2019年モーニング感想部屋


二十一・二十二号  パクサンノツーヤク。趙宗旻を呼び捨てにしていることから、朴泰輝は二十四歳以上だと推測できるのですが、年下のチームメイトである姜昌洙と綿谷君の評価が見事に分かれています。散歩に参加して趙宗旻の言葉を直接聞いていた多田さんが、綿谷君の指摘を受けて不安を覚えるあたり、リーグジャパンの一部(主に鹿島)では朴泰輝の「ツーヤク」の信頼度は高くはない模様です。
 姜昌洙のカタコトっぽさの残る敬語は個人的には萌えポイントなので、八谷さんの言うとおり、姜昌洙にはチャラついた日本語路線には進まずに基本をマスターして欲しいと思いました。
 外国が怖いから行きたくない。何かが違うような、しかし俯いた椿君の気持ちを的確に表現しているような「ツーヤク」に、趙宗旻が驚いています。「もっと自信を持て」とアドバイスしたコマでは、椿君の肩に触っているように見えました。前回にも感じたのですが、趙宗旻と椿君の距離が近すぎます。背の高さとスピードが武器の選手らしいですが、身長差のある相手の顔をよく見ようとした結果、体が密着してしまうのでしょうか。
 現在の所属チームであるPSVをステップと考え、ビッグクラブへの飛躍を目指す趙宗旻。アジア人初の得点王という大きな目標を掲げる彼は、野心に釣り合うだけの実力と自信を当たり前のように持っているのでしょう。
 彼の言葉を聞いて、椿君も海外に憧れを抱いたようですが、発想のスケールが大きいのか小さいのか分かりません。雪山や無人島でキャンプを行ったJ2のクラブがありますから、ETUが小笠原諸島に浮かぶ無人島でキャンプを行えば、椿君は東京にいながらメンタルを鍛えることができるのではないでしょうか。
 監督が怖いことを含めて、韓国代表の情報が開示されましたが、目の前にあるのはオーストラリアとの試合です。UAE戦終了後、ブラン監督はクボバキコンビに「次も頼む」と言っていましたが、オーストラリア戦のどのあたりで二人は出番が回ってくるのかが楽しみです。
五十一巻  表紙を飾るイスマイールさんとマチュー監督。描き下ろしページには、UAEの選手たちの姿があります。
 川崎の選手はこんなんばっか。越後さんのモノローグが、モーニング二十号の散歩会を思い起こさせます。ETUのように、日本代表に複数の選手を送り出しているチームはいくつかありますが、例えば城西さんと秋森さんが「ヴィクトリーの選手ってこんなんばっか……」というような評価を受けたことはありません。リーグ戦で、川崎は若い選手が活躍する勢いのあるチームとして描かれていました。選手の言動は、若さと体育会系独特のノリによるところが大きいのでしょうか。
 江田さんと岩淵さんは同世代で仲が良い。岩淵さんはオールスターで初登場した時から、無口で何を考えているのかが分かりにくく、達海監督に「ゴール前で冷静」と評価された人物ですが、彼の怒りをアレックさんが必死で宥めたり、レフェリーに食ってかかってイエローカードをもらった姿を見ていると、キレると暴言や暴力が飛び出して大変なことになるタイプなのではないだろうかと想像してしまいます。普段、口数が少ないのは、窪田君のように「喋ると疲れる」のではなく、誤解やトラブルを招かないように言葉を選んでいるからなのかもしれません。
 そんな彼を落ち着かせられる江田さんは、派手な活躍こそないものの、与えられた役割を確実にこなす仕事人タイプなのでしょう。岩淵さんと江田さんが現在の関係を築くまでには、さまざまな(物理的な)衝突があったのかもしれません。
 ステッカーのパッカ君は中東仕様。四十九巻の折り込みカバーでは中国モードになっていましたし、モーニング編集部は、ETUや日本代表の対戦相手をモチーフにしたご当地パッカ君を作れば良いと思います。
二十号  ブンデス二部のクラブから届いたメールに動揺を隠せない有里ちゃん。しかし、こんなものは「探り」に過ぎないと達海さんは冷静です。それにしても佐藤君の例えが秀逸すぎる……!
