Swan  琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう第8回締約国会議

ラムサール条約

決議.13:国際的に重要な湿地に関する情報

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「湿地:水、生命及び文化」
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第8回締約国会議
バレンシア,スペイン,2002年11月18-26日


決議.13

国際的に重要な湿地(ラムサール条約湿地)の情報の拡充

1.締約国が勧告4.7において、「ラムサール・データベースに情報を提供する場合、締約国及びラムサール条約事務局は、ラムサール条約湿地の記載のために作成されたデータ票を使うよう」規定し、また国際的に重要な湿地に選定される湿地の記述に「ラムサール条約湿地分類法」を使用することを承認したことを想起し

2.締約国が、決議5.3において、国際的に重要な湿地(ラムサール条約湿地)の指定に当たって、「ラムサール・データシート」と湿地の地図を完成させてラムサール条約湿地リストのために提出することを確認し、またこのことが決議.13、.16、.12によって再確認されたことを同じく想起し

3.「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組及びガイドライン」(決議.11)が、各生物地理区においてラムサール条約湿地分類法に基づく各湿地タイプの適切な代表例を、最低1ヶ所ラムサール条約湿地リストに含めるという長期的目標を含むことをさらに想起し

4.締約国が、決議.13において、最新の地図と完成したラムサール条約湿地情報票(RIS)を提供することを優先し、またそのデータを少なくとも6年毎に改訂するよう決定したことを認識し

5.締約国が勧告4.2を通じて国際的に重要な湿地を認定するための基準を採択したこと、決議.2を通じて魚類を根拠とした追加基準を提供したこと、また「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」に関する決議.11を通じて実質的な改定がなされた基準を、その適用のための詳細手引きと共に採択したことを想起し

6.締約国が、決議.11で採択した国際的に重要な湿地を特定するための基準に充分適合しないRISを、依然ラムサール事務局に提出し続けていることを憂慮し、またラムサール条約湿地リストに包含するために、国がラムサール条約湿地として提出する情報の集積が、RISの異なる項目内でしばしば首尾一貫しないまま提出されていることを同じく憂慮し

7.ラムサール条約戦略計画1997−2002の行動6.3.1で、条約の科学技術検討委員会(STRP)は、改訂中のラムサール条約湿地の特定及び指定のための基準及びガイドラインの維持を要求されていることを認識し、そしてSTRPが、国際的に重要な湿地の特定及び指定のための基準1、2及び3に適合する生物地理区分を配慮する項目をRISに追加する事を、また電子媒体も含んだ適当な地図の条項に関する追加手引きを含む、ラムサール条約湿地情報票完成のための注釈及びガイドラインの改訂及び明確化を助言したことを認識し、そしてまたこの会議が、情報票におけるラムサール条約湿地の境界をより正確にはっきりさせることに関する決議.21を採択したことをさらに認識し;そして、

8.ラムサール条約の下で指定された国際的に重要な湿地は、環境を保護し、その資源を賢明に利用するための集団的な努力の重要な構成要素であるとの見方が国際的社会にますます高まっていること、その結果、これらの湿地に関する完全で正確なデータに対する関心と必要も増していることを考慮し

締約国会議は、

9.本決議に附属する、改訂された「ラムサール条約湿地に関する情報票(RIS)」と「RISを完成させるための注釈及びガイドライン」を承認する

10.ラムサール条約湿地リストのための新しい湿地の指定に向け、また決議.13に従って登録された湿地のRISの改訂に向け、RISを準備している全ての締約国に対して、この情報を改訂された様式でラムサール条約事務局に提出するよう強く要請する

11.ラムサール条約事務局と関心を持つ締約国と共に作業をしている国際湿地保全連合に対して、もし可能であり、好ましい場合は、締約国の情報システムからラムサール条約湿地データベースに対するデータの供給を促進する、RISの電子提出のためのプロトコルを開発するよう要請する

12.条約事務局と国際湿地保全連合に対して、締約国から提供されるRISデータによってラムサール条約湿地データベースを維持すること、またRIS以外に締約国によって提供されたデータなど、ラムサール条約湿地に関連するその他のデータを管理することを要請する。それによってデータは広く一般に利用可能となり、関心のある締約国が参照できるようになる;

13.条約事務局と国際湿地保全連合に対して、本決議によって改訂されたRISによって提供された情報を反映し、また上記第12項による追加的データに連結するようなラムサール条約湿地データベースの開発を引き続き継続することを、そして国際地球科学情報網センター(CIESIN)によって開発されたラムサール条約湿地ゲートウェイとの統合のために、定期的に更新されるラムサール条約湿地データベースの組み込みを含んで、インターネットウェブサイトを通じて利用しやすいラムサール条約湿地データベースを整備することを重ねて要請する

14.STRPに対して、()「RISの注釈及びガイドライン」に対する附属文書の第14-16項で求められている追加的情報はRISのどこに入れればよいのか;()(附属文書の第17-22項で求められている)電子地図を提出する事の価値と可能性;()そのデータの地球規模における互換性;()第三者によるそのデータの利用;()データの使用許可、著作権、アクセス及び料金に関する、追加的手引きを提供することを奨励する

15.国際湿地保全連合に対して、締約国が提供した情報と、上記第12項による関連追加情報に基づいて、ラムサール条約湿地要覧のためのラムサール条約湿地の記載の準備を継続すること、インターネットのウェブページを通じてこれらの情報が入手可能にすること、そして資源が許すならば、各締約国会議に向け、ラムサール条約湿地要覧の改訂版を入手可能にすることを同じく求める

16.RISをまとめるすべての責任者に対して、情報を確実に、ラムサール条約湿地情報票(RIS)の各項に正しく記入するため、「RISを完成させるための注釈及びガイドライン」に示される手引きに従うよう奨励し、また締約国に対して、これらのことをラムサール事務局にRISを提出する前に行うことを確認するよう求める

17.締約国に対して、「RISを完成させるための注釈及びガイドライン」に係る追加手引きに従って、そしてラムサール条約湿地情報票におけるラムサール条約湿地の境界をより正確に規定することに関する決議.21に留意して、適切な地図を準備し、提供するよう、また可能ならば適切な電子フォーマットで地図を提出するよう強く要請する

18.ラムサール条約事務局と国際湿地保全連合に対して、ラムサール条約湿地データベースの一部として電子地図を保管する手はずを整えるよう、また、その適切さ、版権と各国の規制を考慮した上で、この地図を、特に国際湿地保全連合の管理するラムサール条約湿地データベースのウェブ公開情報、CIESINの管理するラムサール条約湿地データゲートウェイ、世界保全監視センター(UNEP−WCMC)の管理する保護区の地球規模データベースの今後の開発に組み込むことができるようにすることを要請する

19.STRPに対して、湿地タイプの追加を視野に入れてラムサール条約湿地分類法を点検するよう、またそのプロセスの助けとなるように、ラムサール条約湿地情報票に自由記入欄を設けるよう要請する;そして、

20.STRPに対して、RIS、国際的に重要な湿地要覧、湿地管理計画、そして他の国際的機関の下で収集されたデータなど、ラムサール条約湿地について入手可能な多様な情報源の見直しを行うよう;またそのような情報の必要性、その用途及び利用者の見直しを行い、そしてラムサール条約湿地における情報の国際的な報告に関して、効率と財源の節約とのよりよい調和を獲得する方法についての勧告をCOP9に向けて作成するよう重ねて要請する


添付文書

ラムサール条約湿地情報票(RIS)

締約国会議の勧告第4.7によって承認された分類[決議.13で修正]

