秋が来て優しい風が山に吹いた。
ソメイヨシノさんもまたいっぱしの形になってきた。
大人達ももう遊びに来ることもなく、山は静かだった。
突然、山桜さんは着物の袖を引っ張られて下を向くと子供がいた。
「だっこしなさい」
あぁ、ソメイヨシノさんなんだな。と山桜さんは思った。
「はやく、だっこしなさい」
ソメイヨシノさんの頭を撫でる。随分小さくなってしまったものだと思う。
「あなたは泣かないのね?」
「別に泣く理由がない」
「まったく、感動のない子ね。ちっとも変わらないわね」
「そんなことより、はやくだっこしなさい」
はいはい。と山桜さんはソメイヨシノさんを抱き上げた。
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