 選手を育てて高く売り、時には補強もして、試合に勝つ。フロント現場が力を合わせて結果を出すクラブチームのあり方を、達海監督は面白がっています。有里ちゃんに過労死の心配をされてしまいましたが、彼にとって監督として采配を振るうクラブは決してETUでなくてもいいのだと読者は知っているので、複雑な気分です。
 椿君には海外志向がない。その事実を思い出して、有里ちゃんたちは安心していますが、達海監督が指摘したように、椿君の気持ちを変える出来事が日本代表では起きていました。達海さんも似たような経験をして、海外を意識したのかもしれません。
 UAE戦後のヒーローインタビューで、椿君は自分を支えてくれた人々への感謝を口にしていました。そこにETUの人々、とくに自分を見いだして成長させてくれた達海監督が含まれていることに疑いはないのですが、椿君にとって何より大事なのはサッカーが上手くなることなので、ETUでのプレーにこだわる必要はありません。例えば有里ちゃんや村越さんにとって、ETUとサッカー、自分のキャリアは切り離せないものですが、椿君はETUに対して、そこまで強い思い入れがあるわけではありません。窪田君の態度に思うところもあったようですし、達海監督に背中を押されれば、そう遠くないうちに、椿君は海外移籍を決意するのだと思います。
 異文化コミュニケーションで人としての器を大きくする。高熱で器にヒビが入らないか心配ですが、広い公園のような場所にひと気はありません。中東での異文化コミュニケーションというと、食べ物や布やアクセサリーを売っているバザールを散策するイメージがあるのですが、日本代表散歩隊の人は買い物には興味はなさそうですし、盗難や迷子などのトラブルを避けるために、散歩コースはホテルの近所と決めているのかもしれません。
 韓国代表ご一行と遭遇。姜昌洙が「イブンカコミュニケーションダイジデス。サンポニイキマショー」などと言い出して、他の人を引っ張り出したのかもしれません。畑さんは「川崎の選手は変なのばっかり」と感想を口にしていますが、そこに星野さんは含まれているのでしょうか。
 朴泰輝(パクテヒ)は鹿島の選手。綿谷さんや五味さんと同様、リーグ戦終盤のETU対鹿島戦に絡んできそうな選手です。カタコトの姜昌洙よりも日本語が上手なのは、日本での暮らしが長いからなのでしょうか。
 コチラハPSVノ趙宗旻(チョウジョウミン)サンデス。姜昌洙が改めて紹介するまでもなく有名な選手で、準々決勝でもゴールを決めていたようです。
 初対面なのに椿君との距離が近い趙宗旻。椿君が怖がるといけないので、近づくときには大声を出さずに、ゆっくり時間をかけてあげてください。
 海外移籍に対して、椿君本人と周りの人々のあいだには大きな隔たりがあるに思えます。試合の熱狂で、その温度差を埋めることはできるのでしょうか。
十九号  モーニングの表紙に椿君。隅田川沿いをランニングしています。アジア杯は残すところ二試合ですが、果たして彼は今年中に浅草に戻ってこられるのでしょうか。
 カラーページで行われるオーストラリア対サウジアラビア。イングランドやドイツでプレーする選手が多い中、日本代表が注目したのは十番のコヴァル(プレミアリーグ所属)と、大エースで四番のトーマス・サリバン(プレミアリーグのエヴァートン所属)でした。
 組織力と敏捷性では日本が上だと滝本コーチが断言しても、椿君はヨーロッパで活躍していて体格が良いオーストラリアの選手に太刀打ちできるのか悩んでいます。
 椿君とは対照的に窪田君が前向きなのには、理由がありました。彼は欧州移籍を実現させるためにも、オーストラリア戦でアピールする気のようです。
 代理人と契約を結んでいるということは、窪田君は本気で海外移籍を考えているのでしょう。選手の目標を実現させるために、英会話教室を開いているクラブがあると聞いたこともあります。ですがなぜか窪田君には、外国語を勉強しているイメージが沸きません。ボールとテレパシー的な何かで外国人とコミュニケーションを取っているような気がします。
