3835d1b9a5-1253615139.png うんちくパート

 ハセガワ
  「何も食べさせてもらえないお腹がすいた子供の前に、
  美味しそうなチーズを置いたらどうなるかしらね?
  それよりも、健康な少女からしか取れない筈のレンネットを
  病死献体から採取する方法は?

  現在ではごく限られた人間しか、動物性レンネットを求めない。
  それを求めて得られるのは、対価を支払えるお金持ちしかいないわよね?
  お金持ちが求めるのだから、当然、質が要求される。
  これは前に人が非常食から嗜好品に変わっていったってところで
  説明したとおりね。

    本当に何の根拠もないけどね。
  東欧での混乱は演出されたものじゃないかって思う。
  伝統を守るために、小国を混乱の渦に巻き込み続けること。
    そうやってでも伝統的な酵素を手に入れること…
  チーズはヨーロッパ中に広まってるからね。損得計算は合うわよね。


「チーズの話」  第10話


 叔父様が帰ってきた。
 叔父様は以前と同じように優しく私を抱きしめてくれた。
 それはとても嬉しかったけど、同時に叔父様に対する罪悪感はそれよりも大きくなった。
 私は罪を犯した。それなのに叔父様は優しくしてくれる。

 叔父様は私の病気の特効薬になる特殊なチーズを持って帰ってくれた。
 あの日から叔父様は必死で、この貴重で高価なチーズを探し回っていてくれた。
 感謝の言葉もない。
 私は感謝の言葉もなくて、ただ優しい叔父様の胸で泣いた。

 私はもう助かることはないけど、このチーズを食べれば体調が良くなるらしい。
 好きな物も少しの間だけど食べられるようになるらしい。

 ただ…、と叔父様は言った。

 そう。これは世界で最後のチーズ。

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