Swan  琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう第8回締約国会議

ラムサール条約

決議.25:2003−2008年戦略計画

[英語] [フランス語] [スペイン語]


「湿地:水、生命及び文化」
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第8回締約国会議
バレンシア,スペイン,2002年11月18-26日


決議.25

ラムサール条約2003−2008年戦略計画

1.決議.14がラムサール条約実施のための基礎として1997−2002年戦略計画を採択したことを想起し

2.1997−2002年戦略計画を締約国などが実施してきたことによって、一段と首尾一貫し、効果的にラムサール条約を実現できるようになったことを認識し、しかし、全世界で一貫して湿地の保全と賢明な利用を行うにあたっては多くの課題が残り、ますます増加していることを意識し

3.湿地の保全と賢明な利用を達成するためには、特に貧困の根絶及び食料と水の安全保障、水管理に対する統合的アプローチ、気候変動と予測される影響、貿易のグローバル化の高まりと貿易障壁の削減、民間セクターの役割の増大、及び開発銀行と国際開発機関の影響力の高まりに関連して、湿地の保全と持続可能な開発に対するより幅広い取り組みが必要とされることを意識し

4.ラムサール条約に基づいて湿地の賢明な利用を達成するには、特に目録作成;評価及びモニタリング;制度的枠組み及び法律;地方、国、国際的な計画策定と政策決定に湿地の賢明な利用を組み込むこと;湿地が持つ人の安寧を支え貧困を軽減する役割、価値及び機能;湿地の再生及び回復;侵略的外来種;農業の影響力と影響;地域住民と先住民による管理;文化の問題;民間セクターの参加;奨励措置;広報・教育・普及啓発;国際的に重要な湿地についての戦略的指定;多国間環境協定間の共同活動の強化;湿地保全活動のための資金確保に触媒的な役割を果たすこと;ラムサール条約のパートナー機関、科学者のネットワーク及び他の利害関係者団体との協力;研修と能力向上;ラムサール条約加盟を全世界に広げることなど、緊急に注目しなければならない課題がなお数多くあることを重ねて意識し

5.戦略計画の実施程度、実施のための財源の大きさ、使用すべきタイムテーブルは各締約国の決定に任されていることを認識し

6.2003−2008年戦略計画が、締約国、ラムサール条約の国際機関パートナー、及び政府間機関やNGOを含むその他のパートナーとの幅広い協議プロセスを経て常設委員会によって作成されたこと同じく意識し

締約国会議は、

7.ラムサール条約実施のための基礎として、この決議に付属する2003−2008年戦略計画を承認し、また、ラムサール事務局に対して、第8回締約国会議(COP8)が採択する決議を組み込んでこの戦略計画の本文を確定するよう、さらに確定したこの戦略計画の本文を締約国及びその実施に関わるその他全ての者が入手可能とするよう指示する

8.すべての締約国、常設委員会、科学技術検討委員会(STRP)、ラムサール条約事務局及びラムサール条約の国際団体パートナーに対して、ラムサール条約2003−2005年作業計画(決議.26)により設定された目標を通じて2003−2008年戦略計画を実施するという新たな課題に取り組むよう強く要請する

9.他の多国間環境協定、NGO、科学アカデミー及び研究機関、専門的科学技術機関、援助国、助成機関及び民間部門に対して、2003−2008年戦略計画の実施に貢献するよう促す


付属書

ラムサール条約の2003−2008年戦略計画

目次

第Ⅰ部
湿地の保全と賢明な利用に関する進捗状況、将来の課題及び総合目標

はじめに 
ラムサール条約の使命と成果 
将来の湿地の保全と賢明な利用に対する課題 
戦略計画の総合目標 
総合目標の根拠 10

第Ⅱ部
2003−2008年戦略計画の実施

実施目標及び行動 16
条約機関及び協力パートナーによる戦略計画の適用 48

参考文献
戦略計画に関連して締約国会議で採択された決議及び勧告 50


第Ⅰ部

湿地の保全と賢明な利用に関する進捗状況、将来の課題及び総合目標

はじめに

2002年11月18-26日にスペインで開催されたラムサール条約第8回締約国会議(COP8)は、ラムサール条約を2003−2008年の期間に適用するためにこの戦略計画を採択した。この戦略計画は1997−2002年の期間を対象とした、最初のラムサール条約戦略計画を踏まえている。

ラムサール条約は、湿地の賢明な利用を「人類の利益のために、生態系の自然的価値の維持と両立する方法で、湿地を持続的に利用すること」と定義し、持続可能な利用を「将来の世代のニーズや希望に応じる湿地の可能性を維持しながら、現在の世代に対して最大の継続的利益をもたらすように、人間が湿地を利用すること」と定義する。

2.この第二次戦略計画は、賢明な利用の原則の全面的適用を達成して湿地資源を守るにあたって、ラムサール条約が湿地の保全と持続可能な利用に対してより幅広い取り組み方を採ったものであることを認める。この戦略計画は、2002年に開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議の結果と水資源管理に関する最近の主な出来事の結果を考慮に入れた。

3.この戦略計画は、ラムサール条約の実行に対して責任を有し、また関わる者すべて、つまり締約国;常設委員会、科学技術検討委員会(STRP)、ラムサール条約事務局及び地中海湿地委員会(MedWet)などのラムサール条約の機関;国際団体パートナー;そして、特に他の多国間環境協定(MEA)など、ラムサール条約が共に働く他の各機関や組織に対して、新しい課題を提示する。

4.この戦略計画を十全に実行するためには、他の多国間環境協定と効果的に連携すること、NGO、市民社会組織、地域社会を拠点とする組織、各種財団とその他の保全団体、国内の科学アカデミー及び研究委員会、研究教育機関及び国内の専門的科学技術団体の参加を増やすこと、及び民間セクターの参加を顕著に増やすことが必要であろう。

ラムサール条約の使命と成果

5.ラムサール条約の使命は、「全世界における持続可能な開発の達成に寄与するため、地方、地域及び国内行動と国際協力を通じて、すべての湿地を保全し、賢明に利用することである」

「湿地とは,天然のものであるか人工のものであるか,永続的なものであるか一時的なものであるかを問わず,さらには水が滞っているか流れているか,淡水であるか汽水であるか鹹水であるかを問わず,沼沢地,湿原,泥炭地又は水域をいい,低潮時における水深が6メートルを超えない海域を含む。」(ラムサール条約第1条1項)

6.ラムサール条約は、健やかで豊かな内水面生態系と沿岸生態系の維持についての湿地の本質的な重要性を認識し、「湿地」を非常に広義に定義する 。

7.ラムサール条約(1971年、イランのラムサールにて採択)は、地球規模の多国間環境協定の中で最も古い。この条約は、湿地及び湿地が渡り性の種とりわけ水鳥に提供する生息地の、広範囲な乾燥化及び破壊と闘うという緊急の必要性から生まれた。

8.ラムサール条約は、その初めから、領域と水資源についての総合的な計画策定及び管理の一環としての湿地の持続的な利用(条約の「賢明な利用」の概念と同義とされる)への取り組みとして、徐々にその及ぶ範囲を拡大し取り組みを発展させてきた。この条約は、あらゆる所で持続可能な開発を通じて人々の健康と福祉に寄与するものとして、湿地の保全と持続可能な利用を統合することが欠かせないことを強調している。

9.1997−2002年戦略計画の実施期間中に達成したラムサール条約の重要な成果は、以下の通り。

a)ラムサール条約の締約国が 134カ国となった(2002年11月26日現在);

b)人間の日常生活における湿地の重要な機能や便益に対する認識や理解を深めるのに大きく貢献してきた;

c)一層包括的な政策ガイドラインや技術的ガイドラインを作成し、締約国がラムサール条約を実施する支援をした;

d)55を超える締約国が国家湿地政策またはそれと同様な手段を採択し、確実に部門横断的アプローチが執れるようにするため、82の締約国が国内ラムサール委員会または国内湿地委員会を設置した;

e)COP8閉会までに、締約国は、1億590万ヘクタールにおよぶ 1,230の湿地を国際的に重要な湿地のリスト(ラムサール条約湿地リスト)に登録をして、これらの湿地の35%について管理計画を定めた;

f)ラムサール条約が率先して働きかけを行い、湿地の賢明な利用のために経験や成果を共有できるよう、リオ92プロセスから発生した条約や他の条約及び機関との協働を築いた;

g)開発途上国及び市場経済移行国における湿地プロジェクトにより多くの財源と技術援助を生じさせるためにラムサール条約を通じて支援し、また湿地保全及び賢明な利用のためのラムサール小規模助成基金を1990年から運営してきた。この基金の規模はまだ小さいが、既に86カ国で 156のプロジェクトに資金を提供した;

h)ラムサール条約事務局は、過去8年間、米国政府からの資金提供により未来の湿地イニシアティブを管理し、ラテンアメリカ及びカリブ海地域における研修及び教育プロジェクトを支援した;

i)地中海湿地委員会の指導の下、ラムサール条約を地域において明確に表現するものとして地中海湿地フォーラムを設立し、地中海周辺地域のすべての国とパレスチナ当局、関係国際機関及びNGOがこれに参加した。

将来の湿地の保全と賢明な利用に対する課題

10.湿地は、どんな形態の湿地であっても、人間社会と人間の安寧に独自の便益を提供しているということについて、理解が日増しに広がっている。湿地は、世界の水文学的循環において重要な役割を果たしており、生物多様性を存続させるための水、人間の消費する水、農業生産のための水そしてリクリエーションのための水を供給し、食物(特に魚、米及びその他の自然生産物)及び繊維(例:木、泥炭及びアシ)を供給し、工業、運輸、食料生産、観光を中心とした経済発展の中核であり、湿地固有の動植物の種が豊かな場所である。

11.しかしながら、特に湿地と水資源といった自然資源の破壊や、間違った管理によって引き起こされた社会的、経済的そして環境的な困難により、世界の全ての地域で人々は苦しんでいる。その原因は複合的で、現地の活動や国の政策から地球的問題にまで及ぶ。

12.湿地の保全と賢明な利用に影響を及ぼす地球的問題の主なものは、次の通り。

a)水の使用者であると同時に供給者である湿地の役割との関連で水を農業、工業及び人間の消費に配分すべきという要求の増大、及び湿地の生態学的機能を維持するための水の配分及び管理の必要性 ;

b)気候変動とその予測される影響。影響とはつまり、干ばつ、嵐及び洪水のパターンの変動及び激化;海水温度及び海面の上昇;永久凍土及び氷河の融氷;生態系の分布や質の変化及びそのことが種の存続におよぼす意味 ;

c)農業、漁業及び他の自然資源生産物に影響を及ぼす、経済発展のグローバル化の増大 ;

d)サービスの民営化(水の供給を含む)の増大、意思決定責任の委譲及び地域社会の権限強化による、各国政府の役割の変化 ;

e)湿地の生態学的特徴やその価値及び機能の継続的な喪失及び損傷につながる、土地利用圧力の増大 ;

f)人口圧力と経済の課題の増大によって、生き残りの瀬戸際に立たされている地域社会が開発途上地域にあること ;

g)開発途上地域における開発銀行及び国際開発機関の影響力の増大、また湿地に影響を及ぼす大きな問題に対しこれらの機関の十分な取り組みを保証する必要性 ;

h)リオ92プロセスを通してアジェンダ21が設定されてから10年経て、生物多様性の問題及び持続可能な開発について今後も政治的な支援と一般市民の関心が続くことを確実にする必要性。

13.持続可能な開発に関する世界首脳会議(2002年・ヨハネスブルグ)に基づく優先的行動は、その多くが現在のラムサール条約の目標と一致する。適切な戦略計画作成があれば、ラムサール条約締約国は「持続可能な開発に関する世界首脳会議」に基づく活動に参加することが、自国のプログラムの効果を最大化する大きな機会となる。国連事務総長は、地球の将来のため「持続可能な開発に関する世界首脳会議」の5つの主要分野を特定した。その分野は、水及び衛生、エネルギー、健康、農業生産性、そして生物多様性及び生態系管理である。水及び衛生と、生物多様性及び生態系管理は、ラムラール条約にとって直接的に重要である。

14.「持続可能な開発に関する世界首脳会議」の具体的目標のうち、ラムサール条約が貢献できるものは、以下の通り。

)2015年までに、飲料水の安全性の確保されない人々の割合を半減する;
)2005年までに、総合的な水資源管理・水効率計画を開発する;
)河川流域、分水界及び地下水の総合的管理に関する国別・地域ごとの戦略、計画及びプログラムを策定し実行する;
)水資源の効率的利用や、水資源の利用が競い合う状況での分配の促進を向上させ、生態系の保護または再生を行う一方で、人間の基本的要求を優先する;
)水循環についての科学的了解事項をモニタリング及び評価するための活動を支援する;
)水資源管理を向上させる;
)淡水環境、沿岸環境及び海洋環境の長期的持続可能性を推し進めるための、水資源の持続的な利用、保護及び管理について理解を向上させる;
)2015年までに、枯渇した漁業資源を可能な限り維持あるいは回復させる;
)2010年までに、生物多様性の損失の速度を現在よりも大幅に低下させる;
)「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)」の実施で、具体的に湿地に関係するアフリカの取り組みを特に支援する;
ⅹⅰ)「小島嶼開発途上国の持続可能な開発のためのバルバドス行動計画」の実施を引き続き支援する;
ⅹⅱ)持続可能な利用の目標を達成するために、「タイプ2の成果」であるパートナーシップ(複数の関係者によるパートナーシップ)を形成する。

15.ラムサール条約締約国にとって、このような世界的圧力及び変動という状況の中で、国内の湿地及び水資源の保全及び持続可能な利用を確保することは引き続きの課題である。現場では具体的な成果があがっており、湿地の保全と賢明な利用が人間の安寧にとって重要であることについての認識が高まっているにもかかわらず、課題は色濃く残っている。