記入に際しての注意

1.ラムサール条約湿地情報票は、本書付随の「ラムサール条約湿地情報票記入のための注釈及びガイドライン」にしたがって作成されるべきこと。本票への記入の前に、必ず上記ガイドラインを読むよう強く促す。

2. 完成したラムサール条約湿地情報票(RIS)(及び付随する地図)をラムサール条約事務局まで提出すること。記入者に対して、本票の電子媒体(MS Word形式)及び可能ならば電子媒体地図のコピーを作成することを強く要請する。


事務局使用欄
日付
登録を受けた日・湿地参照番号

1.本票記入者の氏名、住所:

 (例:環境省担当者氏名)
 環境省自然環境局野生生物課
 東京都千代田区霞ヶ関1‐2‐2
 tel 03-5521-8284 fax 03-3581-7090
 xxx_xxxx@env.go.jp

2.本票記入日、更新日:   年 月 日

3.国名: (例:日本)

4.条約湿地名称:

5.湿地の地図の添付:
添付文書の適切な地図の提出について細目の手引きについては「注釈及びガイドライン」を参照のこと。

a)紙媒体(ラムサール条約湿地リストへの登録時、必須)(□はい  □いいえ):

b)電子媒体(オプション)(□はい  □いいえ):

6.経度緯度: 東経  度 分、北緯 度 分

7.一般的所在地:
所在地の地方名、地方行政区名、条約湿地に最も近い都市名を記述すること。

8.海抜:  T.P.(東京湾中等潮位)   

9.面積:   ha

10.概要:
湿地の主な生態学的特徴や重要性の概要を、短文にまとめること。

11.ラムサール条約湿地選定基準:
該当する基準に○又は下線を記入すること。選定基準及びその適用についての手引きは添付文書「注釈及びガイドライン」参照のこと。(決議.11で採択)

1

2

3

4

5

6

7

8


12.11.で選定した基準の根拠:
選定した基準毎に、順次明確に記述すること。(根拠に合致した書式についての手引きは添付文書参照のこと)

13.生物地理学(指定にあたって、基準1や3、また確実に基準2が適用される場合必須):
ラムサール条約湿地を含む生物地理学的地域を記載し、採用した生物地理学的地域区分システムを明記する。

a)生物地理学的地域

b)生物地理学的地域区分計画(参考文献を記入):

14.湿地の物理的特性:
地質、地形、天然または人工等の起源、水文学的特徴、土壌タイプ、水質、水深、水の永続性、水位の変動、潮汐の変化、流域面積、気候等を適宜記述。

15.集水域の物理的特性:
表面積、一般的な地質学及び地形学的特性、一般的な土壌タイプ、一般的な土地利用、気候(気候タイプを含む)を記述。

16.水文学上の価値:
地下水涵養、洪水調節、堆積物捕捉、安定した海岸線の保持等の機能と価値を記述。

17.湿地タイプ

a)出現度:
ラムサール条約湿地の「湿地分類法」の湿地タイプに該当するコードに○か下線を記入する。各々の湿地タイプの記述は、添付文書の「注釈及びガイドライン」に記載されている。

海洋沿岸域湿地:

A

B

C

D

E

F

G

H

I

J

K

Zk(a)


内陸湿地:

L

M

N

O

P

Q

R

Sp

Ss

Tp

Ts

U

Va

Vt

W

Xf

Xp

Y

Zg

Zk(b)


人工湿地:

1

2

3

4

5

6

7

8

9

Zk(c)


b)優占度:
a)で明記した湿地タイプを、第一にその湿地内で最も広い面積を有する湿地タイプから始めて(面積による)優占度に従って順に列記する。

18.一般的な生態学的特性:
主な生息地と植生の種類、動物群集・植物群落などを適宜記述する。

19.特記すべき植物:
特筆すべき種についての追加情報、またなぜそれらが特記すべきなのか、(「12.基準の適用の根拠」で述べている記述を必要に応じて発展させる)例えば、固有種、気象種、絶滅危惧種、生物地理学的に重要であるのはどの種・群集であるか、などを記入する。但し本項に湿地に現存する種の分類学的リストを記入しないこと−それらは本情報票の追加情報として提供すればよい。

20.特記すべき動物:
特筆すべき種についての追加情報、またなぜそれらが特記すべきなのか、(「12.基準の適用の根拠」で述べている記述を必要に応じて発展させる)例えば、固有種、気象種、絶滅危惧種、生物地理学的に重要であるのはどの種・群集であるか、などを個体数データも含んで記入する。但し本項に湿地に現存する種の分類学的リストを記入しないこと−それらは本情報票の追加情報として提供すること。

21.社会的、文化的価値:
例えば湿地の、漁業生産、林業、宗教上の重要性、考古学的遺跡、社会的な関係等。歴史的、考古学的、宗教上の意味と現行の社会的経済価値とは区別すること。

22.土地保有権、所有権:
(a)湿地:

(b)周辺地域:

23.現在の土地(及び水)利用:
(a)湿地:

(b)周辺地域、集水域:

24.土地利用(水利用も含む)の変更、開発計画等、湿地の生態学的特徴に悪影響を及ぼす要因(過去、現在、将来):
(a)湿地:

(b)湿地周辺地域:

25.実施されている保全策:
条約湿地との境界線の関係を含めて、国レベルでの保護区の種類と法律的地位、管理実践、公的に承認された管理計画の有無とその実施の有無。

26.実施に移されていない保全策案:
例えば、策定中の管理計画、法的保護区とする正式提案の提示等。

27.科学的研究及び施設の現状:
生物多様性モニタリング等を包む、現行の調査プロジェクトの詳細、現地調査事務所の有無等。

28.現在の保全教育:
ビジターセンター、観察用小屋及び自然遊歩道、情報冊子、学校見学用施設等。

29.レクリエーション、観光の現状:
湿地がレクリエーションや観光用に使われているかどうか、使われている場合にはその種類、頻度や利用度等。

30.管轄:
国、地方自治体等の領土上の管轄及び農水省、環境省等の機能上の管轄等

31.管理当局:
湿地の管理を現地で直接に所管する機関または組織の現地事務所の名称、住所を記入する。また、可能であれば必ず、上記事務所で湿地管理に携わる人物の所属・氏名を記入すること。
(例:環境省 自然環境局 xx地区自然保護事務所 xxx支所)

32.参考文献:
科学、技術分野のみ。もし、上記13.生物地理学的地域区分計画の適用がある場合、計画が全て参照できる様、リストアップすること。

本文書及びラムサール条約湿地情報票についての質問状(並びに記入済みの情報票)は、次の住所宛にご送付ください:
Ramsar Convention Bureau, Rue Mauverney 28, CH-1196 GLAND, Switzerland
電話番号: +41 22 999 0170、ファクス番号: +41 22 999 0169、電子メール: ramsar@ramsar.org


添付文書

「ラムサール条約湿地情報票(RIS)」記入のための注釈及びガイドライン

背景と状況

締約国会議勧告4.7は、「ラムサール・データベース、及びその他の適切な場合に情報を提供するときには、締約国及びラムサール条約事務局は、ラムサール条約湿地の記載のために作成された『データシート』を使うよう」定めた。同勧告は、「選定の理由(ラムサール条約湿地選定基準)」及びラムサールの「湿地分類法」と合わせて、「データシート」に記載する情報の種類を掲げた。

決議5.3では、国際的に重要な湿地(ラムサール条約湿地)への指定に際して、「ラムサール・データシート」を完成させて湿地の地図とともに提出することを再確認した。このことは、続けて決議.13と.16でも繰り返し述べられた。正式には「ラムサール条約湿地情報票」(RISと略す)と題するこのデータシートが、ラムサール条約湿地に関する情報とデータを記録するための標準様式を提供する。

