人にやさしい木の家
木にはそれ自体、殺菌効果や調湿効果があり、カビやダニなどの繁殖を抑える性質を持っています。人によっては、この木の性質や特徴を活かした住まいづくりができないのを逆手に「国産材は危ない」などとおっしゃっている方もおられるので注意が必要かと思います。特に「桧の仲間」には、防虫や防腐成分を含んだ木が多くあります。この成分は水に溶け出しやすいのですが、毎日桧風呂に入っておられる方でどうこうなったと言う話も聞かないですよね。床下材や柱にも、この桧やヒバなどの防蟻防腐に優れた材料の使用により、薬品浸けの木を使用することによって起こる「シックハウス症候群」の心配も少ないはずです。
耐蟻性の実験結果。左のツガは全体に、中央のヒノキは周辺にシロアリの喰害が出る。右のヒバは圧倒的な耐蟻性を示す。
「木」には「クロス仕上げ」と違い、音を吸収しやすく、音のはね返りが少ないという性質を持っています。H14年建築基準法も改正に伴い住宅は高気密化し、音の逃げ場が無くなり、残響時間が延びる傾向にあります。木は“残響音”による難聴に、なりにくい性質を持っていることも忘れてはいけません。
写真:ビクトリア大学コンサートホールカナダ杉の吸音、反響の両効果をうまく生かした建築例です。
音が木材に進入すると、粘性抵抗が作用し、音エネルギーの一部は木材構成要素の振動エネルギーまたは熱エネルギーとして吸音されます。一般に、この吸音効果は木材の比重の小さいものほど高くなります。従ってカナダ杉は吸音率が高く、優れた音響効果が期待できるわけです。また、表面塗装を施すことにより、逆に反響板として使うことも可能です。コンサートホール等の内装に好まれて使用されているのは、このためです。
「木」は、快適な温度・湿度を持っています。
人が感じる暑さ寒さの感覚は、その場の空気温度が高いか低いかによるものと思われがちですが、実際には、単に温度だけではなく、湿度・空気の流れ・壁や床からなどの輻射熱の影響を加え計算できます。
日本人の平均的な快適温度(体感温度)
冬季快適帯 | 夏季快適帯 |
温度:18〜20度 | 温度:21〜25度 |
湿度:40〜50% | 湿度:50〜60% |
ひとの体からは、体温が放熱されています。余談ですが、体の大きい人が近くにいると暑く感じるのもこの放射熱量が多いからです。
この放熱されたときに壁や天井との熱の差が少ないときほど、心地よい暖かさを 感じることができます。
つまり、室温が30度で、周囲の温度が20度ならひとは25度に感じます。
これが体感温度です。 人が心地よく暖かいと感じるのは、床・壁・天井からの輻射線による ところが大きく、この輻射線(熱)をうけて暖かさを感じるとき、人は 「快適感」を感じることができるのです。