16.この課題に対応するため、ラムサール条約締約国は、行動の3本「柱」を通じて湿地の保全と賢明な利用という責務を果たすよう努める。すなわち、

a)持続可能な湿地、水の配分及び河川流域の管理を通して(貧困の軽減及び水と食料の安全保障を含む)人間の安寧に寄与する、以下のような幅広い行動及びプロセスを実行することにより、自国の湿地の賢明な利用に向けて努力する。すなわち、国家湿地政策及び計画の策定;湿地に影響を及ぼす法律及び 金融手段の枠組みの見直し及び調和;目録作成及び評価の実施;持続可能な開発のプロセスに湿地を組み入れること;湿地管理への市民参加確保、及び地域住民と先住民による文化的価値の維持の確保;広報・教育・普及啓発の推進;民間セクターの参加の増大;ラムサール条約の実施と他の多国間環境協定との調和;

b)地球規模の生態系ネットワークを作ることへの寄与として、国際的に重要な湿地のリスト(ラムサール条約湿地リスト)を完全なものにするため、また条約湿地の効果的なモニタリング及び管理を確実にするために、互いに関連のある広範囲な湿地をひとまとまりとして特定し、指定し、また管理することの推進に特に専心する;

c)湿地の保全と賢明な利用を各国が達成するにあたって、下記を通じて国際的に協力する。すなわち、国境をまたがる水資源及び湿地並びに国をまたがって湿地に生息する種の管理、他の条約及び国際機関との協力、情報や専門知識の共有、及び途上国と市場経済移行国への財源及び関連技術の流れの促進。

17.この戦略計画の総合目標(総合目標1から3)は以上の「柱」のそれぞれに対応する。さらに2つの総合目標(総合目標4と5)で、条約のこの3つの柱に関連した目標を効果的に実施する手段を提示する。総合目標は、ボックス1の通り。

18.この戦略計画の第Ⅱ部「実施目標と行動」において総合目標の実施について詳述する。

ボックス1−戦略計画の総合目標

本戦略計画の総合目標、およびそれに関連するラムサール条約の条文は、以下の通り。

総合目標1.湿地の賢明な利用:すべての締約国が、自国の領土内のすべての湿地の賢明な利用を図るために、必要かつ適切な手段と措置を策定し、採用し、使用するよう促し、援助する。

条約第3.1条、4.3条、4.4条および4.5条の実行

総合目標2.国際的に重要な湿地:すべての締約国が、持続可能な開発のための条約湿地の適切なモニタリングおよび管理など、「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」を適切に実施するよう促し、支援する。

条約第2.1条、第2.2条、第2.5条、第2.6条、第3.1条、第3.2条および第4.2条の実行

総合目標3.国際協力:「ラムサール条約の下での国際協力のためのガイドライン」の積極的適用を通して国際協力を促進し、また特に湿地の保全と賢明な利用のために、追加の財政援助および技術援助を集める。

条約第5条の実行

総合目標4.実施能力:条約がその使命を達成するために必要な実施機構、資金および能力を確保する。

条約第6条、第7条および第8条の実行

総合目標5.加盟:条約の加盟をすべての国に広める。

条約第2.4条および第9条の実行

- - - - - - - - - 0 - - - - - - - - -

¹ ラムサール条約第7回締約国会議決議.11.
² ラムサール条約第7回締約国会議決議.19.

総合目標の根拠

19.総合目標1:湿地の賢明な利用

すべての締約国が、自国の領土内のすべての湿地の賢明な利用を図るために、必要かつ適切な手段と措置を策定し、採用し、使用するよう促し、援助する。

20.ラムサール条約第3.1条に基づき、締約国は「その領域内の湿地をできる限り賢明に利用することを促進するため、計画を作成し、実施する」ことに同意している。この「賢明な利用」の概念を通じて、人間による湿地の持続的な利用は、ラムサール条約の原則及び一般的な湿地保全と、完全に両立するものであることを条約は継続して強調してきた。ラムサール条約の賢明な利用の概念は、国際的に重要な湿地として登録された湿地のみならず、締約国の領域内のすべての湿地及び水資源に適用される。この概念の適用は、生物多様性と人間の安寧の維持を支える重要な役割を、湿地が十分に果たし続けられることを確実にするうえで決定的重要性をもつ。

21.締約国会議は、湿地に影響する広範囲な事業計画の策定において賢明な利用の概念を適用することを決定し、そのために「賢明な利用の概念実施のためのガイドライン」(勧告4.10)そして「賢明な利用の概念の実施に関する追加の手引き」(決議5.6)を採択した。湿地の「賢明な利用」は、とりわけ、貧困や社会的疎外との戦いが最優先事項であり続けている途上国に関係し、この条約の極めて重要な一つの概念及び運用方法となっている。ラムサール条約締約国会議が採択した、賢明な利用の概念適用の手引きが、ラムサールハンドブック第1巻−第6巻として出版されている。

22.次の三年間の条約実施における最大の強調点は、以下の関わりにおける湿地の役割である。すなわち、自国領土の空間計画策定、水資源、河川流域及び沿岸域の管理、農業管理、そして経済活動その他湿地に影響を及ぼす決定の持続可能な管理との関わりである。締約国が国家湿地政策(あるいは湿地の保全や賢明な利用を含むその他の政策)を策定しようとする場合、その政策は他の国家環境開発計画策定手段と相互参照すべきである。国家湿地政策は、湿地の賢明な利用をより効果的に推進するために、既存の環境開発計画策定手段を統合しまた適応させることを目指すべきである。

23.戦略計画の総合目標1はまた、賢明な利用と、普及啓発及び教育・市民参加・法制度・機構・研修・政策や計画の策定及び一般的な政策決定との間の相互作用を取り扱う。

24.賢明な利用の効果的な実行のために不可欠なのは、とりわけ湿地に直接的に依存している人々にとっての、湿地が体現する幅広い社会的利益と文化的意義を含む、湿地の価値と機能を十分に認識することである。この認識に立ち、締約国会議は、「湿地管理への地域社会及び先住民の参加を確立し強化するためのガイドライン」(決議.8)を採択し、そして、「湿地を効果的に管理するために、湿地の文化的価値を考慮するための指導原則」(決議.19付属書)の採択を通してこの問題をさらに強調した。

25.政治的法律的な活動を開始し、必要な財源を配分し、また湿地の法制度と管理の実施を確実に成功させるためには、一般の人々からの支持が欠かせない。一方、一般の人々からの支持は、湿地が個人や社会にもたらす利益など、問題とその解決についての情報提供をし、理解を得る以外、獲得できない。

26.勧告5.8と5.10及び決議.8、.9、.31をとおして締約国の認識が示されたとおり、この条約の使命を達成するためには、湿地の価値と機能、ラムサール条約の内容や活動が周知されて評価され、また支持を得ることが欠かせない

27.条約は、この総合目標1を達成するために策定された実施目標と行動を通じて、以下の点にも焦点をあてる。

a)湿地目録作成、評価及びモニタリングの実施;

b)地球の気候変動及び海面上昇の影響に応じた、適応性のある湿地管理;

c)一段と持続可能性の高い農法の開発;

d)湿地の破壊を許した後で再生をしようとするよりも、既存の湿地を維持することの方が生態学的、経済的、文化的に適切だという認識を前提とした上で、多くの劣化し、または喪失した湿地、及びその価値と機能の再生及び機能の回復;

e)湿地の将来に対して侵略的外来種がもたらす主要な脅威についての取り組み;

f)湿地の保全と賢明な利用を促すことになる既存の奨励策の推進及び改善、そして持続可能な利用に反する奨励策を最善の努力で除去すること;

g)湿地の保全と賢明な利用への民間セクターの参加。

28.次の三年間は、「泥炭地に関する地球的行動のためのガイドライン」(決議.17)の実施を通じて泥炭地の保全と賢明な利用に特別に重点を置く。これは、世界中で泥炭地という湿地タイプに厳しい圧力がかかっていること、泥炭地が気候変動の影響緩和に貢献していること、そして文化的遺産の宝庫であるとの認識に立つものであり、さらにラムサール条約に基いた生態系を考慮した保全アプローチを実証する意味もある。

29.総合目標2:国際的に重要な湿地

すべての締約国が、持続可能な開発に寄与する条約湿地の適切なモニタリング及び管理など、「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」を適切に実施するよう促し、援助する。

30.国際的に重要な湿地のリスト(ラムサール条約湿地リスト)は、ラムサール条約の根幹である。したがって、条約の実施に責任または関心をもつすべての者がこのリストには特別の注意を払うべきである。

31.湿地をラムサール条約湿地として登録することは、湿地を保全するのに効果的な手段であることが証明されている。特に、その湿地が他には特定の保護区として正式に指定されていなかった場合に効果がある。新しく締約国が増えたことと、以前からの締約国が条約湿地を追加指定したことによって、段落9e)に示したように条約湿地の数も年々着実に増えてきた。

32.これは喜ぶべき進展ではあるが、これらのうち 500カ所以上(全体の40%)の条約湿地が、わずか24の締約国にある。条約湿地の登録を促進するためには、多くの国々の今まで以上の努力が必要である。

33.COP7で、「国際的に重要な湿地リストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」(決議.11)を採択したことは、締約国にとって重要な進展であった。このガイドラインの目的は、「ラムサール条約が条約湿地を通じて達成しようとしている長期目標または成果に関して、より明確な展望、つまりビジョンを示すことである。」この総合目標2のねらいは、COP8の決議.10、11、13、21、22及び33を通して補完される戦略的枠組を完全に実施すること、そして条約湿地リストに関する下記のビジョンを達成することである。

「生態学的及び水文学的機能を介して地球規模での生物多様性の保全と人間生活の維持に重要な湿地に関して、国際的ネットワークを構築し、かつそれを維持すること。」

34.これまであまり登録されていない種類の湿地や、複数の国にまたがる湿地の登録に対しても、優先的に注意を払う必要がある。

35.条約湿地を選定する基準は、締約国会議が採択し、時の経過に伴い見直しされてきており、今後も状況の変化に伴い定期的な見直しが続けられる。そしてラムサール条約はこの問題についてさらなるガイドラインを採択することができる。

36.締約国は条約湿地の保全を図ることを了承しているので、条約湿地の指定は単なる出発点に過ぎない。締約国会議はこれまで、条約湿地の生態学的特徴を定義し維持することが湿地保全の鍵であるとして、この点を強調することに力点をおいてきた。これは人間の利用を拒むものではなく、湿地の機能や価値、または特質を本質的に損なうような変化を避けることがその意図である。これは、少なくとも指定時の生態学的特徴を維持することがねらいである。指定の前にすでに失われてしまった機能や価値、または特質を再生するためには、多くの場合追加的な方策が必要となる。

37.1996年のCOP7で、「生態学的特徴」そして「生態学的特徴の変化」の実用的定義と、「条約湿地の生態学的特徴を記載し維持するためのガイドライン」が採択され、1999年のCOP7でさらに精緻なものに修正された。また、条約湿地の問題について締約国を支援するため、以下の機構を締約国会議は採択してきた。

a)モントルーレコード(勧告4.8、決議5.4、.1、.12及び.8):緊急に行動を必要とするラムサール条約湿地を特定する;

b)サンホセレコード:湿地管理の推進に貢献する(決議.15);

c)ラムサール諮問調査団(勧告4.7、決議.14及び.12):専門家の助言を条約事務局が締約国に提供できようにする。

38.次の三年間、各締約国は「その領域内にあり、かつ、リストに掲げられている湿地の生態学的特徴が技術の発達、汚染その他の人為的干渉の結果、既に変化し、または変化しつつある、変化するおそれがある場合には、これらの変化に関する情報をできる限り早期に入手することができるような措置をとり」、遅滞なくこれをラムサール条約事務局に通報するというラムサール条約第3条2項の規定に特別な注意を払う。

39.条約湿地の生態学的特徴の維持を達成するに当たっては、特に、「ラムサール条約湿地及びその他の湿地に係る管理計画策定のための新ガイドライン」(決議.14)を適用し、これに従って湿地の生態学的特徴の変化について特定、モニタリング、対処することを通して、より体系的に管理計画の策定を実施することを強調しなければならない。

40.条約湿地データベースは、その機能性が向上することで、次の事項に関して締約国を支援し、また締約国が報告するための主要な手段となるはずである。つまり、重要湿地の指定及び現状報告;条約湿地の生態学的特徴を維持するための管理とモニタリング;生態学的特徴の変化やその兆候についてのラムサール条約第3条2項に基づく報告及び対処についてである。

41.総合目標3:国際協力

「ラムサール条約の下での国際協力のためのガイドライン」の積極的適用を通して国際協力を促進し、また特に湿地の保全と賢明な利用のために、追加の財政援助及び技術援助を集める。

42.ラムサール条約第5条に基づき、締約国は、「特に二以上の締約国の領土に湿地がまたがる場合又は二以上の締約国に水系が及ぶ場合には、この条約に基づく義務の履行につき、」相互に協議することを約束した。同条はさらに、湿地及びその動植物の保全に関する現在及び将来の施策及び規則について締約国が調整することにも触れている。

43.COP7で、締約国は「ラムサール条約の下での国際協力のためのガイドライン」(決議.19)を採択した。戦略計画のこの総合目標3(及び実施目標12−15)は、主としてそのガイドラインに基づく。

44.この総合目標を達成するために策定された実施目標と行動を通して、ラムサール条約は、以下に焦点を当てる。

a)特に次の分野で国際協力活動を増強する。複数国にまたがる淡水湿地、沿岸性湿地及び河川流域、並びに複数国にまたがる水資源、及び複数国にまたがる湿地に依存する渡り性の種;

b)関連する地球規模及び地域的な条約及び機関との連携活動の増進に取り組む;

c)湿地の持続可能な利用のための地域的な取組のさらなる進展を促す;

d)特に研修機会や、湿地姉妹提携、湿地ネットワークの増強、及びインターネット上のデータベースを通した経験と情報の共有、また専門知識と情報の共有を促す;

e)該当する締約国への国際的財源の流れの増加を促進する;

f)湿地に依存する動植物種が国内及び国際的に取引されているところでは、持続可能な農業及び持続可能な収穫や狩猟の原則の採用を促進する;

g)湿地に関連して投資が行われる場合、保全と賢明な利用の原則に沿ったものであることを確実に保証する努力を行う。

45.この総合目標3を実行する行動を通して、締約国は、総合目標1と2に従って、すべての湿地の賢明な利用の原則のための能力を開発し、また原則の一貫した適用を促進すること、そして国際的に重要な湿地の指定と管理についての相互支援の仕組みを獲得する。

46.またこの総合目標3に基づく行動を通して、多国間環境協定間の作業枠組みと各国の生物多様性現状報告の一層の調和がはかられ、持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)の成果が組み込まれる。

47.総合目標4:実施能力

条約がその使命を達成するために必要な実施機構、資金及び能力を確保する。

48.この総合目標4は、締約国会議及び下記のラムサール条約の補助機関及び機構の運営に関わる。すなわち、常設委員会、STRP、地中海湿地委員会、ラムサール条約事務局と事務局の「地中海湿地フォーラム」調整ユニット、小規模助成基金とその基本資産基金、ラムサール条約の広報教育普及啓発プログラム任意基金、モントルーレコード、サンホセレコード、ラムサール諮問調査団、そして国内、地域及び国際的な機関とのパートナーシップである。総合目標4はさらに、ラムサール条約が効果的に機能するために必要となる資源及び能力にも関わる。