決議5.3はまた、ラムサール条約湿地リストへ登録するための選定基準、湿地の機能・価値(水文学、生物物理学、植物、動物、社会、文化の各面での価値)、そして実施方法や計画などの保全策が、特に重要な情報の種類であることを強調し、RISに湿地について記載する際に、ラムサール条約の「湿地分類法」を適用する事の重要性を強調した。

「国際的に重要な湿地の選定基準」は、1974年に最初の基準が採択され、その後の締約国会議によって洗練されてきた。基準の現在の様式は、勧告4.2(1990年)において設定されたものに、決議.2が採択した魚類に基づく追加基準が加わったものである。「基準」は再び根本的に見直しが行われ、適用のための詳細手引きをつけて、「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」の一部として決議.11によって採択された。これらの基準とガイドラインは、本「注釈」の添付文書に含まれる。

「ラムサール条約湿地情報票(RIS)」は、締約国が湿地をラムサール条約湿地として指定する際に完成し、ラムサール条約事務局に提出する。ラムサール条約湿地として登録された湿地の状態は、その生態学的特徴、その特徴に対する脅威と、また進行中のその保全管理の過程と行動との両面において変化する可能性があり、また変化するという認識から、決議.13は、締約国に対して、少なくとも6年おきにRISの内容を更新することを強く要求した。

RISとその付随する地図は、ラムサール条約事務局が保管する。締約国が提供したRISの情報はラムサール・データベースへ入力する基礎データや情報として利用され、ラムサール条約事務局との契約の下に、条約の代りに国際湿地保全連合が管理する。データベースは、、国際的に重要な湿地のリストのための戦略的枠組みとガイドライン(決議.11)や、締約国会議のその他の決議の実施に向けた進行状況の分析や締約国会議への報告など、ラムサール条約湿地に関する情報サービスを提供するために運用される。

あらゆる追加情報提供を含め、締約国によって提供されたRISの情報、ラムサール条約湿地データベースに入力された情報はまた、国際湿地保全連合が各締約国会議に向けてラムサール条約湿地名鑑の作成をするためにも利用される。この条約湿地名鑑には、登録されたそれぞれのラムサール条約湿地の特性や保全状況について、アクセスが公開されて標準化された一覧があり、現在、国際湿地保全連合のウェブサイト(http://www.wetlands.org)から利用することができる。

全般に関する手引き

RISは、条約の3つの使用言語である英語・フランス語・スペイン語のいずれかを使って完成されなければならない。RISと、付随するこの「注釈及びガイドライン」は、3つの使用言語のいずれでも入手可能である。

RISに提供される情報は、明瞭、簡潔に記載し、通常12ページを越えてはならない。

良く研究され、また文献が豊富な湿地、つまり特別な現地調査の対象となった湿地の場合、情報がRISに組み込むことのできるよりもずっと多いこともある。条約湿地に生息する種の状況についての分類リスト、管理計画、公表された内容の写しや報告書のコピーなどの追加情報はRISに添付されるべきもので、条約湿地の公式記録の一部とみなされる。また(プリント、ポジ(スライド)や電子写真などの)湿地の写真は、特に歓迎する。あらゆる追加情報の出典を記載すべきである。

ラムサール条約湿地として指定される場所が、非常に広く、複雑な湿地システム、またはいくつかにわかれた湿地からなる条約湿地の場合には、二つのレベルで対応することが望ましい。つまり湿地系全体に対する大まかな報告と、その湿地系の中にある主要な部分や小湿地に対する詳細な報告である。したがって特に大きな湿地複合については、湿地全体に対する情報票に加えて、そこに含まれる主要地域に対する一連の情報票を作成することが適切と考えられる。

決議.1では、湿地の生態学的特徴を維持するためのラムサール条約湿地のモニタリングの根拠として、その生態学的特性を明瞭に確定することが重要であると強調している。維持されねばならない湿地の生態学的特徴の鍵となる特性には、登録にあたってその根拠とした各々のラムサール基準の下の特性を含めなければならない。さらに、「ラムサール条約湿地及びその他の湿地に係る管理計画策定のための新ガイドライン」(決議.14)に、生態学的特徴である特性を明確化し記述するための手引きが提供されている。

登録された湿地について管理計画が準備されているところでは、RISに提供された情報は、管理計画に記載された生態学的特徴の特性、湿地の価値や機能、その特徴に影響を与え、または与えうる要素、価値や機能、そしてモニタリングを包む管理計画策定プロセスと合致していなければならない。

湿地がラムサール条約湿地に指定された後に、管理計画が管理計画策定プロセスの一部として準備されたとき、RISに提供された情報をチェックしなければならず、また必要であれば、RISを改訂して完成させ、ラムサール条約事務局に提出しなければならない。

決議.1の付属書では、条約湿地の生態学的特徴の説明・評価のために集められた情報の価値を高める必要があること、及び以下に重点を置く必要があることを記している。

ラムサール条約湿地情報票(RIS)の各項作成の手引き

1.情報票記入者の氏名、住所:情報票の記入を行った人の氏名、組織名(機関名)、住所、電話番号、ファクス番号、電子メールアドレスを記載。

2.日付:情報票の記入日(または情報票を更新した日)を記入。記入に際し、月は数字ではなく月の英語名で記入すること。

3.国名:締約国の正式名称(短縮形)を記入。

4.条約湿地名称:条約の使用言語である英語、フランス語、スペイン語のいずれかにより、条約湿地に指定された湿地の正式名称を記入。日本語の名称など、別の名称は正式名称の後に括弧をつけて記入すること。使用される湿地名称は、本項と地図で使用される湿地名称を確実に同一とすること。本項で記入した名称がそのままラムサール条約湿地リストに登録されるときにも使用される。

5.条約湿地の地図:湿地の公認された最新で適切な地図を、紙媒体でRISに添付。(可能であれば電子情報も提出すること)いずれにせよ、紙媒体の地図は、国際的に重要な湿地のリストへの登録のための必須事項である。RISに地図を添付したかどうかに関して、□「はい」・□「いいえ」にチェックを入れる。地図には、ラムサール条約湿地の境界を明確に示すこと。添付文書で、ラムサール条約湿地の適切な地図及びその他の地理情報に関する規定の詳細な手引きを示す。注として、供給された地図及びラムサール条約湿地に関連する他の地図のリストをRISに添付しなければならない。

6.経度緯度:湿地のほぼ中心の地理的座標を、緯度、経度の度、分、秒で表す(南緯 01°2415 東経 104°1601 または北緯 010°3000 西経 084°5145 など)。対象湿地が互いに離れた構成単位から成る場合には、その個数を明記する。複数の構成単位が最低 1.6 km四方()以上離れて位置する場合、構成単位ごとの中心地の座標を記入する(例えば「A、B、C、」毎など、個別の名称や標識(ラベル)の区別に応じて)。いかなる別個の構成単位であっても、RISで区別したものは、条約湿地地図上でも明確に分類すること。また単独で 1,000 haを占める湿地に、中央の地理的座標一点では、不充分である。広大なラムサール条約湿地の地理情報は、湿地の南西及び北東の隅の地理的座標を与える事によって補うこと(記載項目5及び9も参照のこと)。

(*)緯度・経度の1が、約1.6 kmであるため(経度1は赤道の場合)。

ほぼ中心の地理的座標を簡単に明記出来ない場合、またその点が条約湿地範囲外にはずれてしまう場合や非常に狭い部分に落ちてしまう場合はその旨を注記して、条約湿地の大半を占める部分のほぼ中央の点を明記すること。

