「鮭児の時知らずタン」  第32話
 岩場に座り込んで、二人は何もいわずポーッとまどろんでいました。しばらく二人でポーッとしているとお姉さんは時知らずタンの手を優しく握って言いました。
「あのね…。初めてあなたを見た時、子供みたいな子だなっておもったの。あなたはとても小さくて、オドオドしていて、寂しそうな顔してたから…」
 なんだか誰かと手をつないだ事がなかったから少し照れくさくて、時知らずタンは適当な相づちを打ってしまいました。
「でもね。助けに来てくれた時、なんだか変な言い方だけどすごく大人っぽく見えたの。おかしいよね。それに、いまちょっと思ったんだけど。なんて言うか…。こんなに大きかったかなって」
「えっと…、なにがです?」
 お姉さんはちょっと目をそらして照れくさそうに言いました。
「あー、えっと、胸」
「えっ!あの、いや、その、えっと…また成長期にでも入ったのかなぁ」
 突然のことで驚いてしまって、思わず胸を手で隠しました。それに、すぐに顔がまっかになって耳が熱くて恥ずかしくて仕方ありませんでした。お姉さんはそんな時知らずタンをみて大笑いしました。
 恥ずかしくて縮こまりながら時知らずタンは思いました。
(確かに大きくなってる様な気がする…)
 そう思うともっと顔が真っ赤になりました

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