49.この総合目標を達成するために策定された実施目標と行動のねらいは、下記の通り。

a)締約国会議、補助機関及びこの条約のその他の機構によって、この戦略計画の実施が確実に効率的に支援されるようにする;

b)締約国がこの条約実施のために効果的、効率的な制度上の仕組みを確実に設けるようにする;

c)締約国の条約の機構及びプログラムに対する期待の高まりに十分に応えられる財源を提供する;

d)この条約の国際団体パートナー、その参加メンバーや専門家のネットワーク及びその他の協力組織との協働における相互利益を最大化する;

e)締約国に条約実施の能力を備えるため、研修及び能力向上の効果的な仕組みを提供する。

50.「賢明な利用ガイドライン」では、湿地の保全と賢明な利用のために各締約国の中に適切な構造をもった機構が必要であることを強調している。どの地域でもどのレベルにおいても重要ではあるが、特に途上国と市場経済移行国において、本条約の使命と目的を達成する責任を持つ機関の対応能力を高めることが緊急に要請されている。

51.既存の機関を強化するため、大規模な研修プログラム及び経験の交換が必要とされている。地域、国、そして特定の湿地における違いを考慮に入れて、どのような研修が必要で、どのような人々を対象とするかを判断するという戦略的な取り組みが必要である。さらに、既存の研修の機会をさらに発展させ、支援することが必要であるし、また研修が行われていない地域や分野においては、新しく研修の機会を創り出さなければならない。この取り組みにおいては、環境にやさしい技術の移転や情報交換等、レベルの高い国際協力が重要な要素となる。

52.総合目標5:加盟

条約の加入をすべての国に広める。

53.ラムサール条約がその使命を達成するためには、すべての国々が締約国にならなければならない。ラムサール条約は着実な成長を遂げ、現在は世界のすべての地域に締約国がある。しかし一方で、アフリカ、中近東及び小島嶼開発途上国の各地には加盟についての格差が顕著に残っている。

54.非締約国に対し、活用できるツールと資源の恩恵を受けられるよう条約への参加を促すため、また優先事項と必要性についての地球レベルでの包括的な対話に基づいて条約の今後の活動が確実にするために、決定的に重要な取り組みは今後も継続する。


第Ⅱ部

2003−2008年戦略計画の実施

実施目標と行動

55.このセクションでは21の活動分野における実施目標、及びそれらを達成するための具体的行動を列挙する。これらの実施目標と具体的行動を合わせることにより第Ⅰ部で述べた戦略計画の総合目標が達成される。

56.実施目標は次の活動分野を網羅する。

1.目録と評価
2.影響評価と価値評価を含む政策と立法
3.湿地の賢明な利用を持続可能な開発に組み入れること
4.再生と回復
5.侵入外来種
6.地域住民、先住民及び文化的価値
7.民間部門の参画
8.奨励措置
9.広報・教育・普及啓発
10.条約湿地の指定
11.条約湿地の管理計画策定とモニタリング
12.国境をまたがる水資源、湿地及び湿地生物種の管理
13.他機関との協働
14.専門知識や情報の共有
15.湿地の保全と賢明な利用のための財源確保
16.条約の財源確保
17.条約の制度的メカニズム
18.締約国の制度的能力
19.国際団体パートナー、その他
20.研修
21.条約の締約国

57.実施目標の下で実行される各行動はこの戦略計画の総合目標の1つ以上の項目の達成に貢献するものである。各行動により達成される総合目標を各行動の記述の最後に太字で(訳文では右寄せにして[編注:環境省ウェブ所載のPDFファイルは右寄せになっているが,このウェブページでは右寄せにしない])記す。(例:総合目標1, 3

58.2003−2008年戦略計画に対しこの実施セクションで列挙した行動は、条約の施行に責任を有する下記の組織に向けられたものである。

CP条約の締約国(Contracting Parties)。特に各国のラムサール条約担当政府機関ならびに各締約国にある国内湿地委員会または国内ラムサール委員会(あるいはそれと同等の機関)
CEPA各締約国の条約広報教育普及啓発担当窓口
SCラムサール条約の常設委員会(Standing Committee
STRP科学技術検討委員会(The Scientific and Technical Review Panel)ならびに各国担当窓口間のネットワーク
条約事務局ラムサール条約事務局
MedWet地中海湿地フォーラム(Mediterranean Wetlands Committee)ならびに/または地中海湿地イニシアティブの調整グループ やこの地域間ネットワークに参加する機関

59.この計画において下記の組織との協働で実施する行動も明記する。

IOP国際団体パートナー(International Organization Partners):現在、バードライフ・インターナショナル、国際自然保護連合(IUCN)、国際湿地保全連合、世界自然保護基金(WWF)
MEA多国間環境協定(Multilateral Environmental Agreements):特に生物多様性条約(CBD)、砂漠化対処条約(CCD)、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、ボン条約(CMS)、世界遺産条約ならびにラムサール条約と協力の覚書を交わしている地域条約
OCその他の協力機関(Other Collaborators):特にラムサール条約と協力の覚書を交わしている機関を含む。UNESCOの人と生物圏プログラム(MAB)、ユーロサイト(欧州の自然遺産管理団体のネットワーク)、ネイチャーコンサーバンシー(TNC)、湿地科学者協会(SWS)、地球科学情報ネットワーク国際センター(CIESIN)、コロンビア大学、米国CIESIN、国際影響評価学会(IAIA)、ダックス・アンリミテッド(カナダ、メキシコ、米国)、南太平洋地域環境プログラム(SPREP)、内陸水管理排水処理研究所(RIZA、オランダ)、ニジェール川流域機構、チャド湖流域委員会など

60.実施に対する責任機関及びそれを支援する機関の名称を、実施計画の各行動の括弧内に記す。例:[CPSTRP、条約事務局]

実施目標1.目録と評価

実施目標1.1:
条約の実施、特に賢明な利用原則の適用について情報を提供し、また支援するため、湿地資源の規模を特に地球規模、国別(または適切な場合、都道府県別)に詳述する。

行動

1.1.1 国別(または適切な場合、都道府県別)の科学的湿地目録を作成、更新し、広報するため、「ラムサール条約湿地目録の枠組み」(決議.6)に沿った標準的湿地目録手法の利用を促進、奨励する。総合目標1, 2CPIOP、条約事務局、MedWet
2003−2005年地球規模の実施目標:目録が未完成の締約国は、第9回締約国会議(COP9)までにラムサール条約湿地目録の枠組みに沿って行動を開始し、包括的な国別湿地目録をできる限り完成に近づけ、普及させておく。

1.1.2 国別湿地目録情報に−a)条約湿地候補;b)締約国領土内に位置し、国、都道府県、または地域レベルで重要な湿地;c)再生や回復を必要とする湿地−を特定する情報を盛り込み、優先事項のリストを添える。その際、カルストや洞窟、潮間帯湿地、珊瑚礁、泥炭地、地球規模で絶滅のおそれのある種を支えている湿地、その他これまであまり登録されていない特徴を持つ湿地タイプを特に優先する。総合目標1, 2CPIOP](行動4.1.3を参照)
2003−2005年地球規模の実施目標:COP8以降に着手する国別湿地目録すべてに、湿地の重要性、条約湿地候補地、再生すべき湿地、これまであまり登録されていない湿地タイプの位置、そして特に貧困の根絶戦略との関連で湿地が持つ価値と機能に関する情報を盛り込む。

1.1.3 メタデータを含む湿地目録データと情報を国内で保管、収納及び維持するための手配が整っていることを確認するともに、これらの資料をできる限り包括的かつ、あらゆる利害関係者にとって利用しやすくするために必要な措置を導入する。総合目標1CP
2003−2005年地球規模の実施目標:すべての湿地目録に完全なるデータ管理、保管任務及びメタデータ記録を備えておく。

1.1.4 湿地目録のメタデータベースをウェブ上で入手できるようにし、国別(都道府県別を含む)湿地目録のすべてにメタデータ記録を盛り込むよう奨励する。総合目標1STRP、国際湿地保全連合、CP
2003−2005年地球規模の実施目標:COP9までにすべての国別湿地目録に関する情報を掲載したメタデータベースをウェブ上に構築する。

1.1.5 湿地資源の分布と規模を更新し、COP7(決議.20)以降の国別(都道府県別を含む)湿地目録の動きに関する情報を盛り込んで、「地球全体の湿地資源と目録の対象となる優先事項に関する評価(GRoWI)」の更新に着手する。またこれについてCOP9に報告する。総合目標1STRP、国際湿地保全連合、条約事務局]
2003−2005年地球規模の実施目標:「地球全体の湿地資源と目録の対象となる優先事項に関する評価(GRoWI)」の内容を更新してCOP9に報告書を提出する。

1.1.6 意思決定者、湿地管理者や利用者が国の湿地政策や国や地域の湿地計画を策定、実施する際、湿地目録からの関連情報を利用するよう奨励する。総合目標1CP
2003−2005年地球規模の実施目標:湿地目録を有するすべての締約国は、COP9までに利害関係者全員が目録を利用できるようにしておく。

1.1.7 小規模助成基金のための目録作成プロジェクト策定に高い優先度を与える。総合目標1CPSC、条約事務局、MedWet

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8決議.6を参照。

実施目標1.2:
条約の実施、特に賢明な利用原則の適用について情報を提供し、また支援するため、地球規模かつ国別(または適切な場合、都道府県別)の湿地資源評価及びモニタリングを行う。

行動

1.2.1 ミレニアム生態系評価(MA)プロジェクト(http://www.millenniumassessment.org)の理事会や各種作業部会に参加することで、その業務に積極的に貢献し、MAの方法論、成果及び調査結果を分析(結果はCOP9に報告)する。また必要な行動があればこれを見直すことにより、湿地資源とその状況に関する地球規模の評価を更新し、包括的なものにする。総合目標1CP、条約事務局、MedWetSTRPIOP](行動1.1.5を参照)

1.2.2 締約国が提出した国別(または適切な場合、都道府県別)湿地資源の変化の評価要約を保管する施設を設置し、それを基盤に定期的な分析を行うとともに湿地の現況報告体制を改善する。総合目標1STRP、条約事務局、IOPCPOC

1.2.3 COP9での検討に向け、湿地の生物多様性と機能を迅速評価し、また生態学的特徴の変化をモニタリングするため、内陸、沿岸及び海洋生態系における指標などの使用も含めたガイドラインを策定する。総合目標1, 2STRP、条約事務局、生物多様性条約](行動11.2.1を参照)

1.2.4 気候変動の影響、海面上昇、外来種の侵入や農業などの生態学的特徴の変化に対する湿地の脆弱性を評価するための方法論を開発する。この目的のため、「リスク評価の枠組み」(決議.10)と影響評価の手引き(決議.16及び.9)を適用する。総合目標1, 2[条約事務局、STRPMedWetIOPMEA
2003−2005年地球規模の実施目標:湿地生態系の脆弱性評価法をCOP9に提出する。

1.2.5 気候変動の影響、海面上昇などの生態学的特徴の変化に対する湿地の脆弱性を評価する。総合目標1, 2CPMedWetIOP
2003−2005年地球規模の実施目標:常設委員会と条約事務局は、脆弱性評価を実施し、結果をCOP9に報告する意思のある締約国を少なくとも20か国特定する。

1.2.6 ミレニアム生態系評価(MA)や他の評価プログラムからの情報を活用するなどして、条約湿地や他の湿地が水産業の存続にもたらす便益を評価する。また「出来れば2015年までに枯渇する水産資源を持続可能な最大限の漁獲をもたらすレベルに維持、もしくは回復させる」というWSSD(持続可能な開発に関する世界首脳会議)の目標に貢献できる持続可能な管理の実践を推奨する。総合目標1, 2, 3CPSTRPIOPMEAOC

1.2.7 湿地の水質と水量を、現状について、そして必要とされるものについて評価することにより、「湿地の生態学的機能を維持するための水の配分と管理のためのガイドライン」(決議.1)の実施をWSSDの実施計画への貢献として支援する。総合目標1, 2CPMedWetIOP
2003−2005年地球規模の実施目標:少なくとも50の締約国が水質・水量評価に着手すること。

この実施目標に関する追加的行動についてはCOP8の決議.2, 4, 7, 32及び35を参照。

実施目標2.影響評価と価値評価を含む政策と立法

実施目標2.1:
湿地の賢明な利用を確実なものにするため各国が講じうる最適な政策手段を明記する。

行動

2.1.1 締約国は、未だ着手していなければ、この目的のためCOP7で採択されたガイドライン(ラムサール賢明な利用ハンドブック第2巻)に従って、国家湿地政策を策定、実施し、明確、包括的、かつ実行可能な政策目標を掲げる。総合目標1CP
2003−2005年地球規模の実施目標:未着手の締約国すべてが、WSSDの目標と行動を適切に盛り込んだ国家政策あるいは同等の手段に着手する。

2.1.2 湿地政策を確実に、他の戦略的計画策定過程や文書に完全に組み込み、また整合性を図るようにする。特に生物多様性、砂漠化、気候変動、農業、絶滅危惧種の取引、水資源管理、統合的沿岸域管理、またWSSDで求められた持続可能な開発のための国家戦略を含む環境計画策定全般との統合、調和を図る。これら他の文書が異なる生態系に関する章・節を含む場合、その内一つは湿地を主題としたものとする。総合目標1CPMEA
2003−2005年地球規模の実施目標:すべての締約国は国家湿地政策、あるいは同等の手段を、貧困根絶のための戦略、水資源管理、水の効率化計画、WSSDの目標に沿った持続可能な開発のための国家戦略など、他の戦略的計画策定過程と十分に組み入れられるようにする。

2.1.3 締約国を支援するための優良な実践の手引き作成に寄与するため、政策や立法の統合・調和における最良の実践例が条約事務局ならびにSTRPに確実に渡るようにする。総合目標1CP、条約事務局、STRP

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.34及び39を参照。

実施目標2.2:
条約−そして特に賢明な利用原則−が完全に適用されるよう、すべての締約国は、影響評価や価値評価を含む国家レベル、あるいは超国家レベルの政策、法律、制度や実践を策定し、見直し、必要に応じて修正して、実施する。