7.一般的所在地:湿地の全体としての所在地を記述。この記述には、行政上の大きな括りの地域名(例:都道府県といった行政区分)とそれが属する地方名(例:宮城県/東北・本州、沖縄県/沖縄・九州、など)、「県」「地区」や、大きな行政上の中心となる都市、町、市で最も近くにある所から湿地までの直線距離と方位を含めて記載すること。中心となる都市の人口や行政地方名(可能であればすぐ上のレベルの行政区分/管轄区分も含める)も記載する。

8.海抜:湿地の平均海抜、または最高海抜及び最低海抜を平均海面上のメートル数で記入する。「平均」、「最高」、「最低」など数値の意味する語をはっきりと記入すること。

9.面積:指定した条約湿地の総面積をヘクタールで記入。個別の構成単位に分かれた個々の面積がわかっている場合、これらの構成単位を識別・区別する名称をそえて、その各々の面積を記入する(項目5. 地図も参照のこと)。

10.概要:湿地タイプやその重要性、主要な物理的・生態学的特徴となる特性、最も重要な価値や機能、また特に興味深い特徴などを、「精彩のある文章」で、湿地を簡単な短文にまとめる。特に、17b)項で最も優占度が高いと特定されるような最も重要な湿地タイプも注記すること。

11.ラムサール条約湿地選定基準:「国際的に重要な湿地の選定基準」のうち、対象湿地に当てはまる記号を、○で囲むか下線を引く。当該選定基準に関しては、添付文書と、決議.11で確定された「基準の適用にあたっての詳細手引きについて」を参照のこと。

多くの湿地は1個以上の基準を満たすことに留意して、合致する全ての基準を完全にかつ精確に選ぶこと。各々の選定基準の適用を正当づける個別の理由は、次項12に記述する。項目11では根拠とする基準を選ぶ。。

12.項目11で選定した基準の根拠:項目11で選定した上記のラムサール条約湿地基準に関し、どういった理由で条約湿地の基準を適用するかを、個々の基準について記述。RISの中で本項は、「国際的に重要な湿地」の概念の根幹である。基準コード単独では、各々の基準が個々の条約湿地に適応している事についての、道筋だった明確な情報を伝達しない−従って、ラムサール基準コードの選択にあたっての説明及び裏付けに、充分に正確な記述を提供することが肝要である。本項の記述は、基準をそのまま繰り返すだけでなく、選定された基準が個々のラムサール条約湿地にどのように当てはまるのかを説明するのに必要な詳細情報を記述しなければならない。添付文書「基準の適用のための詳細手引き」(決議.11で採択)を参照のこと。

登録のために選択した基準の適用に対する根拠を準備するにあたって、個々の選定基準とその適用のためのガイドラインの正しい使用方法に関して、いくつかの点を考慮に入れなければならない:

基準1及びの適用のためのガイドラインは、これらの基準を、それが起こる生物地理区という文脈の中で、湿地に適用すべきことを強調する。しかし、生物地理区が湿地タイプによって異なる場合があることは認める。生物地理区の文脈は、基準2による、脅威を受けている生態学的群集の選定のための、ある理由に対して適用することができる。条約湿地の周囲にある生物地理区と、適用した生物地理学的地域区分の方法は、「13.生物地理学」の項に記入しなければならない;

基準5に関して、ガイドラインは、実際の水鳥の飛来数の合計をはっきり述べ、また望ましくは、入手可能な場合、最近数年間の平均飛来数を述べなければならないこととしている。湿地が水鳥2万羽以上を支えているなど、単に基準をなぞって書くだけでは不充分である;

基準6を選定の根拠とすることに関しては、この基準は、水鳥の種または亜種の地域個体群の総数の1%以上を定期的に支えていることに対して適用しなければならないことを認識すること、また水鳥の飛来数の生物地理的範囲の該当するケースのほとんどは、締約国1国の国土よりも広い範囲となることを認識することが特に重要である。基準6の下に記載する地域個体群のリストには、この鳥の個体群が湿地内で通常観察される個体数だけでなく、生物地理学的な個体群の名称を記載しなければならない。基準6を適用するための最低1%の推奨基準は、国際湿地保全連合発行の『水鳥個体数推計第3版』(2002年)に記載されており、またそこには個々の個体群の生物地理的範囲も記載されている。この基準をこれら生息数の最低1%基準が得られた水鳥個体群だけに適用すべきであることは注意を要する。しかしながら、『水鳥個体数推計第3版』に個体数が記載されていない水鳥種に対して、ガイドラインは、他の情報源からの確かな生息数推定値と最低1%が得られたときにはこの基準を適用してもよい、しかしそのデータの情報源は明確にしなければならない、と記す。単に湿地が個体群の1%以上を支えている、と基準をそのまま記載するだけでは充分でなく、また個体群がその国の固有種である場合を除き、「国内」の個体数の1%以上の個体群を、個体数をつけて、リストに記載することもまた正当な根拠とはならない ;

基準2及びの全てまたはいくつかが適合するとき、該当する種の名前(学名及び英語、フランス語、スペイン語による種名)は、根拠の中に記載しなければならない。

)魚類や貝類の多様性についての基準7を適用することに関して「手引き」は、この基準を利用するには、種のリストだけでは根拠の記述として充分でないこと、また、生活史の段階、種の相互作用、地域的固有性のレベルなど、この基準に適合する高度の多様性を表す他の特性を要求している。

13.生物地理学:条約湿地を取り巻く生物地理区と、適用された生物地理学的地域区分法とを(全ての参考文献の引用とともに)記載しなければならない。生物地理学上の明細は、基準1と3を正しく適用し、また基準2のある種の適用にとって本質的である。(「11.ラムサール基準」及び「12.基準の根拠」を参照)この記述の中で、ラムサール基準適用のためのガイドライン(附属文書を参照のこと)は、「生物(地理)区」を「気候、土壌の種類、植生など、生物的及び物理的パラメーターを利用して確定した、科学的かつ厳密な地域の判定」と定義している。島国でない締約国は、生物地理区は本質的に国境を超越していること、またさまざまな湿地タイプの典型的な、または希少、固有である例の所在を確定するには、国同士の協力が要求されるケースが多いことに留意されたい。また、生物地理学的区分の性質は、自然な変異を決定するパラメーターの性質に従い、湿地タイプによって異なるであろうことも認識されている。(「注釈及びガイドライン」の附属文書を参照)

さまざまに異なった地球規模的、超国家的、地域的な生物地理学的区分法が一般に使われている。国際的に適切であると受け入れられているもの区分法は一つもない。従って、締約国は、(決議.11に対する附属書によって)入手可能な、最も適切であり、科学的に厳密なアプローチであると各国自身が認める、地域区分法を採用するよう強く要請されている。

14.湿地の物理的特徴:該当する場合には以下の特徴を含めて、湿地の主な物理的特徴を簡潔に説明:

15.集水域の物理的特徴:簡単な集水域の特徴の描写。以下を含むこと:

16.水文学上の価値:湿地の水文学上の主要な「価値」について説明。例えば、湿地がその生態系を通してもたらす便宜等。洪水調節の役割、地下水の涵水、海岸線の安定化、堆積物や栄養分の保持や受入れ、気候変動の緩和、そして水質浄化や水質の保持なども含まれるが、これに限る必要はない。(湿地の水文学上の価値や機能から外れる)湿地の水文学は、「14.物理的特徴」に記載すること。

