が付くと隣の女性が少し涙ぐんでいました。本当に優しい人。 「私、わがままな子だったんですね。色んな人に怒られて…。お母さんの気持ちも全然考えなくて…。でも馬鹿だから…、わからなかったんですよ。どうしてこんな目に遭うんだろう?私、何か悪い事したかなって…。いつも「?」って思ってました」 「「?」?」 「はい。えっと…、理不尽だなって。私がわがまませいだったのに…」 風鈴の音の乾いた音が聞こえました。おくれて風が吹き抜けました。気持ちいい。 「もしできるなら、私がご迷惑かけた皆さんにお詫びしたいです」 風鈴の音がどこかで心地よく響いています。 「許してくれないかもしれないけど、お母さんや皆さんに…、もう一度謝りたいです」 風鈴の音が少しずつ大きくなっているような気がします。 「お母さんや、産婦人科のお医者様や、目医者様。あの汽車の運転手さんや、今までご迷惑をかけてきたたくさんの人にもう一度…」 風鈴の音が聞こえます。大きな音… |