行動

2.2.1 法律や制度の見直しを行うにあたり、「湿地の保全と懸命な利用を推進するための法・制度の見直し」のガイドライン(ラムサール賢明な利用ハンドブック第3巻)を適用する。また、湿地の無分別な利用を防止するため、必要に応じて法律や制度的措置を修正、または変更する。総合目標1CP
2003−2005年地球規模の実施目標:常設委員会ならびに条約事務局は、国内法や制度の包括的見直しを開始し、できれば完了できる締約国をCOP9までに少なくとも100か国特定する。

2.2.2 湿地に影響を与えると考えられる国や都道府県の政策、プログラム及び計画を見直す際、戦略的環境影響評価の手法を採用する。総合目標1CP
2003−2005年地球規模の実施目標:常設委員会ならびに条約事務局は、湿地に影響を与える政策、プログラム及び計画に対して戦略的環境影響評価を適用した締約国を、少なくとも50か国特定する。

2.2.3 未整備の場合、環境影響評価(EIA)法を制定、施行し、開発計画、土地や水利用、侵入種などによる影響を受けると考えられる条約湿地を含む湿地に対し、適切に環境影響評価が実施されるようにする。環境評価実施にあたっては、決議.9で採択された追加手引きに基づき、必要に応じ国際影響評価学会(IAIA)に協力を要請する。また環境評価には環境、社会、経済及び文化面の影響に対する十分かつ適切な考慮を確実に盛り込む。(行動1.2.6を参照)総合目標1, 2CPOC
2003−2005年地球規模の実施目標:すべての締約国が、湿地に影響を与えると考えられる事業、開発案件などの計画や変更に対する環境影響評価を義務化する。

2.2.4 国際影響評価学会(IAIA)、条約の国際団体パートナー、利害関係者/団体などと協働し、湿地がもたらす経済、社会、環境上の利益を評価するための方法論を開発、普及、適用する継続的な取り組みを推進する。広報には主にインターネット上のリソース・キット(http://www.biodiversityeconomics.org/assessment/ramsar-503-01.htm)を利用する。総合目標1CPSTRP、条約事務局、MedWetIOPOC
2003−2005年地球規模の実施目標:STRPは経済、社会、環境評価の方法論を発展させ、この分野での経験を有するすべての締約国はSTRPの作業に参画する。

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.9, 12, 19及び34を参照。

実施目標3.湿地の賢明な利用を持続可能な開発に組み込む

実施目標3.1:
湿地の保全と賢明な利用を実現するための方法論を開発し、普及させる。

行動

3.1.1 持続可能な開発のため、賢明な利用の概念、その適用可能性と整合性を見直す。総合目標1STRPCP
2003−2005年地球規模の実施目標:STRPは、生態系を考慮した−特にWSSDの成果に沿った−アプローチを含む賢明な利用の概念に関する手引きを率先して見直し、更新する。

3.1.2 生態系を考慮したアプローチを含む湿地の賢明な利用のための助言、方法及び最良の実践例の調査結果をまとめ、湿地管理者に対し広報する。総合目標1STRPCP、条約事務局]

3.1.3 決議.14で採択された「管理計画策定のための新ガイドライン」に具体的に示される原則がすべての湿地に関する意思決定と賢明な利用に確実に適用されるようにする。総合目標1CP
2003−2005年地球規模の実施目標:すべての締約国は、「すべての湿地の賢明な利用に向けた管理計画策定のための新ガイドライン」を必要に応じて国内での実践に適用し、組み込む方法を検討する。

3.1.4 政府、責任機関、二国間及び多国間援助機関にむけて、賢明な利用に関する手引きを広く配布し、その活用を奨励することにより、それら機関による湿地の保全と賢明な利用のための持続可能な開発に対する資金調達政策策定とその実施を支援する。総合目標1, 3[条約事務局、CPIOPOC

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.12, 32及び39を参照。

実施目標3.2:
泥炭地の保全と賢明な利用を確実に、条約が示す生態系を考慮したアプローチの実証とする。

行動

3.2.1 決議.17の採択に従い、「泥炭地の世界的行動のためのガイドライン」を実施する。その際、このガイドラインが求める泥炭地の目録、保全、条約湿地指定の可能性、再生技術の移転及び泥炭地の文化的重要性の維持に関する優先事項に留意する。また国家的優先事項とされる行動を実施する。総合目標1, 2CP](実施目標1.1, 4.1及び10.1を参照)

3.2.2 「泥炭地の世界的行動のためのガイドライン」(決議.17)の実施状況をCOP9に報告する。総合目標1, 2CP、条約事務局、IOPOC

実施目標3.3:
水の供給、沿岸保護、洪水防止、食糧安全保障、貧困緩和、文化遺産及び科学的研究における湿地の重要性に対する認識を高める。

行動

3.3.1 国別(または適切な場合、都道府県別)湿地の目録作成の一環として、水の供給、沿岸保護、洪水防止、食糧安全保障、貧困緩和、文化遺産及び/または科学的研究において特に重要な湿地を評価し、文書化する。またその湿地について、これらの価値を認識したうえで、適切な場合は保護を求める。総合目標1CP](実施目標1.1及び10.1を参照)

3.3.2 条約湿地データベースからの情報を基に、条約湿地の価値と機能の分析及び要約などの広報資料を準備する。その際、水の供給、沿岸保護、洪水防止、食糧安全保障、貧困緩和、気候変動の緩和、文化遺産及び/または科学的研究において重要性の高い湿地に特に留意する。総合目標1, 2[条約事務局、MedWet、国際湿地保全連合](実施目標10.2を参照)
2003−2005年地球規模の実施目標:条約事務局ならびに国際湿地保護連合は条約湿地の価値と機能の分析をまとめ、配布する。

3.3.3 湿地の社会的、文化的伝統に対する認識を高めるため、決議.19の付属書1の指導原理の活用を検討するとともに、湿地の賢明な利用と管理において、これが正しく認識され考慮されるようにする。総合目標1, 2CP

3.3.4 湿地の賢明な利用プログラムやプロジェクトを策定、実施し、貧困緩和と地方、国、及び地域レベルでの食糧と水の安全保障計画に貢献する。総合目標1CPIOPOC、条約事務局]

3.3.5 国や地域の研究・研修センターを設置するなどの政策を通じ、水の供給、沿岸保護、洪水防止、食糧安全保障、貧困緩和及び文化遺産における湿地の役割に関する研究を促進する。総合目標1, 2CPMedWetIOPOC

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.12, 19, 33, 34及び40を参照。

実施目標3.4:
特に領土管理、地下水管理、集水域・河川流域管理、沿岸及び海域計画策定、気候変動対策などに関するすべての締約国の計画策定に、また国、地域、都道府県及び地方レベルでの意思決定過程に、湿地の保全と賢明な利用の政策を組み入れる。

行動

3.4.1 国、都道府県及び地方レベルの一般的な部門別計画策定に、湿地の保全、賢明な利用、再生と回復が組み込まれるようにする。また可能な限り、それを実施するための予算措置を講じる総合目標1CP

3.4.2 「河川流域管理に湿地の保全と賢明な利用を組み込むためのガイドライン」(ラムサール賢明な利用ハンドブック第4巻)を適用し、適切かつ実行可能な場合、これに関連するCBDとラムサール条約の共同プロジェクトである「河川流域イニシアティブ」に参加することにより、WSSDで合意された水資源の持続可能な利用、保護と管理に対する理解の向上を支援する。総合目標1, 3CP、条約事務局、MedWetIOPOC

3.4.3 CBD・ラムサール条約河川流域イニシアティブでまとめられた事例研究や資料を基に、教訓や優良実践例を見直し、その結果をCOP9に報告する。報告には、もし適切であれば、湿地、生物多様性と河川流域管理の統合に関する追加手引きを含める。総合目標1, 3[条約事務局、STRPMEAOC](実施目標12.1を参照)

3.4.4 締約国が大規模ダム建設による湿地と水系への環境、社会及び経済的影響の十分な検討を支援するための手引きを、COP9において検討できるよう作成する。総合目標1, 3STRP、条約事務局、MedWetIOP
2003−2005年地球規模の実施目標:大規模ダムによる湿地と水系への影響評価のための手引きを作成する。

3.4.5 決議.4の採択に従い、「統合的沿岸域管理に湿地の問題を組み込むためのガイドライン」を適用する。総合目標1CP

3.4.6 決議.1の採択に従い、淡水資源に関する意思決定の際、「湿地の生態学的機能を維持するための水の配分と管理に関するガイドライン」を適用する。総合目標1CP
2003−2005年地球規模の実施目標:水資源管理と水の効率化計画に関するWSSDの目標達成への貢献として、すべての締約国は国内の水資源管理に関する意思決定を支援するための水の配分と生態系管理に関する手引きを提供できるようにしておく。

3.4.7 COP9での検討に向け、湿地の生態学的機能を維持するための地下水資源の持続的な利用、及び水文学的循環の構成要素としての地下水維持に関するガイドラインを策定する。総合目標1[条約事務局、MedWetSTRPIOP
2003−2005年地球規模の実施目標:地下水資源に関するガイドラインを策定する。

3.4.8 気候変動に関する政府間パネルならびに国連気候変動枠組条約(行動13.1.1を参照)と協働し、気候変動の影響に対する適応的管理と緩和に関し、また特に土地利用、土地利用の変更、海面上昇、林業、泥炭地と農業の文脈における湿地管理を促進する。総合目標1, 2STRP、条約事務局、MedWetOC
2003−2005年地球規模の実施目標:COP8の湿地、及び気候変動の緩和と適応的管理に関する情報を提供できるようにする。

3.4.9 植林と管理、造林と森林再生など京都議定書履行のための国家政策によって湿地の生態学的特徴が損なわれることのないようにする。総合目標1, 2CPOC
2003−2005年地球規模の実施目標:全ての関係締約国が京都議定書履行の重要性の評価を完了する(COP8の再生ガイドライン(訳注:決議.16) の適用を含む)。

(国境をまたがる河川流域に関しては実施目標12.1を参照)

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.2, 3, 4, 12, 25, 32, 34, 39及び40を参照。

実施目標4.再生と回復

実施目標4.1:
再生と回復をすることが有益であり、環境、社会及び経済面で長期的利益を生じるような優先順位の高い湿地を特定し、その再生に必要な措置を実施する。

行動

4.1.1 国別の科学的湿地目録を利用し、現在と過去もしくは過去における湿地の価値と機能に鑑みて再生または回復させることが適切と考えられる湿地を特定する。その際、決議.16で採択されたガイドラインを適用する。総合目標1CPIOP](行動1.1.1を参照)

4.1.2 破壊され、または劣化した湿地に対して、実施可能なところで、湿地再生・回復プログラムを確立する。その際、勧告4.1、決議.17及び.20に従い、特に主要な河川系につながる湿地や自然保全上、価値の高い湿地においてこれを実施する。総合目標1CPMedWetIOP
2003−2005年地球規模の実施目標:失われた湿地、また劣化した湿地を有するすべての締約国は優先して再生すべき湿地の特定を完了する。また少なくとも100の締約国において再生プロジェクトを進行させ、あるいは完了させる。

4.1.3 失われた湿地、または劣化した湿地の再生と回復のための新たな研究と方法論についての情報をまとめ、それを広報する。総合目標1CPSTRP、条約事務局、MedWetIOP
2003−2005年地球規模の実施目標:新たな事例研究と手法についての情報を、ラムサールの湿地再生に関するウェブサイトに常に追加していく。

4.1.4 決議.16で採択された湿地再生に関するガイドラインを適用し、植林と管理、造林と森林再生など京都議定書実施のための国家政策により、湿地の生態学的特徴が損なわれることのないようにする。総合目標1, 2CPOC](行動3.4.9を参照)

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.1, 18及び19を参照。

実施目標5.侵入外来種

実施目標5.1:
湿地系への外来種の侵入を防止、抑制または根絶するための手引きを作成し、標準的な手順と行動を促進する。

5.1.1 侵入種の防止、抑制及び根絶に関して既にある手引きを実施する。総合目標1CP
2003−2005年地球規模の実施目標:さまざまな機関や過程から得られた手段や手引きを適宜活用し、侵入種が湿地の生態系にもたらす問題に決然と、かつ体系的に対処する。

5.1.2 世界侵入種計画(GISP)、生物多様性条約(CBD)、ラムサールの国際団体パートナーならびに関係機関との協働により、全世界からの事例研究や文書化された経験内容に基づき、侵入種の防止、抑制及び根絶のための実用的な手引きを作成し、普及させる取り組みを継続する。総合目標1CPSTRP、条約事務局、世界侵入種計画、IOPOC
2003−2005年地球規模の実施目標:侵入種管理のための手引きを作成する。

5.1.3 侵入種の防止、抑制及び根絶のための国内−必要に応じ国際的−行動計画に湿地問題が確実に組み込まれるようにする。総合目標1CP、条約事務局、IOPOC

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.18を参照。

実施目標6.地域住民、先住民及び文化的価値

実施目標6.1:
湿地の保全と賢明な利用に地域住民や先住民、特に女性や青少年が、充分な情報提供に基づいて積極的に参加するよう奨励する。

行動

6.1.1 「湿地管理への地域住民及び先住民の参加を確立し強化するためのガイドライン」(ラムサール賢明な利用ハンドブック第5巻)を適用する。その際、奨励措置(実施目標8.1を参照)、信頼構築、柔軟なアプローチの必要性、情報交換、能力開発、資源と努力の継続性などの重要性に特に留意する。総合目標1CP、条約事務局、MedWetIOPOC

6.1.2 特に地域住民や先住民が伝統的に管理してきた場所にある湿地の保全と賢明な利用については、先住民と協議を行い、先住民の完全なる支持を得た上で、先住民や地域住民が有する適切な伝統的知見や管理手法を文書化し、それらの適用を奨励する。総合目標1, 2CPMedWetOC

6.1.3 国際自然保護連合(IUCN)、ラムサール条約事務局ならびに世界自然保護基金の共同サービスである参加型管理クリアリングハウス(PMC)(www.iucn.org/themes/pmns)への支援を継続する。総合目標1CP、条約事務局、MedWet、国際自然保護連合、世界自然保護基金]

6.1.4 湿地とその保護に関する意思決定過程への一般市民の参加を促進し、条約湿地の選定とすべての湿地の管理に関して技術面、その他の情報が、利害関係者の間で確実に共有されるようにする。総合目標1, 2CPIOPOC