17.湿地タイプ:まず最初に、対象となる湿地の範囲内に見出される湿地タイプの全てを○で囲むか下線によって列挙し、次に、記載した最も広い面積の湿地タイプを先頭にして、(面積による)それらの優占度の高さの順に湿地タイプを列挙する。「ラムサール条約湿地分類法」(本「注釈及びガイドライン」添付文書を参照のこと)に、各湿地タイプコードにどんなタイプの湿地が当てはまるかが記されている。湿地タイプは海洋沿岸域湿地、内陸性湿地、人工湿地の3群に分類されること、また特に広大な条約湿地の場合、ひとつの湿地にはこれら三つの主な湿地タイプのうちふたつ以上が含まれてよいということに留意すること。

いくつかの海洋沿岸域湿地タイプ(例えば河口水域(タイプF)や干潟の森林性湿地(タイプI))が海岸線から遠く内陸に存在することがありうるし、また逆に、内陸性湿地は海岸線近くに存在することもありうるので、本項の追加記述として、内陸・沿岸性、または海洋・沿岸性、のように海岸線を基準とした湿地の一般的地理学的な位置もぜひ記載していただきたい。

湿地タイプの面積による優占度を列挙したら、もし可能なら、指定された湿地の合計面積に対する、構成するそれぞれの湿地タイプの面積や面積割合を記載する。とはいえ、幅広い多様性を備えた広大な湿地に対し、それを記述する事は難しいであろう。もし湿地が複数の単位から成り、それぞれ異なった湿地タイプや優先度の異なったタイプが別々の湿地単位内に現存するのであれば、各々の構成単位に対する湿地タイプの優占度もまた列挙すること(「5.地図」、「6.緯度経度」、と「9.面積」に関する手引きも参照)。

もし、選定された湿地が、非湿地性生息域の範囲を含む場合、例えば集水域のどこかにその様な部分が含まれる場合、このような生物的特徴を備えた湿地の面積、或いは全面積に対する割合をここに列挙することは助けとなる。

18.一般的な生態学的特徴:優占する植物群集と種を挙げ、帯状分布や季節的変化、長期的な変化等を記載して、主な生息地と植生タイプについて説明。近接地域内の自然の植物群集で在来のものがあればそれについて簡単に記入するほか、現在の植物群集が在来の植生と異なる場合には、当該植物群集(栽培を含む)について簡単に記入する。その顕著な食物連鎖に関する情報もこの項に記入する。

19.特記すべき植物:湿地が特に重要、また意義深いとされる理由に関わる植物の種または群集に関する追加・付加的情報を記入。湿地の国際的な重要性を根拠付けるために用いた情報(「12.基準の根拠」)や、「18.一般的な生物学的特徴」で既に提供された情報と重複させないこと。それぞれの種または群集が特記すべきであると結論付けられた理由を明記すること。(例えば、経済的に重要な種の場合、など)

地域の固有植物種に関し、もしそれらが、その湿地に対する基準3の適用に向け考慮されなかった場合(例えば地域固有種の個体数が、基準のための手引きに従って、「重要」と結論づけられなかったとき)、本項に記載してよい。

(偶発的に、あるいは故意に)外から移入された種や、侵略的な植物種もまた、ここに掲載すること。(侵入種や移入種による湿地への影響の記述は、「24.湿地の生態的特徴に悪影響を及ぼす要因」に記載すべきである。)

(出現する)一般的な種のリストは、本項やRISのその他の項目に記載する必要はないが、(湿地の詳細に基づいて正確に分類されていれば)その様なリストは、完成次第RISの附属文書とすること。

20.特記すべき動物:湿地が特に重要、また意義深いとされる理由に関わる動物の種または群集に関する追加・付加的情報を記入。湿地の国際的な重要性を根拠付けるために用いた情報(「12.基準の根拠」)や、「18.一般的な生物学的特徴」で既に提供された情報と重複させないこと。それぞれの種または群集が特記すべきであると結論付けられた理由を明記すること。(例えば、経済的に重要な種の場合、中枢種〔キーストーン種〕である場合、高度な湿地生物多様性の価値に関係する種、例えばカメ、ワニ、カワウソ、イルカなど)。

地域の固有動物種に関し、もしそれらが、その湿地に対する基準の適用に向け考慮されなかった場合(例えば、固有種の個体数が「重要」と結論づけられない(基準3)、または固有魚種の割合が、基準7への適合のための閾値に到達しない、など)、本項に記載してよい。

(偶発的に、あるいは故意に)外から導入された、または侵略的な動物種もまた、ここに掲載すること。(侵入種や移入種による湿地への影響の記述は、「24.湿地の生態的特徴に悪影響を及ぼす要因」に記載すべきである。)

(出現する)一般的な種のリストは、本項やRISのその他の項目に記載する必要はないが、(湿地の詳細に基づいて正確に分類されていれば)その様なリストは、完成次第RISの附属文書とすること。

21.社会的、文化的価値:湿地の主な社会的及び経済的価値と機能、そしてラムサール・ハンドブック第1巻から6巻にある「賢明な利用」の特性(例えば観光、野外レクリエーション、教育及び科学的調査、農業生産、放牧、水源、漁業生産等)、また主な文化的価値と機能(例えば考古学的場所、歴史的意味あい、また先住民にとっての意味を含む宗教上の重要性、等)、を記入する。詳細な情報については、決議.19の付属書「湿地を効果的に管理するために湿地の文化的価値を考慮するための指導原則」を参照のこと。可能な場合には必ず、記入した価値のうち、自然の湿地の過程と生態学的特徴の維持と両立するものはどれか、を示す。持続不可能な利用に由来するもの、また、深刻な生態学的変化を招くものの詳細は、「24.湿地の生態的特徴に悪影響を及ぼす要因」に記載しなければならない。

22.土地保有権、所有権:条約湿地と周辺地域の所有権・保有権について詳述。もし可能であれば、さまざまな保有者・所有者の分類を各々の割り当てられた土地の所有率として明示すること(例えば、半分は州保有地、など)。複雑な保有権の取り決めや規定はすべて説明すること。国または関係地域において特別な意味をもつ契約条項については、その意味を説明する。本項と土地利用の詳細の項で記述するさまざまな土地保有者間の関係を次の項(「23.現在の土地利用」)で記述すること。

23.現在の土地(及び水)利用:(a)条約湿地、(b)周辺地域及び集水域、における全ての主な人間活動を記入。湿地における主な人間活動と主要な土地及び水利用の形態(家庭用水、工業用水の供給、潅漑、農業、家畜の放牧、林業、漁業、養殖、狩猟)の説明に加えて、その地域の人口も記入する。湿地における調査や教育、娯楽・観光に関係する行動や利用もまた本項で言及すること。ただし、これらの事柄の詳述は、それぞれ項目27、28及び29に記述すること。土地及び水のそれぞれの利用の規模や傾向等に関係する相対的な重要性、規模、及び傾向を可能な限り記述すること。(例えば、広大な湿地の一部分のみ、または明確な一帯や、ある湿地タイプの部分など)もし行動や利用が、湿地の明確に独立した部分に限られている場合は注記すること。(b)では、指定された湿地の状態に、直接または間接的に影響のある湿地周辺及びその広大な集水域における土地及び水利用と、湿地の影響を受ける可能性のある下流地域の土地利用についてまとめる。水利用についてさらに詳細には決議.1で採択された「湿地の生態学的機能を維持するための水の配分と管理に関するガイドライン」を参照のこと。