 身分照会の問い合わせは、欧州では当たり前のこと。サッカー選手の身分照会とは、どこに何を照会するのかが気になってグーグル先生に尋ねたところ、私と同じような疑問を持っている人がいました。選手の保有権や移籍制限などを調べるのが目的のようです。
 椿君には代理人がいませんから、外国のクラブがETUに問い合わせを行ったのは当然のことでしょう。そのせいで有里ちゃんが動揺しています。ETUの選手への海外からの照会は、おそらく達海さん以来でしょうし、有里ちゃんは海外移籍に良いイメージを持っていないでしょうから、仕事が手に付かなくなるほどのショックを受けるのは無理もありません。
 有里ちゃん一人の仕事の遅れで佐藤君まで残業する羽目になるあたり、ETUの広報部は、彼女に頼り切っている部分が大きいのかもしれません。単なる照会であって、移籍のオファーが来たわけではないと有里ちゃんを説き伏せて、落ち着かせられる人も、今は日本にいません。有能で勤労意欲もあるけれども、まだ若い有里ちゃんの側には、足りない経験を補ってくれる人がいたほうがいいのでしょうね。
 オーストラリア対サウジアラビアの試合終了後(真夜中)に起きて活動を始める達海監督の生活が心配です。まさかとは思いますが、これは彼が過労で倒れるフラグなのでしょうか。
十七号  UAE戦から一夜明けて、椿君は一躍「時の人」になりました。爽やかでかっこいいと思うか、地味だと思うのかは人それぞれですが、今後の活躍次第では、椿君が女性向けファッション誌の表紙を飾る日が来るのかもしれません。
 緑川宏、老ける。リハビリ施設の時空が歪んでいたとかいうSF展開でもない限り、単なる誤字だと思うのですが、ネームの時点で担当さんか誰かが気づかなかったのでしょうか。「チーム最年長が三十三歳なんて、今(二〇一九年)のサッカーではあり得ないので緑川の設定を変えます」などと言われたら、制作サイドがキャラクターを愛していないように思えて悲しくなります。
 椿君効果がETUの選手に与えた影響は大きいようですが、達海監督には実感がわかないようです。椿君と窪田君、持田と花森さんのように「手強いライバルであると同時に頼れる同世代の仲間」を得られなかったことが、達海猛が選手時代に孤立した原因の一つなのかもしれません。
 夜中まで代表の試合を観ていたとはいえ、練習開始五分前に起きられたのは、達海監督が社会人として成長している証拠なのかもしれませんが、普段の行いを考えれば、有里ちゃんの努力の成果という気がします。彼女が椿君の海外移籍を本気で心配するということは、早速ETUに代理人や外国のクラブから照会があったのでしょうか。
 日本代表の次の相手はオーストラリアのようです。千葉のマクレガーさんが、非常に懐かしく思えます。
十六号  中東という括り。確かに「中東の笛」はイメージできても、中東に属する国々がどのようなサッカーをするのかは説明できませんし、正確な地理を答えられる自信もありません。だからと言って日本のサッカーについて説明できるわけでもないのですが。
 椿君のヒーローインタビューに、有里ちゃんのテンションが上がっています。夜中に大騒ぎする可能性があるからこそ、彼女は自宅ではなくクラブハウスでのテレビ観戦を選んだのかもしれません。
 素朴な所が大介の魅力。お母さんは息子の良いところを見つけて褒めてくれます。家族が見守り支えてくれたからこそ、今の椿君があるのでしょう。
 質問は「はい」か「いいえ」で答えられるものを。それだけでコミュニケーションが成り立つのはドラクエの主人公ぐらいです。椿君のサッカーの技術は短期間でレベルアップしましたが、トークはそれに追いついていないようです。