6.1.5 COP9での検討に向け、「湿地管理への地域住民及び先住民の参加を確立し強化するためのガイドライン」(ラムサール賢明な利用ハンドブック第5巻)の適用に関する手引きをさらに拡充する。その際、特に太平洋島嶼国や小島嶼開発途上国の経験、及びCBD・ラムサール条約第3次共同作業計画に基づいて行われたCBDやその他の機関との協力などから得た実地的経験に準拠する。総合目標1CPCEPA、条約事務局、MedWetIOPOC
2003−2005年地球規模の実施目標:CBDと共同で策定した詳細なるガイドラインをCOP9に提供できるようにする。

6.1.6 「湿地を効果的に管理するために、湿地の文化的側面を考慮するための指導原則」(決議.19)の活用を検討し、湿地の社会・文化的価値に関する事例研究、及びそれらを湿地資源の保全と持続可能な利用に組み込む方法を文書化する取り組みを継続する。総合目標1, 2CPCEPAMedWet、条約事務局、IOPOC

6.1.7 湿地の文化的特徴が湿地の持続可能な利用に確実に組み込まれるよう、「ラムサール条約湿地及びその他の湿地の管理計画策定に関する新ガイドライン」(決議.14)を適用する。総合目標1, 2CPMedWetIOPOC

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.16, 19及び39を参照。

実施目標7.民間部門の参画

実施目標7.1:
民間部門が湿地の保全と賢明な利用に参画するよう働きかける。

行動

7.1.1 民間部門に対し、湿地に影響を与える活動や投資を行うにあたって賢明な利用原則(ラムサールハンドブック第16巻)を適用するよう奨励する。総合目標1CP、条約事務局、MedWetIOP

7.1.2 国内湿地委員会または国内ラムサール委員会、条約湿地または河川流域管理機関・委員会及び普及啓発活動などの機構を利用して、湿地に関する意思決定に民間部門、国内の科学教育機関、大学やその他信頼できる専門、科学及び技術団体の参加を求める。総合目標1CPCEPA、条約事務局、MedWetIOP

7.1.3 民間部門による国際的な「湿地同友会(Friends of Wetlands)」 を設立し、国内また国際企業がその企業活動に賢明な利用の実践を適用する際に助言を得たり、国、地域または国際的なレベルで条約の活動を支援する機会を確保できる場とする。総合目標1SC、条約事務局、IOPOC

7.1.4 必要に応じて、民間部門による全国または地方レベルの「湿地懇談会("Friends of Wetlands" Forum)」を設立し、企業がその活動の中で賢明な利用の実践を適用する際に助言を得たり、条約の活動を支援する機会を確保できる場とする。総合目標1CP、条約事務局、IOPOC

7.1.5 民間部門と共同で湿地に由来する動植物産品の国内外での輸出入双方の取引を再検討する。また適宜必要な法的、制度的及び行政的措置を講じ、それらの採取が持続可能であり、かつ絶滅のおそれのある野生動植物の種の取引に関する条約(CITES)を確実に遵守するようにする。総合目標1CP、CITES](実施目標2.1、行動13.1.9及び15.1.13を参照)

実施目標8.奨励措置

実施目標8.1:
賢明な利用原則を適用し、逆効果をもたらす措置を廃止するための奨励措置を促進する。

行動

8.1.1 湿地の保全と賢明な利用を奨励する措置を特定し、促進するとともに、保全と賢明な利用の妨げとなる措置を特定し、廃止するために、現存の、または策定中の政策や法的、制度的枠組みの見直しを継続する。総合目標1CP
2003−2005年地球規模の実施目標:常設委員会ならびに条約事務局は、政策や法的、制度的枠組みを再検討し湿地の保全と賢明な利用に逆効果をもたらす措置を廃止しようと努めた締約国を、少なくとも50か国特定する。

8.1.2 国際自然保護連合(IUCN)が制作、管理している積極的奨励措置に関するインターネット上のリソースキット(http://www.biodiversityeconomics.org/incentives/policies-07-00.htm)を活用し、それを拡充する取り組みを継続する。総合目標1CPSTRP、国際自然保護連合、条約事務局]

8.1.3 積極的奨励措置の策定、実施、モニタリング及び評価の進捗状況、ならびに農業に対するものを含む逆効果をもたらす措置の特定、廃止の進捗状況をCOP9に報告する。総合目標1STRP、条約事務局]

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.23, 34及び40を参照。

実施目標9.広報・教育・普及啓発(CEPA)

実施目標9.1:
一般市民の参加、広報・教育・普及啓発(CEPA)を通じ、湿地の保全と賢明な利用を促進するための広報教育普及啓発プログラム(決議.31)を支持し、あらゆるレベルでの実施を援助する。

行動

9.1.1 湿地のCEPAの担当窓口として適格な政府系及び非政府系の組織が確実に指定され、行動に必要な資源が、確実に、できる限り提供されるようにする。(決議.9)総合目標1CP

9.1.2 関連の活動、対象グループ及び脅威の見直しに基づき、湿地の広報・教育・普及啓発のための国家行動計画が策定され、これが広く利用され、実行されていることを確認する。(決議.9)総合目標1CPCEPA
2003−2005年地球規模の実施目標:少なくとも50の締約国が国内でのCEPA行動計画を確立する。

9.1.3 条約のCEPAプログラムの実施において、「湿地管理への地域社会及び先住民の参加を確立し強化するためのガイドライン」(決議.8)が、確実に、全面的に考慮されるようにする。総合目標1CP

9.1.4 各国のCEPA行動計画において、政府内(例えば省庁間やすべての環境関連条約の担当窓口間)、政府と民間部門の主要な利害関係者、地域住民の間の情報伝達が見落とされることのないようにする。総合目標1CPCEPA

9.1.5 特に条約湿地などにおける湿地管理の担い手の間で、また、これら担い手と広報・教育専門家の間での継続的な情報・アイディアの交換、及び知見の共有を可能にするための適切な仕組みを国内で構築する。さらに電子媒体を利用し、国内のネットワークを国外の同様のネットワークとリンクさせ、地球規模で展開するよう図る。総合目標1, 3CPCEPAMedWet、条約事務局、OC

9.1.6 キャンペーン−2月2日の世界湿地の日と連動させるのが理想的−を実施することにより、湿地の保全と賢明な利用に対する認識を高め、国連総会を通じるなどして、国内外で世界湿地の日の認知度をさらに高めるよう努める。総合目標1CPCEPA、条約事務局、MedWetIOP

9.1.7 条約事務局がその情報センターとしての機能を充実させ、情報共有を促進できるよう、CEPAに関して各締約国が用いている効果的な助言、見本及び資料を条約事務局に提供する。総合目標1CPCEPA、条約事務局]

9.1.8 民間部門の協賛を得るなどして、すべての締約国に役立つCEPA資料の作成を継続し、それらを各国内でのCEPA活動に役立てる。総合目標1[条約事務局、MedWetCPCEPA

9.1.9 正規の学校教育の教育過程にラムサ−ルの湿地保全と賢明な利用原則がどの程度盛り込まれているかを検討し、必要な場合、これらの情報を追加するよう努める。総合目標1CPCEPAIOPOC

9.1.10 条約湿地やその他の湿地の現場に湿地教育センターを設置、あるいはさらに拡充するとともに、適切な場合、これらのセンターを湿地の研究と管理、教育・普及・啓発などの研修にも活用する。総合目標1CPCEPAIOPOC
2003−2005年地球規模の実施目標:少なくとも75の締約国において、少なくとも1か所の教育センターを条約湿地の現場に設置する。

9.1.11 湿地の重要性に対する認識と理解を促進する上で、様々な学習拠点(大学、博物館、水族館、植物園など)からの協力を得る。総合目標1CPCEPA

9.1.12 センター間での情報と参考資料の共有を促進し、姉妹湿地提携や専門知識の交流などを活発化させるため、9.1.10及び9.1.11で述べた施設が湿地リンクインターナショナルに参加するよう奨励する。(決議.9)総合目標1, 3CPCEPA、条約事務局、IOPOC

9.1.13 年間最低50万米ドルを調達することを目標として、ラムサ−ルのCEPAプログラム任意基金への拠出を奨励する。総合目標1, 4[条約事務局、 CPCEPAIOPOC](行動15.1.5を参照)

9.1.14 CBD・ラムサ−ル条約第3次共同作業計画を通じ、CEPAプログラムの調和を図るための両条約の協働を強化し、必要に応じて他の条約やプログラムとも同様の共同作業を行う可能性をさらに調査、追求する。総合目標1, 3[条約事務局、STRP、生物多様性条約、その他のMEA

9.1.15 提案中の「持続可能な開発に関する教育の10年」がWSSDの目標に沿って国連総会で正式採択された場合、ラムサ−ルのCEPAプログラムを通じ、それに貢献する。総合目標1, 3CP、条約事務局、CEPAIOPOC

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.31を参照。

実施目標10.条約湿地の指定

実施目標10.1:
「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」(ラムサールハンドブック第7巻)を適用する。

行動

10.1.1 条約湿地を増やすための戦略及び優先事項の確立を優先事項とした「ラムサール条約湿地リストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」(決議.11)の適用に向けた努力を今一度新たにする。それにより条約湿地のビジョン(決議.10)が求める国内における適切な条約湿地ネットワークの早期構築を目指す。総合目標2CPIOP
2003−2005年地球規模の実施目標:2003年12月31日までに実施状況をラムサール条約事務局に報告する。条約事務局は取りまとめた報告書を2004年3月31日までにすべての関係機関に配布する。条約調印以来、条約湿地未指定の締約国は、少なくとも1か所を指定する。2010年までに 2,500か所、延べ 25000万haを指定するという地球規模の目標に向け、この3年間に 250か所、延べ 5500万haを新規に指定する。

10.1.2 行動10.1.1を実行するにあたり、締約国内の希少、固有あるいは代表的な湿地タイプのそれぞれについての指定をすること、また特にカルストその他の地下水分系、珊瑚礁、マングローヴ、藻場、塩性沼沢、干潟、泥炭地、湿性草地、一時的な湿地, 乾燥地域の湿地や山岳湿地など(決議.12)現存の条約湿地リストにこれまであまり登録されていない湿地タイプに対して、優先的に配慮する。またその際、これらの湿地タイプの指定を支援するため締約国会議が採択したガイドライン(決議.11及び.33)を適用し、その進捗状況をCOP9に報告する。総合目標2CPIOPOC

条約の第1条1項及び第2条1項に準拠する。両条項では、低潮時の水深が6メートルを超えない海域を条約湿地とする、また、登録地は「島または低潮時における水深が6メートルをこえる海域であって湿地に囲まれているものを含める」ことができるとしている。

10.1.3 2012年までに代表的な海洋保護区のネットワークを確立するというWSSDの目標に貢献するため、沿岸や海域の湿地の登録を優先事項とする。総合目標2, 3CP

10.1.4 10.1.2で確認した優先タイプに加え、地球規模で絶滅のおそれのある種や締約国固有の種の生息地となっている湿地、またはそれらの種の地球全体の生息域の相当な割合を占める湿地も優先対象とする。総合目標2CPIOPOC

10.1.5 農業利用されている湿地など、選定基準を満たしながら、保護や持続可能な利用・管理のための制度が全く行われていない湿地を、制度確立を加速するための拠点として優先的に指定し、指定後速やかに制度が確立されるようにする。総合目標2CP

10.1.6 「ラムサール条約の下での国際協力のためのガイドライン」(ラムサールハンドブック第9巻)に従い、国境をまたがる湿地の自国内の区域を条約湿地として指定する。また関係近隣諸国にも同様の措置を取るよう促し、それにより湿地全体として整合性のとれた管理制度の確立を図る。総合目標2, 3CPIOP](実施目標12.1を参照)

10.1.7 これまであまり登録されていない湿地タイプなどを特定、指定するための戦略的枠組みを適用する締約国を支援するために、国際湿地保全連合及びその他の国際団体パートナーなどが行っている、分析・情報提供の作業への支持を継続する。総合目標2CP、条約事務局、IOP

10.1.8 条約湿地選定基準6の適用のために、水鳥個体数の1%基準を、あらかじめその内容について科学的見地から国際的に協議して、締約国会議毎に更新する作業を行ってきた国際湿地保全連合、その他の機関への支持を継続する。条約湿地選定の際に活用するため、同様の情報を湿地に依存する他の分類群の個体数に関しても追求する。総合目標2CP、条約事務局、IOP](実施目標12.2を参照)

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.2, 4, 7, 10, 11, 13, 14, 21, 22, 33, 38及び39を参照。

実施目標10.2:
条約湿地データベースを維持し、絶えず最新の情報によって更新する。また、このデータベースを、国際的に重要な湿地のリストにさらに湿地を指定する際の指針ツールとして活用する。

行動

10.2.1 締約国が指定に際して提出する条約湿地の地図及び記載に不備がなく、COP8(決議.13)で修正された条約湿地情報票の承認標準様式を使用し、かつ、条約湿地の生態学的特徴のモニタリング(下記、実施目標11.1を参照)に対して十分な詳細情報を提供するものであることを確認する。総合目標2CP、条約事務局、国際湿地保全連合]

10.2.2 条約湿地情報票の記載によって条約湿地の社会的・文化的価値及び特徴が十分認知され、これに基づいてこれらの価値・特徴が湿地管理計画策定に確実に組み込まれるようにする。総合目標2CP

10.2.3 条約湿地のデータシートや地図に記入漏れや不備がある場合は、至急訂正分を提出するとともに、すでに提出された条約湿地のすべての記載も承認された条約湿地情報票の様式に確実に合わせる。総合目標2CP

10.2.4 条約湿地情報票は、条約湿地の特徴の変化を記録する必要に応じて、できる限り頻繁に、長くとも6年以内の間隔で更新、改訂版を提出する。これによって、生態学的特徴の変化ならびに、「国際的に重要な湿地リストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」(ラムサールハンドブック第7巻)のビジョンと目標達成への進捗状況を締約国会議毎に見直すことができる。総合目標2CPSTRP、条約事務局、国際湿地保全連合]

10.2.5 条約湿地データベースの双方向性及び利害関係者にとっての利便性を向上させる。このためデータベース、ラムサール条約湿地目録のウェブ上でのプレゼンテーション、ラムサール条約のウェブサイト、及びラムサール条約湿地情報ゲートウェイや、特別報告その他の成果物などの出版などその他の双方向システム相互のリンクも行う。総合目標2[条約事務局、国際湿地保全連合、OC

10.2.6 公式使用三言語で書かれた各締約国会議の最新の更新版や注釈付きの条約湿地リストを含む「国際的に重要な湿地の目録」を電子フォーマットで管理し、その利便性を向上させる。総合目標2[国際湿地保全連合、条約事務局]