24.土地及び水利用の変化や開発計画などによる変化を含む(過去・現在・未来の)湿地の生態学的特徴に悪影響を及ぼす要因:湿地の内部及び周辺(適切な場合は、より大きな集水域を含める)から、湿地の生態学的特徴に影響を及ぼす人為的及び自然的要因。これらは湿地の自然生態学的特徴に対して、過去に悪影響を与えていた、現在与えている、あるいは将来与えるであろう、新しいまたは変化中の行動・利用、また主な開発計画などを含むものとする。全ての悪影響、また変化の要因を報告するにあたり、計量可能な、定量的な情報(データが存在するのであれば)、及び変化の要因やその影響の規模、大きさ、動向といった情報を提供すること:この情報は、湿地の生態学的特徴をモニタリングする際の基盤として提供されなければならない。

変化を招く作用因(例えば水路の変更、排水、干拓(土地改良)、汚染、過放牧、過度の人為的撹乱や過度の狩猟、漁業など)と、その結果の変化とその影響(例えば土砂の堆積、侵食、魚類の大量死、植生体系の変化、生息域の分断、種の繁殖の撹乱、気候変動に起因する自然または生態系の変化など)を明記する事が重要である。湿地自体に起因する要素と、湿地の外から発生するが湿地に与える影響を現時点で持っている、または持つ可能性がある要素を区別することもまた重要である。悪影響を与える要素が、可能性であるのか、既に存在するのかについてもまた識別すること。

汚染について記入する場合には、具体的な有害化学汚染物質とその汚染源を記載すること。これには、工業起源及び農業起源の化学物質の排水その他の排出物が含まれる。

湿地の生態学的特徴に過去、現在において悪影響を与えたり、将来において悪影響を与える可能性のある、エピソード的な突然の大変動(例えば地震や火山の噴火など)や植生の遷移等の自然現象がある場合には、円滑にモニタリングできるようにするために詳述する。

「19.特記すべき植物」と「20.特記すべき動物」で明らかにした、侵略的移入種または移入種、及び影響のあるあらゆる侵入について(偶発的か、或いは故意か、)の導入の歴史について、情報を提供すること。

25.実施された保全策:国の保護区についての法的地位、また(ラムサール条約湿地以外の)国際的な保全の指定、また湿地が国境をまたいでいる場合は、湿地の全体または一部分に適用される二国間或いは多国間の保全対策について、その詳細を記入。もし保護区が設立されている場合は、設立の日付及び保護区の面積を記載すること。湿地の一部分だけが保護区に含まれる場合は、保護されている湿地生息域の範囲を注記すること。その他、開発に関する制限、野生生物に有益な管理の実施、狩猟の封鎖など、湿地で実施されるその他の保全対策について、どのようなものでも記述すること。

もし湿地のための管理計画が展開され、また実行されているとすれば、そのすべてを含めて、管理計画策定手段を本項で記述。公に承認を得たものかどうかを含めること。その管理計画を、「32.参考文献」に記載すること。また可能ならば、RISに対する追加情報として管理計画の複写を提供する事。

現在、湿地で実施されているモニタリング計画や調査について、その方法や方式に関する情報をここで記載。ラムサール条約の「賢明な利用の実施に関するガイドライン」(決議4.10)及び「賢明な利用の概念を実施するための追加手引き」(決議5.6)が湿地で適用されている場合、或いはその他のより最近の、更に進んだ賢明な利用のガイドラインの実施の実例について説明する。(「賢明な利用」はラムサール条約の基本理念である)

既存のラムサール条約湿地のRISを改訂するとき、もしモントルーレコードに記載される場合、或いはそこから除外される場合、それについて言及し、またラムサール諮問調査団の視察のあるときはその詳細を記載すること。

統合型流域・集水域管理、あるいは、統合型沿岸域・海域管理が適用されている場合には、その旨を記載すること。保護地域の法律制定や個々の保護地域における法的地位の効果に関する簡単な評価を記載すること。地域住民及び先住民を条約湿地の参加型管理に巻き込んでいる場合は、このプロセスに関するラムサールガイドライン(決議.8)とのつながりで、それを記載する。

26.提案されたが実施に移されていない保全策:立法、保護及び管理についての提案など、その湿地に対して提案された、または準備中の保全策があれば、それについて詳述する。

長い間懸案となったままで実施されていない提案があればその経緯をまとめる。また、適切な政府当局に対して既に正式に提出した提案と、正式の承認を得ていない提案とを区別する(例えば、公表された報告書における提言と専門家会議の決議等)。準備中ではあるが、まだ完成していない、承認されていない、或いは実施されていない管理計画があれば、それについても記載する。

27.科学的研究及び施設の現状:現在行われているモニタリングを含む科学的研究計画の詳細、および湿地内の土地利用計画をすべてここに記載。また「23.現在の土地(及び水)利用」に記された研究用特別施設に関する情報を提供する。

28.現在の湿地に関連または利益のある、広報教育普及啓発(CEPA)に関連した環境教育活動:「23.現在の土地(及び水)利用」で記述された研修を含む、広報・教育・普及啓発(CEPA)に関する既存の計画や行動、施設がある場合には本項に記載。湿地の、教育における可能性についてのコメントも記載すること。CEPAの問題とラムサール条約に関する詳細な情報は、ラムサール・ウェブサイトhttp://ramsar.org/outreach_index.htmを参照のこと。

29.レクリエーション、観光の現状:「23.現在の土地(及び水)利用」で説明された、レクリエーションと観光に関する湿地の現在の利用について詳細を記載。レクリエーションや観光のための既存または計画中のビジター施設やセンターがあれば、その詳細を記載し、もしわかれば湿地を訪れる年間観光客数も記載する。どのようなタイプの観光か、また観光が季節的なものかどうかも記載する。

30.管轄:以下に係る政府当局の正式名称及び住所を記入。a)湿地の「領土上の管轄権」を有する行政当局(国、地域、市等);b)保全を目的とする「機能上の管轄権」を有する当局(環境省、漁業省等)。

31.管理当局:湿地の現地で保全と管理を直接に所管する機関または組織の現地事務所の名称、住所を記載。可能であれば、湿地の現地での所管に係る人物の氏名や所属も、必ず記載すること。湿地の管理に関する、特別な或いは独自の取決めがある場合は、それも記入する。

32.参考文献:湿地に関係する主要な技術的参考文献のリスト。これには、管理計画、主要な科学論文、文献を含む。ラムサール条約湿地のための、またその湿地を特別に扱う(例えば国内の全ラムサール条約湿地の詳細を紹介するウェブサイトなど)、機能的・活動しているウェブサイトのアドレス及び最新の更新日も列挙する。湿地に関して多数の刊行資料が入手できる場合には、記載すべき最重要文献のみをここに記載し、その際には、広範な文献目録が掲載されている最近の文献を優先する。可能ならば常に、管理計画のコピーなど最重要文献は抜き刷りまたはそのコピーを添付する。


添付文書

ラムサール条約湿地分類法

このコードは、勧告4.7によって承認され、締約国会議の決議.5及び.11によって修正されたラムサール条約湿地分類法に基づいている。ここに掲げる分類は、各条約湿地が表す主要な湿地生息地を速やかに特定できるように、大まかな枠組みだけを提示するものである。

