「鮭児の時知らずタン」  第31話
 お姉さんは足がとても痛かったし、遠近感がつかめなくて何度も転びました。でも時知らずタンがいてくれたから、とにかく歩きました。
 何とかたどり着いた岩場に身を隠す前に、来た道を振り返りました。そこには暗くて静かなただ海が広がっているだけでした。
「あそこから見たら、ここも同じようにただの暗い海なんでしょうねぇ」
「そうですね。多分…そうだと思います」
「暗いね…」
「うん。暗いですね…」
 二人で少しの間遠くを眺めてから、岩場に身を隠しました

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