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.8及び13を参照。

実施目標11.条約湿地の管理計画策定とモニタリング

実施目標11.1:
すべての条約湿地の生態学的特徴を維持する。

行動

11.1.1 条約の3.1条に従い、各条約湿地の生態学的特徴を維持するため必要な方策を明確化し、実行する。その際、決議.10で採択された「生態学的特徴」と「生態学的特徴の変化」の公式定義、ラムサールハンドブック第8巻に示される条約湿地管理のためのツールセット、及びCOP8で採択された補足手引きを参考にする。また、この情報が条約湿地情報票に含まれていることを確認する。(行動2.2.1及び2.2.3を参照)総合目標2CP

11.1.2 「条約湿地及びその他の湿地の管理計画策定のためのガイドライン」(決議.14)を適用し、すべての条約湿地のための管理計画、または戦略を策定する。総合目標1, 2CPIOPOC

11.1.3 資源の許す限り、「湿地管理を推進するための『サンホセ・レコード』」(決議.15)を作成、維持するために必要な手順の確立を促し、その実施状況をCOP9に報告する。総合目標2[条約事務局、STRP

11.1.4 必要に応じ、規模のより大きな条約湿地、湿地保護区、その他の湿地(勧告5.3及び決議.14)のゾーニングの手法、ならびに規模が小かったり特に影響を受けやすい特定の条約湿地及びその他の湿地のための厳密な保護の手法(勧告5.3)の確立と実施を促進する。総合目標1, 2CPIOPOC

11.1.5 条約湿地管理のための部門横断的な委員会の設置を優先事項として検討する。この委員会は関係政府機関、地域住民の代表者、そして民間企業を含む利害関係者で構成するものとする。総合目標2CP

11.1.6 「小規模助成基金の運用ガイドライン」の実施にあたり、条約湿地の管理計画策定への支援に引き続き高い優先順位を与える。総合目標2CPSC

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.1, 3, 8, 10, 14, 15, 16, 17, 20, 34及び38を参照。

実施目標11.2:
条約湿地の状況をモニターし、条約の第3条2項に定める通り、条約湿地に影響を与える変化が見られた場合は遅滞なく条約事務局に通知する。また問題対処の手段としてモントルー・レコードならびにラムサール諮問調査団を活用する。

行動

11.2.1 条約湿地ごとの効果的なモニタリング計画を確立する。生態学的特徴の変化を早期に検知、警戒するための湿地管理計画の一環として確立することが理想的である。その際、「効果的なモニタリング計画を企画するための枠組み」(決議.1)と「湿地リスク評価の枠組み」(決議.10)(ラムサールハンドブック第8巻)を活用する。総合目標2CPOC

11.2.2 生物多様性の喪失、気候変動及び砂漠化の進行の推移を検出するための国別環境モニタリング、超国家的な地域環境モニタリング、あるいは国際的な環境モニタリングのためにのベースライン及び参照地域として、条約湿地リストの湿地が確実に利用(決議.11:条約湿地リストの目標4.1)されるようにし、またその状況と傾向を締約国会議毎に報告する。総合目標1, 2CP、国際湿地保全連合、IOP

11.2.3 湿地に影響を与える可能性のある開発案件や、土地利用・水資源利用の変更の結果、生態学的特徴に変化が起こるおそれのある条約湿地については、湿地の環境上、社会上、経済上の恩恵と機能を十分に考慮しながら、環境影響評価を確実に実施するようにする。また条約の第3条2項に従い、その結果を条約事務局に報告し、関係当局が、確実に、それを十分検討するように図る。総合目標2CP](行動1.2.4及び1.2.5を参照)

11.2.4 条約の第3条2項を履行するため、条約湿地の生態学的特徴が実際に変化した、または変化するおそれがある場合は遅滞なく条約事務局に通知し、「生態学的特徴が既に変化し、変化しつつあり、または変化するおそれがある」条約湿地を適切にモントルー・レコードに掲載する。総合目標2CP、条約事務局]

11.2.5 モントルー・レコードに掲載された湿地については、適切な場合、独立した専門家集団であるラムサール諮問調査団に対し、湿地に影響を及ぼす問題を検討し、修正行動のための勧告を行うよう要請する。総合目標2CP、条約事務局]
2003−2005年地球規模の実施目標:モントルー・レコードに掲載されていて、ラムサール諮問調査団を受け入れていないすべての条約湿地について、締約国はCOP9までに調査団の派遣を要請すること。

11.2.6 モントルー・レコードに掲載され、ラムサール顧問調査団による調査が完了した湿地については、勧告をすべて実施し、その結果を定期的に条約事務局に報告する。適当な時期にその湿地をモントルー・レコードから削除するよう申請する。その際、当該湿地の状況を詳述した調査票(ラムサールハンドブック第7巻)を条約事務局ならびにSTRPに提出する。総合目標2CPSTRP、条約事務局]

実施目標12.複数国家にまたがる水資源、湿地及び湿地の生物種

注:「国際協力のためのガイドライン」(ラムサールハンドブック第9巻)から直接引用された行動についてはガイドラインの参照番号を記載する。

実施目標12.1:
国境をまたがる湿地と集水域の目録及び統合的管理を促進する。

行動

12.1.1 各締約国は他の締約国ならびに未締約国と共有する自国内のすべての湿地を特定し、隣接する法的管理者との共同管理を促進する。必要に応じて、「河川流域管理に湿地の保全と賢明な利用を組み込むためのガイドライン」(ラムサールハンドブック第4巻, ガイドラインA1節)及び「統合的沿岸域管理(ICZM)に湿地を組み込むための原則とガイドライン」(決議.4)を適用する。総合目標1, 3CP
2003−2005年地球規模の実施目標:すべての締約国が隣国と共有する湿地の特定を完了する(1.1.1参照)。締約国の50%が共同管理メカニズムの特定を完了する。

12.1.2 二国間、または多国間の管理委員会を設置し、国境をまたがる集水域、湖沼・沿岸系に関する協力を図る。総合目標1, 3CP
2003−2005年地球規模の実施目標:国境をまたがる集水域や沿岸系を有する締約国の50%が共同管理委員会、または機関に参加する。

12.1.3 適切な場合、湿地、国際河川流域、もしくは沿岸系を共有する近隣諸国と共同で影響評価を実施する。その際、可能であれば、欧州の国境をまたがる湿地に適用されている国境を越えた環境における影響評価に関するエスポー条約の約定に留意する。総合目標1, 3CP](行動2.2.3及び2.2.4を参照)

12.1.4 ラムサール条約・CBD河川流域イニシアティブを通じるなどして、情報、分析及び優良な実践例へのアクセス、ならびに統合的河川流域管理に湿地と生物多様性を組み込む上での経験の共有を促進する。総合目標1, 3CP、条約事務局、生物多様性条約、IOPOC
2003−2005年地球規模の実施目標:河川流域イニシアティブを全面的に運用する。

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.7, 8, 10及び35を参照。

実施目標12.2:
国境をまたがる湿地に依存する生物種のモニタリングと管理のための協力を促進する。

行動

12.2.1 湿地に依存する移動性生物種に関するラムサール条約条約湿地選定基準を満たすすべての湿地を特定し、条約湿地として指定する。その際、特に世界的に絶滅のおそれのある(ガイドラインB1節)水鳥、魚類やウミガメなどの渡来地を最優先する。総合目標2, 3CPIOP、ボン条約]

12.2.2 湿地に依存する移動性生物種のための地域湿地ネットワークとイニシアティブの拡充を引き続き促進、支持する。この例として、アフリカ・ユーラシア渡り性水鳥保全協定(AEWA)、アジア・太平洋地域渡り性水鳥保全戦略、西半球シギ・チドリ類渡来地ネットワークなどがある。(ガイドラインB2及びB4節)総合目標3CPIOPOC](実施目標12.1を参照)

12.2.3 移動性生物種に関するボン条約(CMS)、アフリカ・ユーラシア渡り性水鳥保全協定(AEWA)との覚書及び関連の共同作業計画を通じ、湿地に依存する移動性生物種のための重要な湿地を共同で特定、管理する。また適切な場合、前項の行動で述べた渡来地ネットワークの拡充を促進する。(ガイドラインB3節)(実施目標12.1を参照)総合目標2, 3STRP、条約事務局、MedWetOC

12.2.4 特に渡り性の水鳥など、湿地に依存する生物種の個体数動態及び持続可能な捕獲に関する研究を促進し、広報を行う。総合目標1, 3STRP、条約事務局、IOPOC

12.2.5 国内の狩猟に関する法制度を、渡り性水鳥その他の湿地に依存する生物種の賢明な利用原則と確実に一致させる。その際、種の地理的分布、生活史の特徴及び持続可能な捕獲に関する研究を織り込むこと。総合目標1, 3CP、条約事務局、OC

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.19を参照。

実施目標12.3:
条約の下にある現行の地域協定を支持し、さらなる協定を促進する。

行動

12.3.1 地中海湿地委員会(MedWet/Com)、その関連行動計画、地中海湿地イニシアティブ(MedWet)及びその調整グループの作業を引き続き支持する。総合目標3MedWet、条約事務局、IOPOC

12.3.2 「条約の枠組みにおける地域的取組を発展させるためのガイダンス」(決議.30)を適用し、適切な場合、たとえば黒海、カスピ海、カリブ海、南米、アルタイ・サヤン山系などの地域にも、MedWetと同様の、条約の下にある地域協定を拡充するよう奨励する。総合目標3[関係CP、条約事務局、MedWetIOP

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.30を参照。

実施目標13.他の機関との協力

注:「国際協力のためのガイドライン」(ラムサールハンドブック第9巻)から直接引用された行動についてはガイドラインの参照番号を記載する。

実施目標13.1:
国際的、地域的な多国間環境協定(MEA)やその他の機関のパートナーと協働する。

行動

13.1.1 生物多様性条約(CBD)、砂漠化対処条約(UNCCD)、移動性野生動物種の保全に関する条約(ボン条約・CMS)、世界遺産条約、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)などとの協力・協働体制の強化を継続する。その際特に、共同作業計画や、各条約の補助機関である科学委員会や事務局間、また国内におけるラムサール担当政府機関と他の多国間環境協定の担当窓口間の協働作業などの仕組みを利用する。総合目標3STRPCP、条約事務局、IOPOC
2003−2005年地球規模の実施目標:第3次CBD・ラムサール条約共同作業計画を全面的に実行する。ボン条約・AEWA共同作業計画を策定し実行する。UNFCCCCBDならびにUNCCDとの「合同連絡グループ」に参画するなど、UNCCDならびにUNFCCCとも共同活動を立ち上げる。

13.1.2 ユネスコとの協力体制を、維持し、適切であれば、それをさらに促進する機会を求める。特にユネスコの「人と生物圏プログラム」(MAB)、とりわけ生物圏保護区における湿地に関して、また湿地の問題を組み込んだカリキュラム開発の分野に関する協力体制を維持、促進する。総合目標2, 3CPCEPA、条約事務局、IOPOC

13.1.3 「広域カリブ海の海洋環境の保護と開発に関する条約(カルタヘナ条約)」、「地中海汚染防止条約(バルセロナ条約)」、「バルト海地域の海洋環境保護に関する条約」その他の地域海域条約及びドナウ川保護条約との協力の覚書や合意書の実施を優先事項とし、湾岸海洋環境保全地域機構(ROPME)のような地域機関とも同様の協力協定を締結するよう努める。総合目標3[関係CP、条約事務局、IOPOC

13.1.4 「ラムサール条約の下での国際協力のためのガイドライン」(ラムサールハンドブック第9巻)F2―F6節に留意し、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)」との作業協力体制を確立する。総合目標3[条約事務局、CITES]

13.1.5 湿地の保全と賢明な利用に関心を持つ適格な地域機関やプログラムとの緊密な作業協力体制を築く。協力の対象は小島嶼国連合(AOSIS)、東南アジア諸国連合(ASEAN)、欧州連合(EU)、欧州会議、南部アフリカ開発協力機構(SADC)、アフリカ連合(AU)、米州機構(OAS)などを含む。総合目標3CPSC、条約事務局、MEAOC

13.1.6 「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)」の「環境イニシアティブ」に基づく「アフリカにおける湿地管理戦略実施のための行動計画」の拡充と実行を支持し、これに貢献する。総合目標1, 2, 3CPSC、条約事務局、IOPMEAOC
2003−2005年地球規模の実施目標:関係締約国はWSSDの目標に沿ってNEPADの行動計画にラムサールに関連する問題とメカニズムを確実に組み込み、それを実施する。

13.1.7 ラムサール条約のツールとメカニズムを通して「小島嶼開発途上国の持続可能な開発のためのバルバドス行動計画」の実施への貢献を継続する。総合目標1, 2, 3, 4CPSC、条約事務局]
2003−2005年地球規模の実施目標:WSSDの目標へ貢献するため、ラムサール条約のバルバドス行動計画への貢献度を検討する。

13.1.8 ラムサール条約と南太平洋地域環境プログラム(SPREP)との協力覚書の下での共同作業計画を継続して拡充、実行する。総合目標3[関係CP、条約事務局、MedWetIOP

13.1.9 条約の加盟とそれに伴う資金拠出に関する利益と不利益を検討し、適切であれば、地域経済の統合体、または同様の団体・機関などの集合体に対して、締約国の地位を付与する可能性を調査する。必要であればそのための条約改正の可能性も検討する。総合目標3[条約事務局、SCCOP

13.1.10 国連総会でラムサール条約が正式に認識されるよう促進する。同時に国連環境計画(UNEP)、国連開発計画(UNDP)、国連機構連携幹部理事会の水分野小委員会など他の国連の関係機関とのパートナーシップに向けたアプローチを取る。(ガイドラインC2節)総合目標3[条約事務局、SC

13.1.11 ラムサール条約・CBDの河川流域イニシアティブ(RBI)での協働など、湿地に関する問題に対処する他の専門機関との作業協力関係をさらに拡充する。総合目標3[条約事務局、OC

13.1.12 国別報告書様式のモジュラー化、報告様式の確定、環境状況報告様式、及び地域別報告様式の統一の探求など、適格な多国間環境協定とともに整合性のある情報管理と報告システムの開発と検証への貢献を継続する。総合目標3, 4[条約事務局、OC