 椿君は苦手なりに真面目に「話す」ことに取り組んでいるのでしょうから、有里ちゃんも強く叱ることもできないのでしょう。彼女の日々の苦労がうかがえます。
 有里ちゃんの泣き顔のコマが、椿君のお母さんより大きい! 本人は椿君のお姉ちゃんのつもりでいても、周囲がお母さん扱いしているような気がしますし、椿君も有里ちゃんのことを「母さん」と呼んでしまった経験があるのかもしれません。
 あと二つ。ブラン監督は相変わらず要求が厳しいですが、「次も頼む」という発言から察するに、準決勝でもクボバキコンビを起用するつもりなのでしょう。椿君だけではなく、窪田君も近いうちにヨーロッパに移籍する可能性があるのかもしれません。
十五号  イスマイールさんのシュートは花森さんに阻まれますが、UAEの攻勢は続きます。
 こんな所では終われない。イスマイールさんだけではなく、アジアの頂点を目指す日本代表の選手たちも、同じように考えていることでしょう。しかし、長いように感じられたアディショナルタイムも、ようやく終わりを告げます。
 日本代表ベスト4進出! クラブハウスのテレビの前で有里ちゃんや佐藤君は喜んでいますが、知らないうちに、椿君の情報を求める人たちのアクセスで、ETUのサーバーが落ちていないか心配になります。
 スタミナ自慢の椿君もさすがにバテていました。花森さんの笑い声が、彼の疲労を示すかのように斜めになっています。二人分の笑い声に感心している椿君ですが、彼は試合中に満面の笑みを浮かべているので、川の字トリオは笑顔トリオでもあるのかもしれません。
 後藤さんがリチャードをつるし上げました。有里ちゃんがリチャードに手を上げた時には、年上で上司という立場上、彼女を制止したのであって、後藤さんは穏健派に見えて実は武闘派なのかもしれません。
 世界中の代理人に目をつけられてしまった椿君。テレビのインタビューが楽しみでもあり不安ですが、次回、その様子は描かれるのでしょうか。
十三号  椿君がスターになる予感に胸を躍らせる藤澤さん。逆に彼女の予感が、延長突入→別の選手が決勝ゴールorPK突入で星野さんの鬼神の如き働きで勝利→世間は勝利の立役者に注目……というフラグに思えてなりません。
 窪田君の投入を機に、日本代表の動きが代わったとマチュー監督が分析しています。川の字トリオと志村さんを活かした布陣が日本代表の「切り札」ということですが、その予想が正しければ、夏木さんは「切り札」でも「秘密兵器」でもないわけで、ますます試合出場の機会が遠のいてしまうのではないでしょうか。
 マチューの言いつけを守っていればよかった。「指示」ではなく「言いつけ」という表現に、マチュー監督とイスマイールさんの関係が表れているような気がします。
 UAEの会長は口が軽いようです。監督にオファーが来たことを他人に話すのはどうかと思いますが、マチュー監督とイスマイールさんの関係を考えた上でのこぼれ話だったのかもしれません。
 自分を育ててくれたマチュー監督を再び世界へ。イスマイールさんがシュートの体勢に入ったところで今回は終了。
 ツイッターの情報で、本編を読む前に次号が休載だと知っていたので、てっきり今回でUAE戦が終了するのだと予想していたのですが、このタイミングで休載になるということは、延長戦突入の可能性もありうるのでしょうか。
十二号  祝・椿大介選手代表初ゴール! 夏木さんの言葉通り、試合会場だけではなく日本中が盛り上がっています。椿君に興味を持った人がETUの公式サイトにアクセスしまくった結果、夜中なのにサーバーが落ちる可能性もあり得ます。
 桐生さんに蹴られ、日本代表のチームメイトに「持ってる」と評価される椿君。久堂さんは「運」を持っているのがスターだと指摘しましたが、椿君はこれからスターへの階段を上っていくのでしょうか。お父さんとお姉さんが勤め先で大変なことになりそうですね。
