琵琶湖水鳥・湿地センター > ラムサール条約 > ラムサール条約を活用しよう | 第7回締約国会議 |
日本語訳:環境庁,2000年[了解を得て再録].
英語 フランス語 スペイン語 (以上,条約事務局) PDF (環境省のインデックスページ)
1.湿地の復元を促進するための各種の行動をとることを、締約国と常設委員会に要請した勧告4.1を想起し、
2.また、湿地の復元を国の自然環境保全、土地及び水管理政策に組み込む
ことを締約国に求めた勧告6.15を想起し、
3.復元や機能回復の必要がある湿地を特定し、この目的にかなう方法を用意・実施し、復元及び機能回復計画を確立すること、そしてこれを特に主要な河川系あるいは自然保護上の価値の高い地域について行うよう締約国に要請した「1997−2002年戦略計画」の実施目標2.6に留意し、
4.本締約国会議の分科会Ⅱで発表され検討された、「湿地の保全と賢明な利用のための国の計画策定の一要素としての復元」と題した報告の著者に感謝の意を表し、
5.湿地の復元や創造は、喪失または劣化した自然の湿地に代わりうるものではないとはいえ、湿地の保護と並行して行われる国の湿地復元計画は、その復元が生態学的、経済的、社会的に持続可能なものであるならば、人間と野生生物の双方に大きな利益を付加しうるという、勧告4.1で表明され、上述の報告によりさらに強調された見解を改めて表明し、
6.本締約国会議に提出された国別報告書の中で、76の締約国がそれぞれ国内で湿地復元活動を行っていると報告したことを承認しつつこれに留意し、しかし、大半の締約国ではこうした活動があまり活発ではないこと、また復元の推進が、国家湿地政策及び関連する政策手段の一環として行われているとした締約国はごくわずかであったことに懸念を表明し、
7.復元及び機能回復の新規取組の発展を促すためには、能力の育成と人材・財源の追加が必要な場合があることを認識し、しかし一方で、湿地のもたらす重要な機能、サービス、恩恵を認め、そうした新たな取組を率先して行うのは、多くの国で地元の住民や利害関係者であることも認識し、
8.本締約国会議の、ラムサールと水に関する分科会Ⅰで、「河川流域の管理に湿地の保全と賢明な利用を組み込むためのガイドライン」を示した報告、水政策の策定の一要素としての湿地についての報告、また世界的な水危機に対するラムサールの役割に関する報告のそれぞれにおいて、湿地の復元が優先事項として明示されていることを意識し、
9.本締約国会議が、湿地政策の策定(決議Ⅶ.6)、法制度の見直し(決議Ⅶ.7)、湿地の管理への地域社会及び先住民の参加(決議Ⅶ.8)、湿地と水路に関する広報、教育、普及啓発(決議Ⅶ.9)、湿地の保全と賢明な利用の河川流域管理への組み込み(決議Ⅶ.18)、湿地目録の優先順位(決議Ⅶ.20)という、いずれも湿地復元が適切な方法で促進されるよう支援する数多くの決議を通して、これらの分野に関する、締約国のための手引きを採択したことを認識し、
締約国会議は、
10.湿地の復元や創造が、失われた自然の湿地に代わりうるものではなく、そうした喪失を防ぐことこそ第一に優先されなければならないとはいえ、湿地の保護と並行して行われる国の湿地復元計画は、それが生態学的、経済的、社会的に持続可能なものであるならば、人間と野生生物の双方に大きな利益を付加しうるものであると認識するよう、すべての締約国に求める。
11.湿地の喪失についての情報を、その湿地域の喪失プロセス、機能、構成、価値の評価を含め提出するよう、締約国に要請する。この情報には、それらの湿地の復元可能性についてのデータ、及び復元による最大限の利益に関するデータを含めなければならない。このデータには、人間と自然環境に利するため復元が優先事項である湿地の特定を含めるが、これは決議Ⅶ.20で求められる標準的なデータ収集・処理手順を用いた、すべての適切なレベルでの特定とする。
12.また、湿地喪失を防ぐための方法、及びラムサール条約と生物多様性条約の共同作業計画において、湿地復元の推進へのアプローチを見直し、必要があれば修正するよう、すべての締約国に求める。これにあたっては、生態系アプローチ、広報・教育・能力育成の計画、伝統的規範や女性の特別な役割を考慮に入れた、地元利害関係者への支援を推進する政策枠組みの一環としての、持続可能な復元の推進に特に高い優先順位を与える。
13.さらに、復元へのアプローチの見直しにあたっては、法制度(決議Ⅶ.7)、湿地保全への奨励措置(決議Ⅶ.15)、影響評価(決議Ⅶ.16)、集水域レベルでの複数国にまたがる行動(決議Ⅶ.19)の各分野を詳細に検討し、取り組むよう締約国に要請する。
14.劣化した湿地の、生態学的、経済的、社会的に持続可能な復元を促進する手段としてのプロジェクトや計画を、本決議の付属書1に示される要素を十分に考慮しつつ、実施し評価するよう締約国に要請する。
15.生態学的、経済的、社会的に持続可能な湿地復元を実施する上での制約と、これに対する解決策を特定するよう、またこれに基づき、実証プロジェクトと対象を絞った技術交換計画を策定し、これについて第8回締約国会議への国別報告書で報告することを締約国に求める。
