ある露店の一日




  さぁ 露店の始まり 始まり ブルーシートをしいて 気合を入れてーーと 次は軽のバンからダンボール箱やらケースに トランクなどなど 山盛りの荷物を降ろしましょう  適当に 順序よく 愛情をこめて 広げていきます これで 一日の品物のだいたいの配置が決まります 売れ筋は前に 前回の売れ残りも前に 問題の地球儀の箱も並べておきましょう
 ちょっと一服 そうそう その前にゴミ袋から古いきれを出して山にしておきます 祈るような気持ちで一応露店の開店です
もう終わったの? いやいや まだまだ ちょっと一服 ポットを出してインスタントコーヒをのんでーと              もうお客さんがきゃはったがな 見てはるがなぁ 「もうちょとしたら品物を並べるさかいになぁ 昼頃になったら全部並べ終わるさかい 昼頃きてや そやけど昼になったら もうかたずけにかからんと 今日中に家に帰れへんからな 」 なんちゅう店や 「これは店の経営方針とわしの経営理念や」 ただのなまくらだけや 
 その内 時間もたってきて ちらほら客がひやかしににきよるが 以前として箱はおいたまま積んだまま ぼつぼつおやっさんは箱のガムテープを取りにかかる トランクやかばんのふたも開けにかかる 品物を並べにかかるのかと思うと 本当にそんで終わってしまった 
 客は箱の中を覗き込んで品物を物色 意外と楽しそうである 何があるか期待と興奮 スリルとサスペンスちゅうやつやな 次々とのぞきににくる客がふえてくる だんだんと品物がひっかけまわされ ごちゃまぜまぜに ばらばらになり品物のデスプレーイが出来あがってくる またもや なんちゅう店や これが究極のおやっさんのこだわりなのである 
             

             これからが 商いの本番 客との真剣勝負

                                         まぁじっくり聞いてや

 
おっちゃん この折りたたみいすなんぼや
 「さわりーな けつがはれるど これはなぁ さるお代名のご子息のそのまたお公家さんが」
よういうてる意味がわからんけど
 「お座すわりになられたやつや 」
誰や そのごたいそうなお方というのは
 「おっちゃんや 朝一から なに探しよんねん 非売品 休憩できひんやないか アヤハで500円したんやど」 
おっちゃん 千円か? ちょっとまけといて 
 「いつもの常連さんやなぁ わかってまんがな まけときまっせぇ 清水の舞台から飛び降りたつもりで995円 どや」
、、、、これで 常連さん 一人減りました とほほ

おっちゃん ほんなら それとこれもうとくわ ほなら 包んでくれるか
 「はい ふくろと新聞紙」
何 これ
 「おっちゃんの店はセルフサービス わたいが包んでもええけど ラツピングへたやねん 家に帰ってみたら割れとるかもしれへんで」
かして 自分で包む  ムス

おじさん このオルゴールもらうわ 
 「まかして おっちやんはラツピングにはこだわってんねん 赤旗の日曜版でつつんでリボンでもつけたりましょうか」
普通に しといて


(千円の品を五百円に値切った年いった50歳ぐらいのおねえさん)
おっちゃん 包んどいて 割れんようにな
 「ハイ ふくろ代 100円」
ムス

(3千円の品物を千円に値切り倒した客)
ほな 5千円な 
 「5千円お預かり ほんで お客はん つりいるか」
いらいでか
 「一応 みんなに聞いてまんねん ひょつとしたら つり取っとき という奇特な人がいてるかもわからんでな」
そんな客おるか
 「えーと4千円なったな あーぁ 千円札でんのをいやがっとるわ」
 
おっちゃん 千五百円か まけてぇ  8百円にしといて なぁ ええやろ はい千円
 「わたい 2百円のおつりがないわ お客はん まけといて」
ほんなら 2百円のもん探すわ
 「ムス」  こんなことではおっちゃん 負けられません 
 「あったわ ちょっと細かくて丸いけど  ええか ひい ふう みい よう、、、とこれでタバコ1個分や コインのほうがよいか」
ムス   

      二時頃になるともう ひま これからいかに売りつけるか        

                                         これで売上が決まる

「産地直送や 安いで安いで今日北海道から届いたとれとれや さあこおたって」
何売ったはるの この古道具屋さん
「北海道は熊の置物や 大 中 小 でれでも安いでぇ と、、、 疲れた」

「九州は鹿児島から昨日届いたぴちぴちや」
こんどはなにやろ たのしみやな
「ねた切れ」

「さぁ こうたって 今からタイムサービスや ついたる値段の半額や さあこうたって」「一時間だけやで」
どこに このがらくたに値札がついたんねん
「ついたったら 半額 探し」

        もう三時 もう売れん 最後の手段や
「おっちゃんなぁ ほんまにまけとく 何かこうていって 正月のもち代がないねん」   低姿勢
まだ三月やで

「このままでは年こせん こうたって」
何回 年こすねん はよ年いくど

「今日のお買い得品 さあこうて    骨壷」
いらん

「さあ こうて 一家に一つ必需品」   
なんか いやらしそう 
「これや パンツのひも」
押し売りみたいやなぁ
「今はやっとらん」

「さあ こうたって こんなもん どこにもないど 20年前のプラーシー なつかしいやろ」
もろもろに なっとる えげつなぁ

「さあこうたって」
次は何やろ 楽しみ えげつなそう
「昭和12年の借用証書」
いらん

「朝から売れ残ってるねん やすうしとくでぇ」
どうせ ろくなもんやで
「中国は北京の胡宮博物館の、、、、」
おぉ すご、、、
「パンフレット」
いらん

「おい そこの客 何か 衝動買いしていけ」
、、、、、、、

「なんぼでもええからこおたって」
くせになりそう この店
「こんなんどこもうっとらんど こうていけ」
なんや
「かなずちの先っちょ」
どついたろか
落ちがついたとこで いぎいきましょうか

       まぁ こんなやりとりで一日がやっと終わります


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