「鮭児の時知らずタン」  第38話
 お姉さんは泣きながら話しました
「あの人がまだ生きているかどうかも分からないし、私の事をもう忘れてしまったかも…。それに、他に好きな人がいるかもしれ

ない。うん、それは分かってるわ…」
 時知らずタンは何を言って良いか分からなかったのでとりあえずお姉さんの手を握りました
「それでも、故郷であの人に出会えると信じていたから、少しでも綺麗になろうって頑張ってた…。多分、鳥が空を飛べるのは飛

べるって信じてたから飛べるようになったと思うの…。」
「その鳥は、私たちを食べます」
「そうね…」
 お姉さんは子供の頃に見た鳥を思い出しながらうなずきました。
 高く、高く。そして優雅に。一瞬で空を飛ぶ鳥は隣を泳いでいた仲間を連れ去っていった、鳥を。

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