「鮭児の時知らずタン」  第39話
「食べられたくない。逃げたい。隠れたい。出来れば何もいない所に行きたい。でも、お腹が空くのは嫌だ。食べたい」
「だから、鳥は空を飛んだんですか?」
「分からない。でもそうじゃないかと思う」
「ひどい…」
「貴女はやっぱりいい人ね…。でも、誰だってそう思ってるわ。私だってそう思う…」
 そう言ってお姉さんは天を仰ぎました。でも、岩陰に隠れているから、空はまるで見えませんでした。
「空を飛べれば、それがかなう。自分たちはそれが出来る。そう信じ続けたから、鳥は空を飛んだのよ。鳥は信じ続けた夢をつか

んだのよ。だから私もあの人にまた会えるって信じてた。鳥のように、信じて努力してれば実現出来るんだって、信じてた。」

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