Swan  琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう第8回締約国会議

ラムサール条約

決議.12:山岳湿地

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「湿地:水、生命及び文化」
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第8回締約国会議
バレンシア,スペイン,2002年11月18-26日


決議.12

山岳湿地の賢明な利用と保全の推進

1.国連国際淡水年である2003年を前にして国連国際山岳年としての2002年を共に祝うとともに、関連する二国間・多国間環境協定を含め山岳に関する広範な国際協力を歓迎し

2.第5回締約国会議(COP5)(1993年)で、締約国が決議5.6「賢明な利用の概念の実施に関する追加手引き」を採択したことを想起するとともに、この手引きが地元レベルに言及して「湿地の賢明な利用を実現するためには、厳格な保護から再生を含めた積極的な介入に至るまでのさまざまな活動を通じて、あらゆる湿地タイプを確実に維持できるバランスを保つことが必要である」と述べていることを認識し

3.COP5の「湿地の重要な特徴及び湿地の保護区に関するゾーン分けの必要性」に関する勧告5.3を踏まえ、本条約の「1997−2002年戦略計画」の行動5.2.5が、締約国に対して面積の小さな、あるいは環境変化の影響を受けやすいラムサール条約湿地及びその他の湿地への保護措置を強化するよう奨励したことを重ねて想起し

4.「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」を採択した決議.11を考慮し、またこの戦略の枠組みに示されるように、ラムサール条約湿地リストの最初の目標が「各締約国に、湿地の多様性並びにその主要な生態学的及び水文学的機能を完全に代表するラムサール条約湿地の国内ネットワークを設立すること」であったことを考慮し

5.本条約の「1997−2002年戦略計画」の実施目標6.2は、「地球規模または国内で、特にこれまで十分に代表されていない湿地タイプに関して、国際的に重要な湿地のリストへのラムサール条約湿地の面積を増やす」ことであること、また今回の締約国会議の決議.25により採択された「2003−2008年戦略計画」は、ラムサール条約湿地リストに十分に代表されていない湿地タイプの指定を優先事項とすることを明確にしていることを重ねて考慮し

6.山岳湿地及び高地湿地には、氷河や雪原から流出する融雪水の流れを含んで、湖沼、河川、渓流、沼沢地、泥炭地、またカルスト地系等が幅広く含まれること、またそうした湿地は規模も永続性もそれぞれ大きく異なることを認識し

7.山岳湿地及び高地湿地は雨水や融雪水・融氷水を捉え、保持し、またそれらを少しずつ流すという重要な役割を果たし、それによって流域全体に対する水の供給と調節の機能を果たしていることを重ねて認識し、またこうした湿地系の多くは鉱泉水の持続的な水源となり、こうした水が国家にとって、また国際的に経済的重要性を持つ場合があることを考慮し

8.こうした湿地の価値、すなわち起源が比較的新しいが、多様で独特な種からなる群集と固有種を含む豊かな生物多様性を持つ山岳生態系としての価値を認識するとともに、こうした湿地が乾燥または半乾燥気候の地帯または地域の中に孤立して存在する、生物地理的にまったくの飛び地でありうることを同じく認識し

9.これら山岳湿地が、堆積の記録を通じて古環境を推測するため、また地方、地域、世界の各規模の変動を早期に検出するために価値のある情報をもたらしうることを強調し

10.山岳湿地は伝統的に人間社会を支えてきた(たとえば人々や家畜に飲料水を与え、流れの速い渓流・河川からエネルギーを生み出すなど)こと、また多くの場合、こうした湿地の生物的豊かさは持続可能な管理を継続することによって保たれることを意識し

11.山岳湿地は、外部からの負荷の影響を特に受けやすく脆弱であることを憂慮し、また世界の多くの地域で高地湿地が持続不可能な人間の行為、特に、自然の水路の変更、ある種の集中的な観光形態、農業、放牧、林業により悪影響を受けていることに留意し

12.気候変動の結果多くの山岳地帯で雪原や氷河が縮小していること、これが山地湿地の分布と機能を急激に変化させ下流の河川系に悪影響を及ぼしていることを重ねて憂慮し

13.山岳湿地及び高地湿地は一般的に国際的に重要な湿地のリスト(ラムサール条約湿地リスト)で十分に代表されておらず、これまでにこの湿地を指定したのはわずか数か国に過ぎないことに留意し

締約国会議は、

14.締約国、国際団体パートナー、その他関連団体に対して、山岳湿地及び山地湿地の水文学的、生物学的、文化的、社会経済的重要性を認識し、それら湿地の機能と価値に対する認識と理解を増進するための適切で時宜を得た行動をとるよう求める

15.関係締約国、国際団体パートナー、ラムサール事務局に対して、特に、ラムサール条約の実施と、二国間・多国間環境協定の枠組、とりわけ生物多様性条約(CBD)、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、また特に山岳を対象とした協定類の中で進行中の作業、国連開発計画(UNDP)を含む国際機関の各種イニシアティブとの調整を強化することを目指して、山岳湿地及び高標高湿地の調査、保全、賢明な利用に関する情報、専門知識、経験を共有するよう強く要請し、また条約事務局に対して、この進捗についてCOP9に報告するよう要請する

16.締約国に対して、河川流域計画の策定と実施において、山岳湿地及び高標高湿地の役割、そしてその保全と賢明な利用の重要性に、然るべき注意が確実に払われるようにすることを奨励する

17.締約国に対して、山岳湿地の保全状況を評価し、これら重要な生態系に悪影響を及ぼすおそれのある法律、政策、慣行を見直し、そうした影響を食い止め逆転させるために必要な行動をとることを優先事項とすることを重ねて奨励する

18.締約国に対して、山岳湿地の保全と賢明な利用を確保する手段として、他の関連プロセスと協力して山岳湿地の賢明な利用と保全のための戦略と計画を適宜国、地域、地元のレベルで策定し、山岳湿地を国際的に重要な湿地のリスト(ラムサール条約湿地リスト)へ登録するための指定を行い、これらラムサール条約湿地の効果的な管理計画を策定し適用するよう促す

19.科学技術検討委員会(STRP)に対して、関係締約国、国際団体パートナー、専門知識を有する団体・個人と協力して、すべての山岳湿地、特に氷河に関連する山岳湿地が対象範囲に確実に入るようにするために、ラムサール条約湿地分類法その他の技術文書に加えるために必要な修正をCOP9に提案するよう指示し、またラムサール条約事務局に対して、COP8終了後にラムサールハンドブックを改訂するに当たっては、シリーズ中の適切な改訂版のすべてにおいて、山岳湿地系の保全と賢明な利用のための具体的な要請事項を考慮するよう求める


ラムサール条約第8回締約国会議の記録 [和訳:『ラムサール条約第8回締約国会議の記録』(環境省 2004)より了解を得て再録,2005年,琵琶湖ラムサール研究会.]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う.]

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