 クラブハウスで泣き顔を見せる有里ちゃん。嬉しさや椿君への誇らしさに感極まったのでしょう。このまま試合が終われば、暢気に解説している佐藤君ともども、ETU広報部は翌朝から大忙しなのは目に見えていますが、彼女なら徹夜明けでも乗り切ってくれるでしょう。
 花森さんが噛んだことを、窪田君が容赦なく指摘しています。ピッチの中では年の差は関係ありませんが、初めて代表に招集されたころに比べれば、花森さんと窪田君の関係が深まっているのも事実です。そんな二人を見て、こころもち不敵な笑みを浮かべる椿君がかっこよかったです。
 八ページ二コマ目にそれらしい人物が小さく描かれているものの、今回、イスマイールさんに出番はありませんでした。試合はこのまま、日本代表の逆転勝利で幕を閉じるのでしょうか。
十一号  前回の花森さんの言葉に感銘を受けた椿君。「残り少ない時間」という表現から察するに、彼も延長戦に持ち込む事は考えていないようです。
 キーパーカリムが大活躍。UAEに生まれたカウンターのチャンスを城島さんが潰します。日本人の名字の発音に苦労しそうなブラン監督だけではなく、年下の星野さんも「ジョー」呼びなのですね。一瞬の判断で「オーバーヘッド」や「バイシクル」(違いが分かりません)を選び、それを実行できる城島さんの身体能力はすごいと思いました。
 窪田君が拾ったボールは、志村さんから花森さんに渡ります。そして花森さんは椿君にパスを出します。残されたスタミナや時間を考えた上での行動なのかもしれませんが、UAEは「最後はエースに頼る」チームですし、イスマイールさん本人もそれを認めています。花森さんにパスという選択ができた理由は、椿君の能力が花森さんに認められた証であり、日本代表というチームの総合力だと思いたいのですが、果たして椿君はシュートを決められるのでしょうか。
十号  畑さんがギリギリで追いつけるかどうかの「挑発的」なボールを送る椿君。普段は年下ということもあって腰が低く、窪田君相手に「関西弁は迫力があってちょっと怖い」などと言っていてもおかしくはないのに、ピッチでは容赦なく年長者を使います。
 畑さんのシュートはクロスバーに弾かれましたが、花森さんが走り込んでいました。しかしUAEのキーパーカリムのビッグセーブで得点はなりません。
 一応息はしてる。窪田君は事実を口にしているだけなのですが、側にいる椿君が普通に花森さんの心配をしているので、窪田君の発言がひどいというか、他に言い方はなかったのかと思えてきます。
 この声援が聞こえる限り。花森さんが日本代表の先輩らしい姿勢を若い二人に見せました。この試合ではスタジアムを埋め尽くすUAEの大観衆が描かれていましたが、ここで初めて、少人数ながらも声を張り上げている日本のサポーターの姿が描かれます。中東のアウェイでもサポーターがいないわけではなかったし、小さくてもその声は選手に届いていた。
 ここで試合を決める。両チームともに延長戦にもつれ込むことを嫌がっていますが、試合はどうなるのでしょうか。
九号  Jリーガー大集合の単行本表紙がモーニングの表紙に勢揃い。地方民にはありがたいことです。
 Jリーガー五十人による人気投票で、吉田さんこと王子の人気が高かったのが意外でした。読者とプロサッカー選手とでは「憧れのプレーヤー」に対する視点が違うのかもしれません。
 椿君と達海監督の語らいやカレーパーティーなどの、綱本先生が原作を手がけておられたエピソードが「思い出の言葉、シーン」ランキングで上位入りしていたことも興味深いです。多くの選手にとって、椿君は感情移入しやすいキャラクターなのでしょうね。
 イスマイールさんの活躍で、スタジアムの雰囲気だけではなくUAEの選手の様子まで変わってしまいました。UAEは勝負時と見て攻勢に出ていますが、マチュー監督は動きません。勝負師のカンのようなものが働いているようですが、椿君が気づいた「UAEの選手の疲れ」に関係しているのかもしれません。