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.3, 5, 14, 24及び42を参照。

実施目標14.専門知識と情報の共有

注:「国際協力のためのガイドライン」(ラムサールハンドブック第9巻)から直接引用された行動についてはガイドラインの参照番号を記載する。

実施目標14.1:
専門知識と情報の共有を促進する

行動

14.1.1 広報・教育・普及啓発(CEPA)やSTRPの各国の担当窓口などのメカニズムを活用し、世界、地域及び国家レベルでの知見(伝統的な知識、先住民の知恵、あるいは最近の技術や手法)の共有を促進する。(ガイドラインD1節)総合目標1, 3CPCEPASTRP、条約事務局]

14.1.2 研修が条約の下での国際協力の重要な要素であることを認識し、特にこのような研修の機会から便益を得ると考えられる他の国々の湿地管理者、湿地教育者及び条約の施行に責任を有する個人や団体に研修の機会を提供する。(ガイドラインのD2及びD3節)総合目標3, 4CP、条約事務局、IOP] (実施目標20.1を参照)

14.1.3 知識の共有や研修機会の提供のための重要なメカニズムとして、国境をまたがる湿地や共通の特徴を持つ湿地の姉妹湿地提携やネットワークを拡充する。総合目標2, 3CP、条約事務局、IOPOC
2003−2005年地球規模の実施目標:少なくとも75組の姉妹湿地提携が完了し、条約事務局に通知し、ラムサールのウェブサイトで広報する。

14.1.4 「ラムサール条約湿地専門家データベース」などインターネット上のリソースキット及び知識や情報の共有を見直し、拡充する。これらには影響評価、奨励措置、管理計画策定、河川流域管理、参加原則、教育と普及・啓発、そして条約湿地の情報を盛り込む。総合目標1, 2, 3CP、条約事務局、IOP

14.1.5 「ラムサール条約湿地専門家データベース」を拡充、活用し、その有用性を広報する。総合目標1, 4[条約事務局、CPIOPOC

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.39を参照。

実施目標15.湿地の保全と賢明な利用のための財源確保

注:「国際協力のためのガイドライン」(ラムサールハンドブック第9巻)から直接引用された行動についてはガイドラインの参照番号を記載する。

実施目標15.1:
湿地の保全と賢明な利用を支援するための国際協力を促進する。

行動

15.1.1 多国間及び二国間開発援助機関から直接資金的支援を集め、開発途上国ならびに市場経済移行国による湿地の保全と賢明な利用及び現存の戦略計画実施の取り組みを支援する。(ガイドラインE1節に準拠)総合目標1, 3, 4CP、条約事務局、IOP
2003−2005年地球規模の実施目標:二国間援助機関を有する締約国は、その二国間援助機関が、貧困の緩和や他のWSSD目標と優先事項に関連する湿地の保全と賢明な利用のためのプロジェクトに優先的に融資を行うよう奨励する。

15.1.2 資源を結集し、開発途上国ならびに市場経済移行国における条約湿地の管理計画の実施を支援する。総合目標2, 3CP、条約事務局、MedWetIOP](実施目標11.1を参照)

15.1.3 二国間援助機関を有する締約国は、「ラムサール条約の下での国際協力のためのガイドライン」E1, E2, E5, E7, E10, E11, E14及びE15節を遵守する。その際、特に長期的財源確保のためのメカニズム、プロジェクトの適切なモニタリング、開発援助機関職員の研修、制度的能力開発のための優先事項、開発援助機関の間で協力の必要性、援助国ならびに被援助国における二国間援助機関とラムサール条約担当政府機関の連携の重要性などを考慮する。総合目標3, 4CP、条約事務局、IOP

15.1.4 15.1.3に従い、二国間援助機関を有するすべての締約国に、各締約国における湿地関連の活動に対する援助の実績を報告するよう求める。(ガイドラインE5節に準拠)総合目標1, 3, 4CP

15.1.5 開発及び環境関連の多国間援助機関の運用に関する優先事項の設定や意思決定に関わる締約国は、湿地の保全と賢明な利用にしかるべき配慮と優先度が与えるよう努める。総合目標1, 3, 4CP、条約事務局、IOP
2003−2005年地球規模の実施目標:関係締約国は、多国間援助機関が貧困緩和の枠組みの中で湿地を優先するよう働きかけ、そのことについてCOP9に報告する。

15.1.6 ラムサール条約小規模助成基金とその基本財産基金、及びラムサール条約広報教育普及啓発プログラム任意基金に対する財政支援―中・長期的な支援が望ましい―を行い、前者に対し年間百万米ドル、後者に対し年間50万ドルを拠出するよう努める。(ガイドラインE4及びE9節に準拠)総合目標1, 3, 4[条約事務局、SCCPOC

15.1.7 資源を結集し、条約湿地の現場に湿地研修・教育センターを設置し、また開発途上国ならびに市場経済移行国における湿地教育担当者の研修を支援するための取り組みを支援する。総合目標1, 2, 3, 4CP、条約事務局、MedWetIOP

15.1.8 開発援助を受ける締約国は、開発援助機関による審査対象となる国家政策や計画の中に湿地の保全と賢明な利用のためのプロジェクトを盛り込み、特に制度に関する能力開発のためのプロジェクトを優先する。(ガイドラインE8及びE12節に準拠)総合目標1, 3, 4CP

15.1.9 ラムサール条約と生物多様性条約(CBD)の両条約の締約国は、CBDとの共同作業計画の実施の一環として、またCBDCOP4における内水面生態系に関する決議/4の段落6及び7に準拠し、地球環境ファシリティー(GEF)の審査基準に合うような、湿地の保全と賢明な利用のためのプロジェクトを策定する。総合目標1, 3, 4CP、条約事務局、IOPOC
2003−2005年地球規模の実施目標:少なくとも15か国に対し、地球環境ファシリティーに提出するプロジェクトを準備するための支援を提供する。

15.1.10 プロジェクトを審査、策定及び評価する面において開発、環境関連の支援を行う多国間援助機関との緊密な連携を維持する。このような機関は、すなわち、特に地球環境ファシリティー(GEF)のパートナーとして世界銀行、UNDPUNEP。地域融資機関として、アジア開発銀行、アフリカ開発銀行、米州開発銀行、欧州投資銀行など。そして、欧州委員会などである。総合目標1, 3, 4[条約事務局]

15.1.11 要請があれば、締約国ならびに二国間、多国間開発援助機関による湿地プロジェクトの策定、審査及び評価を支援する。総合目標1, 3, 4STRP、条約事務局]

15.1.12 湿地の保全に企業や財団など民間部門の参画を求め、ラムサール条約の下での民間部門からの財政支援の機会を追求する。総合目標1, 3, 4[条約事務局、CPIOP

15.1.13 国際貿易協定を遵守しつつ、特に条約湿地などからの湿地に由来する産品の環境上適正な取引を奨励する効果的なメカニズムの確立を促進する。総合目標1, 2, 3[条約事務局、CPIOPOC

15.1.14 環境上適正であり、また社会的に公正な取引による湿地由来の産品及びサービスに対する自主表示「ラムサール・ラベル」を考案する可能性を検討する。総合目標1, 3[条約事務局、CPIOP

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.1, 5, 6, 10及び42を参照。

実施目標15.2:
国内及び外国投資によるものを含むすべての開発計画において、環境保護措置と影響評価が不可分の要素として盛り込まれるようにする。

行動

15.2.1 銀行、金融機関、民間投資家ならびにディベロッパーを含む国際開発機関と連携し、補助金、融資及び開発計画の提案の中に、必ず湿地に加えられる可能性のある影響に対する環境安全措置及び環境影響評価を含むよう図る。(ガイドラインG1節に準拠)総合目標1, 3CP、条約事務局、IOP](行動1.2.3及び1.2.4を参照)

15.2.2 国内の法制度に、国際貿易協定と矛盾しない環境規制、及び湿地に影響を与える開発プロジェクトに対する環境影響評価の義務化などが盛り込まれるよう図る。(ガイドラインG2節に準拠)総合目標1, 3CP

15.2.3 湿地に関するプロジェクト策定の承認のあり方を見直し、これらの活動から得られる資源を国内の湿地管理の実践に振り向けるためのメカニズム導入を検討する。(ガイドラインG3節に準拠)総合目標1, 3CP

実施目標16.条約の財源確保

実施目標16.1:
締約国会議からの期待に応えるため、条約の統治メカニズム及びプログラムに必要な資金を提供する。

行動

16.1.1 条約の基本予算に対する年間拠出金の全額を毎暦年の初頭に速やかに支払う。総合目標4CP

16.1.2 条約に対する任意の追加拠出を検討し、小規模助成基金とその基本財産基金、広報教育普及啓発プログラム任意基金、研修サービス、地中海湿地フォーラムなどの地域的取り組み、モントルー・レコード記載の湿地やその他の条約湿地へのラムサール諮問調査団の派遣、戦略計画が定める優先的活動などを支援する。総合目標4[条約事務局、CPIOPOC

16.1.3 すべての締約国が締約国会議の開催国となる機会を得られるよう、COPの通常会合に係る条約事務局の費用負担を賄うための追加配分を基本予算に盛り込むことを引き続き検討する。総合目標4[条約事務局、COPSC

16.1.4 COP9において、水担当職員とCEPAプログラム担当職員のポストを新設し、これらの業務の実行を加速させるための予算配分を条約の基本予算に盛り込むことを検討する。総合目標1, 4[条約事務局、SCCOP
2003−2005年地球規模の実施目標:水担当職員とCEPAプログラム担当職員のポストを事務局に新設し、それに関わる予算を基本予算に盛り込む議案を、COP9での検討に向け準備する。

実施目標17.条約の制度的メカニズム

実施目標17.1:
締約国会議、常設委員会、STRPならびに条約事務局が、この戦略計画実施を支援して効率的、実効的に機能するよう図る。

行動

17.1.1 ラムサール条約締約国会議において引き続き、戦略計画を通じて締約国が条約を施行するためのツール、及び大小の締約国代表団ならびに様々な範疇のオブザーバーが完全かつ活発に参加できるようにするための運用規則を開発することに焦点をあてるよう図る。総合目標4COPSC

17.1.2 常設委員会の役割、責任、利用可能な財源を常に見直し、必要であればそれらを3年毎に修正、または強化する。総合目標4COPSC

17.1.3 国別報告書からの情報を通じ、締約国会議毎に戦略計画の実施に関して評価・報告を行い、2度目ごとの締約国会議で、次の6年間に向けた戦略計画の改討・更新版を提出できるよう準備する。総合目標4COPSC、条約事務局]

17.1.4 STRPの現行の優先事項、運用規則及び資金計画を締約国会議毎に見直す。総合目標4COPSC

17.1.5 STRPの各国担当窓口、国際団体パートナー、その他の支援を得て、締約国が賢明な利用を実行する際の新たな支援ツールの開発、及び国際的に重要な湿地を特定するためのラムサール基準の見直しをSTRPの継続的優先行動として維持する。また、これらに地球規模の湿地の保全と賢明な利用における優先事項が反映されるよう図る。総合目標1, 2, 4COPSTRP、条約事務局]

17.1.6 各締約国がSTRP業務のための担当窓口として1ヵ所(決議.2及び.28の要請に基づく)、またCEPAプログラムの担当窓口として2ヶ所(政府とNGO(非政府組織)に各1)を確実に指定する。(決議.9及び.31)総合目標1, 4COPCP

17.1.7 締約国会議で承認された条約の3ヵ年作業計画に基づき、条約事務局の年間作業計画の見直しと承認を行う。総合目標1, 4SC、条約事務局]

17.1.8 戦略計画と条約の3ヵ年間作業計画で期待される事項を考慮した条約事務局の人員配置と予算請求を見直し、締約国会議に対し勧告を行う。総合目標4[条約事務局、SCCOP

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.28, 42及び45を参照。

実施目標18.締約国の制度的能力

実施目標18.1:
湿地の保全と賢明な利用を実現するために、締約国の制度的能力を開発し、締約国内の機関相互の協力を促進する。

行動

18.1.1 湿地の保全と賢明の利用に責任を有する現存の国内機関の見直しを奨励し、その見直しに基づいて、以下の方策を策定し実行する。

a)湿地の問題に直接的・間接的責任を有する機関、特に水資源の管理機関、及び生物多様性、湿地の保全と管理を担当する機関などの間の協力や協働を強化する。総合目標1, 2, 4CP

b)国内の各環境関連条約の担当窓口間の協力を強化し、また適切な場合、統合的なアプローチを促す。また、統合的なアプローチを確実に行うための調整委員会の設置を検討する。総合目標3, 4CP

c)ラムサール条約担当政府機関と、社会的、文化的遺産の問題を含む湿地の保全または管理に関わる専門、技術、科学、教育に関する国内の団体などの間の接触を増やし、適切な場合、それらの機関との緊密な連携を促進する。総合目標1, 4CPOC

d)これらの機関が条約を効果的に施行することができるよう、適切な訓練を受けた職員を適切な人数、配置する。総合目標4CP](実施目標20.1を参照)

18.1.2 国内湿地委員会または国内ラムサール委員会を設置し、国の水管理担当省庁を必要に応じて含む関係政府省庁、また非政府組織、STRP及びCEPAの国内担当窓口、主要な利害関係者、先住民、地域住民、民間部門、関係団体や土地利用・管理当局などを代表し、それぞれからの意見を提供する場とする。(勧告5.13)委員会が設置されている場合、それが、確実に、適切に機能するよう図る。総合目標1, 4CP、条約事務局、MedWetIOP

18.1.3 各締約国において、条約の担当政府機関(適切な場合は都道府県の担当窓口)、STRP及びCEPAの担当窓口を見直し、これらの窓口が条約と湿地の賢明な利用に関わるすべての関係機関や団体による参画を増強する上で確実に効果を発揮するよう図る。総合目標1, 4CP

18.1.4 国別計画策定ツール(国別報告書の様式に基づき)を継続的な計画策定とモニタリングのためのメカニズムとして利用し、条約を緊密に調整をとって実施するための各国の取り組みが達成されるよう支援する。理想的には、このツールはすべての関係政府部局、省庁が利用し、また国内湿地委員会または国内ラムサール委員会や、その他の利害関係者からのインプットが必要に応じて盛り込まれていなければならない。総合目標4CP

この実施目標に関連する追加的行動についてはCOP8の決議.3及び42を参照。

実施目標19.国際団体パートナーなど

実施目標19.1:
条約の国際団体パートナー(IOP)やその他の機関との協働を通して便益を最大化する。

行動

19.1.1 この戦略計画に基づいて、各国際団体パートナーとの共同作業計画を確立し、毎年これを見直す。また現存の運営予算で十分に賄われない行動の実施に対しては追加資金の獲得を追及する。総合目標4[条約事務局、IOP
2003−2005年地球規模の実施目標:各国際団体パートナーならびに条約事務局は、すべての国際団体パートナーによる共同行動を含む、条約を支援するための共同作業計画の策定を完了し、実施中の状態となる。

