「鮭児の時知らずタン」  第3話
 時知らずタンは引っ込み思案なので、いままで少しみんなと離れたところで一人で泳いでいました。だから、沢山の人がいるこの群れにいるのはそれだけで怖くてビクビクしていました。それにみんなからだが大きかったから、なんだか小さな自分が恥ずかしくて仕方ありませんでした。気がつくと誰もいなくて、怖くなって合流したのに、やっぱりまたみんなから少し離れたところに逃げようと思いました。
「だめ。食べなきゃだめ〜」
 と、突然見知らぬお姉さんに腕を引っ張られて食べ物を口に押し込まれました。
「あまり今までご飯、食べなかったでしょぉ。この先持たないから、今のうちに食べなきゃだめ〜」
 突然の事に口をパクパクしている時知らずタンをお姉さんは優しく抱きしめて、おっとりした口調でいいました
「今まで頑張ってきたんだから、ちゃんと体力つけなきゃだめ〜」
 時知らずタンは今まで誰かに優しくしてもらった事がなかったから、何だか恥ずかしくて、情けなくて、悲しくて、でも嬉しくて、少し泣きながら食べ物を口に入れました。

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