16.ラムサール条約事務局に対し、科学技術検討委員会と協議して、湿地の復元と機能回復の具体的諸側面に関する専門知識の情報源を特定し(IUCNの生態系管理委員会、生物多様性科学国際協同プログラム、国際湿地保全連合の湿地復元専門家グループ等、既存のネットワークを利用して)、手段やガイドラインをさらに向上させ、これを締約国が利用できるようにするよう求める。
1.自然、環境、水資源の保護と持続可能な利用に関する国の計画策定と立法には、湿地を復元する義務、あるいは少なくともそのための選択肢を含めなければならない。これが復元を目的とした活動への資金配分を促す可能性もある。計画や法律は戦略的レベルでの復元の目標と優先事項を明確にし、失われた湿地の機能、プロセス、構成要素に言及する。
2.湿地の保全と持続可能な利用に関する国際的義務の履行に寄与するプログラムには、高い優先順位を与えなければならない。
3.生物多様性の保全、確かな食糧資源、淡水の供給、浄化、洪水調節、レクリエーションといった複数の目的は、持続可能性を高め、復元プロジェクトの全体的利益を向上させることが多い。
4.すべての利害関係者を早い段階で特定し、参画させること。プロジェクトが実現するかどうかは、土地の所有者または利用者、当局、さまざまなレベルの政治家、科学諮問機関、NGO(非政府組織)の間の協力にかかっている。
5.効果のモニタリングと評価、及び結果についての情報の普及が必要である。プログラムまたはプロジェクトへのフィードバックが確実に行われるようにし、定められた目標を達成するために、必要であれば調整を行わなければならない。
6.プログラムまたはプロジェクトが承認され実施に移される前に、戦略的環境影響評価、及び費用便益分析を行うことが推奨される。
7.実験的プロジェクトを実施し成功すれば、それが今後行われる復元プロジェクトやプログラムの発展に向けた大きな動機と刺激になる。
8.プログラムやプロジェクトの、実施前、実施中、実施後の効果と結果についての、一般的でわかりやすい情報が重要である。
9.プロジェクトの有用性と実行可能性に関して、事前に評価しておくべき重要なポイントは、以下の通り。
9.1.環境面の利益があるか。例えば水の供給量と水質向上(富栄養化の低減、淡水資源の保全、生物多様性の保全、「湿地資源」の管理の向上、洪水調節)。
9.2.プロジェクトの費用対効果はどうか。投資と変化は、一時的な結果をもたらすだけでなく、長期にわたって持続可能なものでなければならない。建設期には低コストを、その後も維持にかかるコストは少ないかまったくかからないようにすることを目指さなければならない。復元プロジェクトの費用対効果を判断するときには、湿地の復元からもたらされる可能性のあるすべての利益を考慮に加えること。
9.3.復元された土地は、地元の住民やその地域全体にどのような選択肢、利益、あるいは不利益をもたらすか。これらには、健康状態、重要な食糧や水資源、レクリエーションとエコツーリズムの可能性の増大、景観価値の向上、教育機会、歴史的・宗教的地区の保全などが含まれる。
9.4.プロジェクトによってどのような生態学的可能性があるか。生息地や生物学的価値の点で、その地域の現状はどうか。水文学的、地形学、水質、植物群落、動物群集などについて、その地域はその後どのように変化すると考えられるか。
9.5.現行の土地利用に関し、その地域はどのような状況にあるか。途上国、市場経済移行国、先進国の間で、また復元と機能回復の目標によって、状況は大きく異なる。特に、現状ではほとんど利益を生み出さない辺境の土地は改善されることが多い。
9.6.主な社会経済的制約は何か。プロジェクトの実現に、地域や地元の強い関心があるか。
9.7.主な技術的制約は何か。
[英語原文:ラムサール条約事務局,1999.Ramsar Resolution VII.17 "Restoration as an element of national planning for wetland conservation and wise use", May 1999, Convention on Wetlands (Ramsar, 1971). http://ramsar.org/res/key_res_vii.17e.htm.]
[和訳:「ラムサール条約第7回締約国会議の記録」(環境庁 2000)より了解を得て再録,琵琶湖ラムサール研究会,2001年6月.]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う.]
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URL: http://www.biwa.ne.jp/%7enio/ramsar/cop7/key_res_vii.17j.htm
Last update: 2006/09/27, Biwa-ko Ramsar Kenkyu-kai (BRK).