どうなる不動産業界への影響
〜4月1日施行の改正法をチェック〜


 少額訴訟の上限60万円に


 「一定訴額以下の金銭支払い請求について、一度の審理で即日判決」−。
 新民事訴訟法(98年施行)の目玉的存在として注目された簡易裁判所の特則「少額訴訟」の訴額上限額が、4月からは現行の30万円が60万円に引き上げられる。「民事訴訟法等の一部を改正する法律」の施行に伴うものだ。迅速な解決手段というメリットが注目され、家賃や敷金関係など住宅・不動産に関するトラブル解決の利用も多い。
 一方、制度利用者の間からは訴額上限額に関して、「できれば、30万円以上の債権回収も一度だけの裁判で決着をつけることはできないか」といった声も聞かれていた。
 今回の訴額引き上げによって、民事紛争解決の幅が更に広がったことになる。また、同時に裁判所法も改正となり、簡易裁判所の事物管轄が90万円以上から140万円以下に引き上げられる。


 利用が拡大

 98年の改正は、裁判を国民がより利用しやすいものにするという視点から、民事裁判の充実を図るために70年ぶりに実施されたものだ。
 「少額訴訟に関する特則」(第368条〜第381条)で少額訴訟に関する主な条文が規定されており、30万円以下の金銭請求事件で、即日で判決が確定することを規定。特定の利用者による独占的な手続き利用を制限すること(年10回まで)や、分割払い判決も認められるなど、少額事件を「低廉・迅速・柔軟」に解決するための弾力的運用が可能となっている。
 02年の司法統計によると、全国の少額訴訟記載事件数は1万4094件で、01年に比べ2819件増し。内訳は交通事故による損害賠償が3580件と全体の4分の1を占め、売買代金(1466件)、貸金(1135件)が続く。
 また、首都圏では、敷金に関するトラブルなどへの対応として、少額訴訟手続きが検討される傾向が目立つという指摘もある。
 「今回、少額裁判の訴額上限が60万円になることで、司法書士にとっても守備範囲が広がり、今まで手の届かなかったような案件もやれるようになることは大きなメリットだ」と司法書士の専門家は話している。以前から少額裁判への対応に積極的に取り組んできた日本司法書士会では03年、全国50ヶ所に「少額裁判サポートセンター」を開設。同年の司法書士法改正により、簡易裁判所訴訟に代理人として出廷し、弁論することができる「簡裁訴訟代理権」などが付与され、少額事件への手厚いフォローアップが可能となった。 


 事前準備を

 少額訴訟は、いわゆる「本人訴訟」であり、ほかの裁判に比べて簡単に訴訟ができる点が特徴だが、しっかりした事前準備が必要となる。
 「簡易裁判所の受付相談は極めて充実していた」という声は多いものの、裁判所での相談はあくまで中立・公平な手続き説明となる。
 滞納問題で訴訟に踏み切った都内の賃貸アパートの経営者は、「少額訴訟は一人でやれると思い、誰にも頼らず利用してみたが、書面整理も本当に難しく、何となく不満な形での和解になってしまった。事前にきちんと専門家に相談しておけばよかった」と話す。
 専門家は、「サポートセンターとしては、裁判による解決だけでなく、調停など、様々なメニューを提示して、実情に合った解決をしていきたい」と、オーダーメードの対応の重要性を指摘する。
 他の専門家は、「権利を侵害されても、時間や費用などを考えて、泣き寝入りしてしまっていたような紛争が、少額訴訟制度によって姿を現してきたことは大きい。今改正で、さらに少額事件への対応の幅は広がった。司法書士会としても、相談窓口の増加などで対応していきたい」と話している。


・ 下請け業者保護

・ 短賃保護が消える


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