 絶対に負けない場所。椿君がボールを送ったのは、逆サイドの畑さんでした。スタミナという点ではまず問題はありませんが、どうなることでしょうか。
八号  桐生さんアウト畑さんイン。交代時のやりとりから察するに、二人は二十五歳の同い年なのでしょうか。それならば、ハタカタコンビが二十六歳の志村さんを「シムさん」呼びしているのも納得できます。
 夏木さんが投入されないことが不満な有里ちゃん。夏木さんの活躍は見たいですが、日本代表としては延長に入る前に試合に決着をつけたいものです。このままでは、夏木さんは椿くんのホームシックを治すためだけに中東に渡ったことになってしまうので、アジア杯で一度は試合に出場して欲しいものです。
 イスマイールさんは英雄と称えられた反面、チームの不甲斐なさがすべて自分の責任であるかのように抱え込んでしまいました。今回は吹っ切れたようですが、精神的に未熟な若者を、メディアが称えることの功罪なのかもしれません。
 そんなイスマイールさんの顔面ブロックに「キャプテン翼」の石崎君を思い出しました。観客の声援を力にできるのは「スターの条件」の一つだと思いますが、観客が声援を送るようなプレーができるのも、「スターの条件」だと思います。日本代表の選手たちに、UAEの観客の心を動かすような(アウェイなので拍手喝采は難しいと思いますが)プレーができるか期待したいものです。
五十巻  祝・五十巻! 日本代表メンバーが勢揃いしていますが、夏木さんが小さいことに悲しみを覚えます。そして、意外と面積が大きいのが鹿島の江田さん。地味な割に(失礼)大事なところで仕事をするタイプなのかもしれません。
 地味といえば、岩淵さんの髪の色が予想よりも暗い色だったことに驚きました。明るい金髪だと勝手に思いこんで、カラーを見て驚いたのは、堺さん(二十四巻の表紙)に通じるところがあります。
 アジアナンバーワンのマスコット。リーグジャパンのマスコットたちは、アジアどころか世界で戦えるだけの力があると思うのですが、目力の強いラクダ以外に、アジアのサッカー界にどのようなマスコットがいるのか知りたいものです。
 描き下ろし漫画で放送事故発生。この後黒田さんと達海監督は有里ちゃんにお説教されます……! リーグ戦再開にのみ触れているということは、中断期間中に天宮杯の予選は行われないものと考えて良いのでしょうか。個人的には、中断期間中のリーグジャパンの選手の様子が見たいものです。
 巻末のステッカーが、連載五〇〇回でモーニングの表紙を飾ったETU主要メンバーでした。五人が見ている方向は違っても、いずれ道を違えることばあっても、背景には同じ物(ETU)がある。そんなイラストだと思いました。
七号  ピッチで躍動する川の字トリオ。テレビやスタジアムで応援している人々も否応なく盛り上がります。
 達海監督の言葉を思い返す椿君。シーズン序盤はミスにへこんでいた彼が、今では「自分の力で試合の流れを変えられる選手になる」と考えるようになりました。本当に椿くんは成長したと思います。
 ゴールを決めたのは花森さん。イスマイールさんに宣言したように、スターの座を渡す気はないようです。花森さんもかっこよかったですが、ハイタッチを交わすクボバキコンビが可愛かったです。
 同点に追いつかれても強気な姿勢を崩さないマチュー監督。延長になればスタミナの面で劣る日本が不利なのは変わりありませんが、最後のページで見せたイスマイールさんの顔色が気がかりです。PK失敗から追いつかれたことが、精神的にこたえたのでしょうか。
六号  皆で仲良く協力して、逆転する。
 小学校のクラス対抗サッカー大会で、担任の先生がかけるような言葉です。古川さんが適切な日本語を探した結果、このような翻訳が行われたのでしょうか。