海洋沿岸域湿地

A -- 低潮時に6メートルより浅い永久的な浅海域。湾や海峡を含む。
B -- 海洋の潮下帯域。海藻や海草の藻場、熱帯性海洋草原を含む。
C -- サンゴ礁
D -- 海域の岩礁。沖合の岩礁性島、海崖を含む。
E -- 砂、礫、中礫海岸。砂州、砂嘴、砂礫性島、砂丘系を含む。
F -- 河口域。河口の永久的な水域とデルタの河口域。
G -- 潮間帯の泥質、砂質、塩性干潟
H -- 潮間帯湿地。塩生湿地、塩水草原、塩性沼沢地、塩生高層湿原、潮汐汽水沼沢地、干潮淡水沼沢地を含む。
I -- 潮間帯森林湿地。マングローブ林、ニッパヤシ湿地林、潮汐淡水湿地林を含む。
J -- 沿岸域汽水/塩水礁湖。淡水デルタ礁湖を含む。
K -- 沿岸域淡水潟。三角州の淡水潟を含む。
Zk(a) -- 海洋沿岸域地下カルスト及び洞窟性水系

内陸湿地

L -- 永久的内陸デルタ
M -- 永久的河川、渓流、小河川。滝を含む。
N -- 季節的、断続的、不定期な河川、渓流小河川
O -- 永久的な淡水湖沼(8haより大きい)。大きな三日月湖を含む。
P -- 季節的、断続的淡水湖沼(8haより大きい)。氾濫原の湖沼を含む。
Q -- 永久的塩水、汽水、アルカリ性湖沼
R -- 季節的、断続的、塩水、汽水、アルカリ性湖沼と平底
Sp -- 永久的塩水、汽水、アルカリ性沼沢地、水たまり
Ss -- 季節的、断続的塩水、汽水、アルカリ性湿原、水たまり
Tp -- 永久的淡水沼沢地・水たまり。沼(8ha未満)、少なくとも成長期のほとんどの間水に浸かった抽水植生のある無機質土壌上の沼沢地や湿地林。
Ts -- 季節的、断続的淡水沼沢地、水たまり。無機質土壌上にある沼地、ポットホール、季節的に冠水する草原、ヨシ沼沢地。
U -- 樹林のない泥炭地。潅木のある、または開けた高層湿原、湿地林、低層湿原。
Va -- 高山湿地。高山草原、雪解け水による一時的な水域を含む。
Vt -- ツンドラ湿地。ツンドラ水たまり、雪解け水による一時的な水域を含む。
W -- 潅木の優占する湿原。無機質土壌上の、低木湿地林、淡水沼沢地林、低木の優占する淡水沼沢地、低木カール、ハンノキ群落。
Xf -- 淡水樹木優占湿原。無機質土壌上の、淡水沼沢地、季節的に冠水する森林、森林性沼沢地を含む。
Xp -- 森林性泥炭地。泥炭沼沢地林。
Y -- 淡水泉。オアシス。
Zg -- 地熱性湿地
Zk(b) -- 内陸の地下カルストと洞窟性水系

注意:「氾濫原」とは、一以上の湿地タイプを表すのに用いられる意味の広い用語であり、R、Ss、Ts、W、Xf、Xp等のタイプの湿地を含む。氾濫原湿地の例としては、季節的に冠水する草原(水分を含んだ天然の牧草地を含む)、低木地、森林地帯、森林等がある。本ガイドラインでは、氾濫原湿地を一つの湿地タイプとしては扱ってはいない。

人工湿地

1 -- 水産養殖池(例 魚類、エビ)。
2 -- 湖沼。一般的に8ha以下の農地用ため池、牧畜用ため池、小規模な貯水池。
3 -- 潅漑地。潅漑用水路、水田を含む。
4 -- 季節的に冠水する農地(集約的に管理もしくは放牧されている牧草地もしくは牧場で、水を引いてあるもの。)
5 -- 製塩場。塩田、塩分を含む泉等。
6 -- 貯水場。貯水池、堰、ダム、人工湖(ふつうは8ヘクタールを超えるもの)。
7 -- 採掘現場。砂利採掘抗、レンガ用の土採掘抗、粘土採掘抗。土取場の採掘抗、採鉱場の水たまり。
8 -- 廃水処理区域。下水利用農場、沈殿池、酸化池等。
9 -- 運河、排水路、水路
Zk(c) -- 人工のカルスト及び洞窟の水系


添付文書

国際的に重要な湿地の選定基準及びガイドライン

本基準は、第7回締約国会議(1999年)で採択され、従来使用されていた第4回と第6回締約国会議(1990年及び1996年)で採択された基準に代わるもので、ラムサール条約湿地の選定における第2条第1項の実施のガイドとなる。

基準グループA 代表的、希少または固有な湿地タイプを含む湿地

基準1:適当な生物地理区内に、自然のまたは自然度が高い湿地タイプの代表的、希少または固有な例を含む湿地がある場合には、当該湿地を国際的に重要とみなす。

基準グループB 生物多様性の保全のために国際的に重要な湿地

種及び生態学的群集に基づく基準

基準2:危急種、絶滅危惧種または近絶滅種と特定された種、または絶滅のおそれのある生態学的群集を支えている場合には、国際的に重要な湿地とみなす。

基準3:特定の生物地理区における生物多様性の維持に重要な動植物種の個体群を支えている場合には、国際的に重要な湿地とみなす。

基準4:生活環の重要な段階において動植物種を支えている場合、または悪条件の期間中に動植物種に避難場所を提供している場合には、国際的に重要な湿地とみなす。

水鳥に基づく特定基準

基準5:定期的に2万羽以上の水鳥を支える場合には、国際的に重要な湿地とみなす。

基準6:水鳥の一種または一亜種の個体群において、個体数の1%を定期的に支えている場合には、国際的に重要な湿地とみなす。

魚類に基づく特定基準

基準7:固有な魚類の亜種、種、または科、生活史の一段階、種間相互作用、湿地の利益もしくは価値を代表する個体群の相当な割合を維持しており、それによって世界の生物多様性に貢献している場合には、国際的に重要な湿地とみなす。

基準8:魚類の重要な食物源であり、産卵場、稚魚の成育場であり、または湿地内もしくは湿地外の漁業資源が依存する回遊経路となっている場合には、国際的に重要な湿地とみなす。


添付文書

ラムサール条約湿地のための地図や他の空間データの規定のための追加ガイドライン

以下の手引きは、国際湿地保全連合とラムサール条約事務局、世界遺産条約、UNEP世界保全モニタリングセンターの経験から、また同様に「世界遺産条約, 1999, 世界遺産登録地指定及び保全報告の状態に向けたデジタル及び地図学ガイドラインを提案する会議」(WHC-99 / CONF.209 / INF.19. Paris, 15 November 1999. WWW document: http://www.unesco.org/whc/archve/99-209-inf19.pdf に掲載)に提供された手引きから書かれたものである。


1.適切な地図を提供することは、条約第2条1項の下の要請であり、それは国際的に重要な湿地(ラムサール条約湿地)選定の手順の基本であり、また「ラムサール条約湿地情報票(RIS)」に提供する情報の本質的な部分である。湿地に関する明確な地図情報もまた、湿地管理の核心である。

2.この追加手引きは、(例えば、地理情報システム(GIS)ソフトを使用することで)ラムサール条約湿地の地図を電子形式で準備、提供すること、また全地球測位システム(GPS)による正確なウェイポイントの確定を通じて、締約国が湿地の境界を明確に描写することについての能力を高めてきていることを認める。

3.ラムサール条約湿地の指定に際して締約国が提出する地図は、出来るかぎり、そして高優先順位で:

