短賃保護が消える
「担保物権および民事執行制度の改善のための民法などの一部改正法」(以下新法)によって、短期賃貸借制度が廃止される。短賃(期間3年以内の建物賃貸借)は抵当権者に対抗することができるため、抵当権の実行によって競売が実施された場合でも、契約期間内であれば買受人に対し、賃借権と敷金返還請求権を主張することができる。
4月からはこの短賃保護がなくなるため、抵当権に後れる賃貸借はその期間の長短に関わらず、抵当権者及び競売の買受人に対抗することができなくなる。そのかわり、建物の所有権が買受人に移転したときから、6ヶ月間の明渡し猶予期間が与えられる。長期賃貸借人にも認められている。
問題は、預けていた敷金の返還である。従来の短賃制度によれば賃貸借契約が買受人に引き継がれるのに伴い、敷金返還債務も買受人が引き継ぐ。
しかし、4月以降の契約では、短期賃貸借でも買受人には一切対抗できないため、資金返還債務も承継されない。旧オーナーにはその資力がないため、結果として敷金の返還は受けられないことになる。
こうした法改正による権利関係の変化について、重要事項説明に加えるべきかどうかが注目されている。この点については「宅地建物取引業法上の問題と、顧客などとのトラブルを避けるという意味での実務的対応を分けて考えるべき」という意見が有力だ。
つまり法律的には物件に抵当権が設定されていることだけの説明で足りる。しかし、新法による短賃廃止の内容が十分に社会に認知されていない状況では、仲介業者などに対する損害賠償請求の訴訟提起もあり得るため、トラブル回避の観点からは事前に説明しておく方が無難ということになる。