注目集める不動産オークション市場の動向 その2

その1 では、不動産オークションの歴史や海外の状況について解説しましたが、
今回はオークションそのものの持つ特徴や特性を中心に見ていきます。

1.オークションとは?

取引の最適価格を見つけ出す合理的なメカニズム

 オークションとは、売り手の提供する品物に対して、複数の買い手が入札額を提示し、基本的ににはもっとも高い値をつけた、すなわち売り手にとって魅力的な額を提示した買い手だけが品物を買うことができるという仕組みです。最適な価格を見つけ出すための合理的なメカリズムであると同時に、売り手と買い手のコミュニケーションが生まれる一種のコミュニティの性格も持ちます。
 オークションは、売り手にとっては買い手が多いほど品物が高く売れる可能性があります。一方、買い手にとっては売り手が多いほど、多くの品物の中から欲しいものを見つけられる可能性があります。そのため、オークションの規模が大きいほど双方にメリットがあります。結果的に、規模が成長するとさらに人が呼び込まれ、いっそうの成長をしていく傾向があります。
 複数の売り手が提供する情報を、複数の買い手が探し出す必要があるため、この仕組みは、インターネットの性質と相性の良いものです。インターネットの登場にともない、ネットワークを利用した、インターネットオークションの仕組みが確立したのは当然のことと言えるでしょう。
 不動産の売買にとって、オークション方式はどのようなメリットがあるでしょうか。まず、オープンな場で決まった明解な「市場価格」での取引ができること、そのプロセスの透明性が高いこと、不動産業者だけでなく一般消費者も含めた人々に開かれることで市場がひろがること、などが挙げられます。
 不動産流通の課題とも言える、透明性の高い情報提供による市場の効率化、完全化への第一歩として、オークション方式は非常に都合のよいものであると言えます。売り手にとっては売却のチャンスが増え、買い手にとっても自分の欲しい物件を見つけることができるので、不動産のオークションは、今後、わが国においても支持され、普及していくものと予想されます。

米国ではオークションサイトがビジネス基盤として定着

 一方、米国では、強力なオークションサイトの登場で、オークションというものの可能性がいっそう広がっています。運営会社はサイトという「場」の提供に徹したことで、サイト上では、売り手と買い手の自由で活発な取引が行われるコミュニティが成立しました。参加者は自由に意見を交換し、このコミュニティに参加すること自体が、オークション参加の動機づけにもなっています。
 また、小売店や卸売店が、在庫を処分する販売チャンネルとして、あるいは小売店が仕入チャンネルとしてオークションサイトを利用するといった、ビジネス用途でのオークションの利用も増えています。オークションサイトは米国の新しいビジネス基盤として定着したとも言えるでしょう。

オークションサイトを広告として利用する例も

 また米国ではオークションサイトは広告にも利用されています。知名度の高いオークションサイトに出品することで、商品の顧客に直にアクセスすることができます。出品情報から自社のウェブサイトの情報などへリンクをしておけば、商品に興味を持つ顧客を自社サイトへ誘導する役割が果たせるのです。商品に興味のある顧客に、確実に情報を届けられるのですから、この手法は、マス媒体への広告などより費用対効果のよいものとして企業に認知されつつあります。

2.不動産オークション取引の流れ

ネットオークションといっても本質的な部分は相対取引と同じ

 では次に実際の不動産インターネットオークションの流れを見て行きましょう。オークションサイトによって、それぞれ独自のルールがありますが、基本的な部分は共通しています。

図表●オークションの流れ

出展 売主が仲介業者と媒介契約を交わし、物件を出展。そして仲介業者と相談の上、最低売却価格を設定します。
出展期間はおおむね1ヶ月前後が多い。
物件検索・検討 購入者は通常の不動産情報サイトと同様に、情報を検索して希望の物件を探します。
興味があれば問合せや、購入を検討する場合には内覧対応を行います。
入札 購入希望者から入札があります。最低売却価格以上で、それぞれの入札者が適切な価格を提示するため、
売主・買主双方が納得する価格が合理的に形成されます。
落札 最低売却価格以上で、もっとも高い額を提示した入札者が落札者になり、購入の権利を得ます。
契約に向けて、手続きを進めるべく売主・買主と連絡をとります。
契約・決済 おおむね一ヶ月以内に契約を行います。万が一、落札者と契約に至らなかった場合には、次点の入札者に
購入の権利が移ります。

■購入の手順

 インターネットオークションで不動産を購入する場合、まずは不動産情報サイトと同様に、情報を検索するなどして、希望にかなう物件を探します。興味のある物件が見つかったら、出品者に問合せを行ったり、内覧を申し込んだりなどします。空室の物件であれば内覧(住居中でも外観の案内など)は、たいてい受け付けてもらうことができます。これは、原則として入札を開始する前に行います。つまり、物件に出会うキッカケや、その後の購買の手順がネットを利用したものである、というだけで、気になる物件については内覧などをしたうえで購入を検討するという部分は、通常の不動産購入と変わりありません。
 物件を購入する意志が固まったら、入札に参加します。売主が提示した最低売却価格以上で、もっとも高値を出した入札者が、物件を落札することになります。落札すると原則として購入することを前提に、出展者と落札者の間で契約などの手続きへと進みます。オークションサイトや物件情報を提供している業者が、この進行を管理します。

■出展の手順

 物件を売却するために出展する場合も、流れは同じです。売主は、オークションサイトに加盟する仲介業者と媒介契約を行い、出展してもらいます。最低売却価格などをどのように設定すればよいかは、仲介業者と相談しますが、最終的には売主の意志で決めることになります。
 物件が出展され、サイトに情報が掲載されるのは、おおむね2週間から1ヶ月ほどが標準です。この間に、購入検討者の内覧を受け付けるなどします。落札されたら、落札者と売却の契約を行いますが、ときに折り合わずに、落札者と契約を結ばないこともあります。その場合は、次点者、または他の入札者との話し合いになします。不動産のインターネットオークションでは、落札者といっても、それは「優先購入権を持つ人」という意味合いになるのです。決して機械的に処理されるのではなく、相対取引と同様に、関係者がコミュニケーションをとりながら進みます。

3.情報の提供と開示

 最後に、最近の情報開示に関する流れを説明しておきます。
 近年では不動産市場と金融市場の融合が進展しており、不動産市場における情報の非対称性が大きな問題になってきています。不動産の場合、その商品の個別性が強いため、金融商品のように、個々の情報を投資家に広く公開することは簡単なことではありません。しかし、不動産が金融商品化しつつあるため、一般の投資家も含めた利害関係者(ステークホルダー)への情報開示は、従来にも増して重要なことと認識されています。
 そのためには、不動産取引における情報インフラの拡充は必須と考えられており、市場自体の透明性を高めることが、不動産流通市場の発展、活性化には不可欠です。今後の不動産オークション市場にはそのような役割も期待されていると考えられます。


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