「鮭児の時知らずタン」  第26話
 振り上げられた手。振り下ろされる手。首を握る重い手。ただもがき続ける自分…
 時知らずタンは、自分のせいでお姉さんがどうしようもない程ひどく傷つく事を知っていました。だから自分が殴られるのは仕方がないと思いました。
「約束です!生きて下さい!!」
 そして自分はお姉さんの激情を受け入れるべきだと考えていました。
「怪我した目が見えないのもわかります!」
 それはなれ合いだというのも分かっていました。でも、それが優しさじゃないかとも考えました。
「足も不自由になって真っ直ぐ走れなくなったのも分かります!!」
 だから、自分の気持ちが残酷な事だと思いました。
「それでも!まだ生きているんだから。まだ歩けるんだから!」
 それでも…
「せめて強く生きて下さい!!!」
 時知らずタンはお姉さんにあきらめずに生きて欲しいと思いました。

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