「鮭児の時知らずタン」  第37話
「まだ、故郷にいる時。私が薄い膜の中にいる頃、その人は私のすぐ近くにいたの…」
 お姉さんは遠い故郷を思い出しながらいいました
「浅い水。草、空の中の木や草…。あの頃って何もかもが珍しくて、楽しくて…。男の子も女の子も関係なかったじゃない?だか

ら何時もその人と私は一緒に遊んでた。あの時は良いお友達だと思ってて…、だからすごい楽しかったなぁ。」
「あの群れの中にいた人ですか?」
「ううん…。海に出てからしばらくして、なんとなくお互い意識しあうようになって…。それで、気がついたらその人とはぐれて

た…。」
「あっ、すいません。」
「いいの。気にしないで。でね、故郷に戻ったらまたあの人に会えると思うんだ…。」
 気がついたらお姉さんが泣いていました。

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