)専門的地図作成の基準に合わせて準備しなければならない。(専門的地図作成の基準に合わせた地図が準備されない場合は問題が生じる。)普通に不透明にした手書の湿地境界線や斜線引き(例:区分表示のための)が、それ以外の重要な地図の特徴をぼやかしてしまうことがしばしばある。色付けされた注釈は、地図の原本では、地図の特徴を示す説明書きから明白に区別出来るものの、白黒のコピーではほとんどの色分けが区別出来ないということを認識するのは重要である。そのような追加情報は、概略図を追加して提供されるべきである;

)ラムサール条約湿地の自然な、または改変された環境を示すべきこと。また条約湿地の大きさに応じ、以下に示す地図の縮尺の範囲内で明記しなければならない;

)ラムサール条約湿地の境界を明瞭に示し、既存、または提案されている緩衝帯からこれを区別すること;

)もし湿地が以前登録されたラムサール条約湿地に接し、または以前の条約湿地を包含する場合、それら以前の条約湿地の全ての境界を表示し、前に登録された範囲全ての現在の状況を明らかにしなければならない;

)境界及び地図上に示される条約湿地の指定に関連する特性の分類をそれぞれ示す記号表や判例表をつけ;そして、

)地図の縮尺、地理学上の座標表示(緯度・経度)、方位表示(北の方向)、また可能であれば地図の投影法を明記すること。もし可能であれば、地図(または手引き地図)にいくつかのその他の特徴もまた明示すること。

4.ラムサール条約湿地に指定するために最も相応しい地図あるいは一連の地図はまた、以下の項目を明瞭に示すこと。しかし、これらの情報を蓄積することの優先順位は、上記段落3に記載された属性よりも低い:

)基本的な地形情報;

)関連する保護区指定の境界及び行政上の境界(例:(州または)県や市、郡など);

)条約湿地の湿地と非湿地の部分の明瞭な輪郭、そして条約湿地の境界に対する湿地の境界の描写。これは特に登録する湿地の範囲を越えて湿地が広がるときに当てはまる。可能ならば、主たる湿地生息タイプ及び主要な水文学的特性の分布に関する情報もまた有益である。湿地の広がりの中にはっきりとした季節的変化があるときは、湿った季節と乾いた季節における湿地の広がりを別の地図で示す事は役に立つ;

)主なランドマーク(例:街、道、など);そして、

)同じ集水域内における土地利用の分布。

5.締約国の領土内におけるラムサール条約湿地の一般的所在地を示す地図はまた、きわめて有用である。

6.地図を切り取ってはならない。データ管理者やラムサール条約事務局のスタッフが、縁に印刷された注記や、緯度・経度の印を参照できるようにするためである。

7.地図が上記属性の全てを備えており、適切な縮尺(以下手引きを参照)によっていれば、もし地図(や地図集)が印刷書式(紙媒体)のみで提供される場合(すなわち電子地図媒体がまだ用意されていない場合)も、位置情報システム(GIS)に組み込むための地図のデジタル化は容易になる。

8.その後のデジタル化を正確に歪みなしに行うために、地図は原版(コピーを2部提出する)でなければならず、コピーは認めない。

9.追加項目として、コピーや発表用資料作成の上で、他に主要な地図の次の2つバージョンがきわめて有益である:

)A4サイズに縮小した地図のカラー写真;

)TIFFファイルその他のデジタル画像ファイル(例:JPEGやPDFなど)。

地図の縮尺

10.地図の最適縮尺は、描かれる条約湿地の大きさによる。さまざまな大きさのラムサール条約湿地の地図に対する最適な縮尺は以下のとおりである:

条約湿地の大きさ(ha

地図の適用(最低限の)縮尺

1,000,000以上

1:1,000,000

100,0001,000,000

1:500,000

50,000100,000

1:250,000

25,00050,000

1:100,000

10,00025,000

1:50,000

1,00010,000

1:25,000

1,000以下

1:5,000


11.要約すれば、地図は、RISに記述した湿地の特徴を可能な限り明確に描写し、また特に正確な境界を示すのに適当な縮尺でなければならない。

12.中程度から大規模な湿地に関しては、標準のA4(210 mm×297 mm)やレターサイズ(8.5インチ×11インチ)の用紙では充分な詳細を示す事がしばしば困難なので、一般的にはそのサイズよりも大きな用紙を利用する方がより適切である。しかしながら、その後のコピー作業等が困難となるので、いずれの地図も、可能なときは必ず、A3(420 mm×297 mm)を越えるべきではない。

13.条約湿地が大規模または形状が複雑なときや、また境界が互いに分かれたいくつかの小湿地から構成されるとき、各部分や小湿地の互いの位置関係がわかる高縮尺の湿地の全体地図と同時に、各々の部分や小湿地の地図の拡大版を提供すべきである。そのような地図は全て上記縮尺に関する手引きに従うこと。

境界の記述(文字によるもの)

14.詳細な地勢図が入手できないとき、地図に付随して、条約湿地の境界の記述をすべきである。この記述には地理上その他の国家、地方の法律上、または国際的な境界を示したうえで、条約湿地の境界と共に、ラムサール条約湿地とラムサール条約湿地の一部又は全体を覆う他の既存保護区の関係を示すものとする。

15.もし湿地境界の正確な場所が全地球測位システム(GPS)を使って確定されている場合、締約国は、条約湿地の地図上に、確定また確認した各々のGPSウェイポイントの緯度・経度を列挙し、それを湿地の紙の地図上に記入した電子ファイルまたは紙媒体を含むことが奨励される。

16.以下に示す状況のいずれか、またはいくつかがあって、決議.21「ラムサール条約湿地情報票におけるラムサール条約の湿地境界の正確な記述」に従い、登録されたラムサール条約湿地の境界が変更された場合:

a)ラムサール条約湿地境界の描写が不正確であり、また実質的な誤りがあるとき;
b)ラムサール条約湿地境界がRISで規定する境界の記述と正確に合致しないとき;
c)科学技術の向上により、ラムサール条約湿地境界を、登録当時よりも高度な解像度でより精密に確定することが可能になったとき;

変更は全て、RISを改訂し湿地の地図で明確に示されなければならない。また改善の理由をRISに記述しなければならない。

境界の記述(デジタル)

17.締約国は、可能な場合、地理情報システム(GIS)に組み込むのに適した電子形式のラムサール条約湿地に関する地理的情報を提出することが奨励される。

18.境界と緩衝地帯を線引きするために、ベクター形式で、最大縮尺のデータを提出しなければならない。

19.その他の情報、例えば湿地タイプや土地利用などは、可能な限り大きな縮尺で、一つ以上のベクターあるいはラスター形式のレイヤーにして提出すること。

20.電子フォーマットに関するメタデータは、電子地図に付随させ、電子化のスケール、投影法、各レイヤーの属性テーブル、ファイル形式、そしてレイヤーを準備するために利用したレイヤー仕様を含まなければならない。

21.ESRI株式会社系列の「Arc-InfoGISやマップ・インフォ株式会社の「MapInfoGISが開発したもとの地域言語ファイル形式(ネイティブ・フォーマット)は、きわめて幅広く利用され、また多くのGISソフトにインポートして利用出来るようになってきた。

22.工業会のリーダーを含むGIS組織の大きなグループであるGIS標準化(オープン化)協会(OGC)は、地理情報技術界において現在互換性のない標準の問題に対処している。OGC発案の下におけるGISの標準化、互換性、そして相互運用可能性の進捗状況は、特記されるべきであり、また、ラムサール条約湿地の電子地図供給のためのGISファイル仕様の更新を準備するときに考慮されるであろう。


ラムサール条約第8回締約国会議の記録 [和訳:『ラムサール条約第8回締約国会議の記録』(環境省 2004)より了解を得て再録,2005年,琵琶湖ラムサール研究会.]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う.]

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