 ブラン監督は小学校の先生ではなくサッカーの監督なので、きちんと指示を出していました。岩淵さんがいた位置に花森さんが入り、日本代表は初めて実戦でゼロトップの布陣を試すことになります。
 UAEは一気に交代のカードを二枚使いました。このチームの選手たちには、長い付き合いがあるとのことですから、世代別代表で活躍してきた選手たちが、A代表にも昇格したのでしょう。
 ブラン監督は、付き合いの長さよりも「ウマが合う」ことを重視するようです。年齢があまり変わらない場合、小さい時に流行したゲームや漫画などの話題で盛り上がることも珍しくはありませんが、世代が違う人々が集まる代表の場合、付き合いの長い選手ばかりを集めるのではなく、価値観や考え方が似ている選手を組み合わせた方が効果があるのかもしれません。
 花森さんはクボバキコンビと八歳も年齢が離れていますが、タッツェルブルムに関心を示していました。川の字トリオ(勝手に命名)は、言葉を交わすよりも、ボールを繋いだ方が互いの理解が進むような気がするので、試合で頑張って欲しいものです。
四・五号  厳しい判定の末にPKまで取られた日本代表。イスマイールさんは城島さんの手を狙ってボールを蹴ったのではないかという分析までもが飛び出します。取ったPKを確実に決められるという自信があるからこそ、一瞬でそんな判断が下せるのかもしれません。
 PKといえば否応なく目立つのがGK。城島さんだけではなく八谷さんのフォローもした星野さんは、この回の主人公だったと言ってもいいような気がします。そして何の前触れもなく明かされた志村さんの秘密に、飲んでいたお茶が気管に入りそうになりました。
 日本代表のピンチということは、UAEに勝利が近づいているということなのですが、マチュー監督のモノローグから小物っぽさを感じます。コーチに突っ込まれ、窘められるのも仕方がないような気がします。
 不敵な笑みとともに、イスマイールさんに「君の時代はまだ先だ」と告げる花森さん。バテているせいか顔色が悪いですが、吹っ切れたようで何よりです。彼が言う「ここ」とは、持田さんとプレーする機会が(おそらく永遠)に失われた日本代表のことなのでしょう。椿くんや窪田くんの存在が、花森さんの迷いを吹っ切ったのだとすれば、川の字で寝転がった甲斐があるというものです。
 星野さんが読み切ってPK阻止。チームを救ったヒーローなのですが、その後の台詞がイマイチ決まらないのが、星野さんらしさなのかもしれません。
 カードをもらった岩淵さんに代わって、窪田くん投入。花森さんや椿くんとの連携が非常に楽しみです。
一号  アジアのフットボールは大きく成長している。UAEの強さはマチュー監督の手腕とイスマイールのスター性によるところが大きいのだと語るリチャード。ただ前回「中東の笛」が発動したように、完全に従来のイメージを覆すのは難しいかもしれません。
 話の流れとリチャードの日本語(間違いなく達海さん仕込み)で「勉強不足」と言われてしまった後藤さんが気の毒ですが、外国の選手を獲得するのならば、海外のサッカー事情にも目を向けていなければならないのは確かです。
 スコアの差がスタープレイヤーの差というリチャードの指摘通り、スロースターターで調子が上がってきたイスマイールとは違い、花森さんは精彩を欠いている様子です。副会長の言う通り、サッカーに詳しくない人でも「十番には決めて欲しい」と思うものなのかもしれません。
 城島さんがハンドを取られてしまい、PKに。花森さんが倒された時とは違って、笛が吹かれています。
 日本代表にとっては大ピンチですが、このUAE戦のテーマの一つは「選手のスター性」です。日本代表の選手は、ピンチを覆せるほどの力があるかどうかを問われているのかもしれません。


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