19.1.2 国際団体パートナーやその他の協力団体の専門家ネットワークによるSTRPならびに条約への貢献を強化するためのメカニズムを実行する。総合目標4[条約事務局、IOPSTRP

19.1.3 条約の国際団体パートナーとの正式合意を必要に応じて見直し、更新する。総合目標4[条約事務局、IOP

19.1.4 条約の国際団体パートナーとしての地位を求める団体からの応募を歓迎し、その審査を迅速化する。総合目標4SC、条約事務局、IOP

19.1.5 共同作業計画の確立を通じ、現在他の団体との間で交わしている協力の覚書を実行する。覚書を交わしている団体にはユーロサイト(欧州の自然遺産管理団体のネットワーク)、ネイチャーコンサーバンシー(TNC)、湿地科学者協会(SWS)、地球科学情報ネットワーク国際センター(CIESIN)、コロンビア大学、米国CIESIN、国際影響評価学会(IAIA)、ダックス・アンリミテッド(カナダ、メキシコ、米国)、内陸水管理排水処理研究所(RIZA、オランダ)、南太平洋地域環境プログラム(SPREP)、チャド湖流域委員会、ニジェール川流域機構などが含まれる。また他の適格な団体とも同様の協定を取り交わすよう努める。総合目標4[条約事務局、OC

実施目標20.研修

実施目標20.1:
特に開発途上国や市場経済移行国などにおいて湿地の保全と賢明な利用に関わる機関や個人にとって必要な研修の内容を特定し、適切な対応を行う。

行動

20.1.1 条約の湿地研修サービスを実施し、さらに拡充し、広報する。総合目標4CP、国際湿地保全連合、条約事務局、IOP
2003−2005年地球規模の実施目標:ラムサール条約湿地研修サービスを整備し全面的に実施する。

20.1.2 条約の実施と、特に「賢明な利用ガイドライン」や「ラムサールハンドブック」などの利用の研修の必要性と対象者を国、都道府県及び地方レベルで特定する。総合目標4CP、条約事務局、MedWetIOP
2003−2005年地球規模の実施目標:少なくとも半数の締約国が、国や地方レベルで必要な研修内容を検討し終える。

20.1.3 湿地の保全と賢明な利用に不可分な分野について現在行われている研修の機会に関する情報を、国、地域、地球規模で確認し、広報する。また、そのため条約事務局のラムサール賢明な利用資料センター(http://ramsar.org/wurc_index.htm)ならびに湿地管理研修機会目録(http://ramsar.org/wurc_training_directory.htm)をさらに拡充する。総合目標4CP、条約事務局、MedWetIOPOC

20.1.4 条約事務局のインターンシップ研修プログラム拡大のため、可能な場合、財政支援を行う。総合目標4CPIOPOC
2003−2005年地球規模の実施目標:オセアニア・インターンを含むインターンシップ・プログラムを拡充するため、資源を提供する。

20.1.5 新たな研修活動と、必要に応じ、ラムサールハンドブックの利用についての一般研修モジュールを準備、提供できるようにし、または開発する。また下記の分野については特化したモジュールを提供する。

a)湿地目録、アセスメントとモニタリング;
b)国家湿地政策と計画;
c)統合的集水域・河川流域及び沿岸域計画の策定と管理;
d)地方、都道府県または集水域・河川流域レベルの統合的湿地管理計画策定;
e)湿地の再生と回復;
f)侵入外来種;
g)農業による湿地と水資源への影響;
h)影響評価と戦略的環境影響評価;
i)気候変動の影響及びそれらの影響の適応的管理と緩和;
j)湿地の経済評価;
k)CEPAに関する技術。
総合目標1, 2, 3, 4CP、条約事務局、MedWetIOPOC

20.1.6 以下の行動により、管理者研修の機会を提供する。

a)できれば姉妹条約湿地同士で、実地研修を通じた職員の交流を奨励する;
b)特定の条約湿地において試験的な研修講座を開設する;
c)条約湿地の現場に湿地管理者や湿地教育者研修用の施設を設置する;
d)全世界の湿地管理者向けの研修講座に関する情報を入手し、広報する;
e)米国政府が南米・カリブ海諸国のために資金提供する「未来の湿地イニシアティブ」のような地域研修イニシアティブをさらに立ち上げる。
総合目標2, 3, 4CP、条約事務局、MedWetIOPOC

20.1.7 研修活動支援のための小規模助成基金に提出するプロジェクトの策定を引き続き奨励する。総合目標4CPSC

20.1.8 「西半球の湿地に関する研修と研究のための地域ラムサールセンター」(決議.26)や「中央及び西アジアにおける湿地に関する研修及び研究のための地域ラムサールセンターの設立」(決議.41)など、湿地に関する研修と研究のための地域センターのさらなる拡充と利用を奨励する。総合目標1, 3, 4CPMedWetIOPOC

20.1.9 CEPAプログラム、条約事務局ならびに国際団体パートナーを通じて、湿地の保全と賢明な利用のための情報、技術支援、助言や専門知識の交流を図る。総合目標1, 3, 4CP、条約事務局、MedWetIOP

実施目標21.条約の締約国

実施目標21.1:
条約の締約国を全世界に確保する。

行動

21.1.1 下記の行動を通じて新しい締約国を募る。

a)非締約国と直接接触することにより、加盟に伴う利点に関する情報を提供するとともに、条約加盟の阻害要因を克服するための助言、支援を行う。総合目標5SC、近隣のCP、条約事務局、IOP

b)非締約国の外交代表との接触を密にする。総合目標5[条約事務局]

c)地域的海域条約など、他の条約の事務局、また各国における国連開発計画、世界銀行、その他の連絡事務所からの支援を求める。総合目標5CP、条約事務局、MEAOC

d)締約国と非締約国双方が参加する小地域ワークショップを開催する。総合目標5CP、条約事務局]

e)条約加入時に条約湿地リストに掲載しうる国際的に重要な湿地を選定するための支援を行う。総合目標5[条約事務局、IOPOC

f)非締約国が地域会合及び締約国会議にオブザーバーとして参加するよう促す。総合目標5[条約事務局、IOPOC

g)加入のための情報キットを出版、広報し、オセアニア諸国(より一般的には小島嶼開発途上国を含む)による加入手続きを支援する。[条約事務局、CPIOPOC


条約の機関及び協力パートナーによる2003−2008年戦略計画の実行

61.各実施目標を達成するための行動が示すように、戦略計画を完全に実施するには数多くの機関や団体の参画が必要である。計画策定及び実行にあたって様々な機関、団体がとる過程の概要を以下に記す。

締約国、各国のSTRP担当窓口及びCEPA担当窓口

62.この戦略計画実施の相当な部分を条約の締約国が担わなければならない。戦略計画をどの程度実施するか、実施のためにどの資源をどれだけ配分するか、またどれだけの時間枠を与えるかについては、各締約国の自由裁量によることが十分了解済みである。

63.締約国による計画策定とその実施を支援するため、常設委員会はCOP7の決議.27を履行し、COP8へ報告するためのラムサール国別計画策定ツール及び国別報告様式を採択した。これは第一次戦略計画の体系と内容に基づいており、2000年に初めて電子フォーマットで締約国に配布された。

64.2005年のCOP9と2008年のCOP10に向けた国別行動計画策定と報告のため、国別計画策定ツールと国別報告様式を改討する。この改訂はCOP8に向けた計画策定と報告にこれを使用した締約国の経験を踏まえて、第2次戦略の体系と内容に適合するものである。

65.この国別計画策定ツールは、締約国に国別報告用の標準様式を提供するとともに、締約国が国内ラムサール委員会その他のメカニズムを通じ、該当する戦略計画の目標と行動の下で国内の優先事項と行動の目標を決定する際の手順を提示する。

66.締約国は、戦略計画を利用して、COP8COP9までに各3か年の国別目標案を準備し、発表し終えるものとする。これによりCOP8COP9でそれぞれ採択されることになっている2003−2005年、及び2006−2008年の作業計画のために現実的な地球規模・地域の目標を設定できるようにする。

67.政府が指定したSTRPの各国担当窓口は、STRPの作業計画の実施に貢献する。(下記参照)

68.政府が指定した湿地に関する広報・教育・普及啓発の各国担当窓口(政府ならびにNGOの)はラムサールCEPAプログラムに関する戦略計画の行動の実施(決議.31)に貢献する。

常設委員会ならびにその地域代表機関

69.常設委員会の行動は戦略計画と締約国会議の決議によって特定され、3ヵ年中毎年開催される常設委員会の定例会議で議題として取り上げられる。行動の実現に向けた手順は常設委員会の決定を経て確定する。常設委員会の地域代表は各地域における戦略計画の実施促進に対して責任をもつ。

科学技術検討委員会(STRP

70.戦略計画で特定され、締約国会議の決議で具体化されたSTRPの行動をもとに、STRPは各3ヵ年の最初の定例会議において3ヵ年作業計画を提議する。STRPは毎年の定例会議において常設委員会に報告を行う。

ラムサール条約事務局

71.戦略計画で特定された条約事務局の行動に基づき、条約事務局は年間作業計画を準備し、常設委員会の承認を得る。作業計画には条約の支援の下に運営され事務局長の監督下にある地中海湿地フォーラムの調整グループの作業計画を盛り込む。

国際団体パートナー(IOP)

72.この戦略計画の行動19.1.1を通じ、各国際団体パートナーは、戦略計画の第II部にある行動に基づいて条約との共同作業計画を策定する。これらの行動の実行のために貢献あるは取り組み、また目標を設定することがIOPに期待されている。

73.特に条約が協力の覚書または合意書を交わしている他の団体が、戦略計画第II部の行動の実現に貢献するため、同様の共同計画を策定するよう奨励する。

他の多国間環境協定(MEA)

74.国際協力に関する総合目標3をさらに進展させるため、多国間環境協定に共通する活動の実現に向けた整合性のある作業枠組みを確立することが重点行動として確認された。それに向けて条約事務局は、他の関係多国間環境協定との間で2条約間の共同作業計画策定を継続する。また必須報告項目の整合性を図るなど、それら協定間の多条約間作業計画及び活動をさらに確立するよう努める。

75.この整合的な実施アプローチは、関係するすべての多国間環境協定の義務を実行し、そのための作業の重複を最小化する締約国の助けとなるよう立案されたものである。


参考文献

戦略計画に関連して締約国会議が採択した決議と勧告

締約国会議で採択された決議と勧告のうち、この戦略計画のそれぞれの総合目標に関連するものは、以下である。

決議と勧告のなかには、二つ以上の総合目標に関係した要素を含むものもあることに留意すること。

総合目標1 湿地の賢明な利用:すべての締約国が、自国の領土内のすべての湿地の賢明な利用を図るために、必要かつ適切な手段と措置を策定し、採用し、使用するよう促し、援助する。

a)賢明な利用

勧告3.3:湿地の賢明な利用
勧告4.10:賢明な利用の概念実施のための手引き
決議5.6:賢明な利用の概念実施のための追加手引き
勧告7.1:泥炭地の賢明な利用と管理のための地球的行動計画
決議.12:山岳湿地の賢明な利用と保全の推進
決議.14:ラムサール条約湿地及びその他の湿地に係る管理計画策定のための新ガイドライン
決議.17:泥炭地に関する地球的行動のためのガイドライン
決議.32:マングローブ生態系及びその資源の保全、統合的管理及び持続可能な利用
決議.35:特に干ばつなどの自然災害が湿地生態系に及ぼす影響
決議.39:戦略的生態系としての高地アンデス湿地

b)目録と評価

勧告5.2:条約第3条の解釈のための指針(「生態学的特徴」及び「生態学的な特徴の変化」)
勧告5.3:湿地の重要な特徴及び湿地の保護区に関するゾーニングの必要性
決議.1:条約湿地の生態学的特徴の変化の実施のための定義と、生態学的特徴を記載し維持するためのガイドライン、及びモントルーレコードの運用のためのガイドライン
決議.10:湿地のリスク評価の枠組み
決議.20:湿地目録の優先順位
決議.25:湿地における環境の質の測定
決議.6:湿地目録の枠組み
決議.7:湿地の生態学的特徴、目録、評価及びモニタリングに係るラムサール条約の手引きの不足と整合性
決議.8:湿地の現状と傾向の評価と報告、及びラムサール条約第3条2項の実施

国別目録の必要性:勧告1.5、勧告4.6、決議5.3、決議.12


c)環境影響評価と経済的評価を含む政策と法律

勧告4.4:湿地保護区の設置
勧告5.3:湿地の重要な特徴及び湿地の保護区に関するゾーニングの必要性
勧6.2:環境影響評価
勧告6.10:湿地の経済的評価に関する協力の促進
決議.6:国家湿地政策の策定と実施のためのガイドライン
決議.7:湿地の保全と賢明な利用を促進するための法制度の見直しに関するガイドライン
決議.16:ラムサール条約と影響評価:戦略・環境・社会的影響評価
決議.9:生物多様性条約において採択された「環境影響評価の法制度・プロセス及び戦略的環境影響評価に生物多様性関連事項を組み込むためのガイドライン」及びそのラムサール条約との関連

国家湿地政策の必要性:勧告1.5、勧告3.3、勧告6.9

d)湿地の持続可能な開発への組み込み

勧告6.1:泥炭地の保全
勧告6.7:サンゴ礁と関連生態系の保全と賢明な利用
勧告6.8:沿岸域の戦略計画策定
勧告6.14:有毒化学物質
決議.23:ラムサールと水
決議.18:河川流域管理に湿地の保全と賢明な利用を組み込むためのガイドライン
決議.21:潮間帯湿地の保全と賢明な利用の促進
勧告7.1:泥炭地の賢明な利用管理のための地球規模の行動計画
勧告7.2:小島嶼開発途上国、島嶼湿地生態系とラムサール条約
決議.1:湿地の生態学的機能を維持するための水資源の配分と管理に関するガイドライン
決議.2:世界ダム委員会の勧告及びそのラムサール条約との関係
決議.3:気候変動と湿地:影響、適応及び影響緩和
決議.4:総合的沿岸域管理の湿地問題
決議.34:農業、湿地及び水資源管理
決議.35:特に干ばつ等の自然災害が湿地生態系に及ぼす影響
決議.40:地下水利用を湿地保全と両立させるためのガイドライン

e)再生及び回復

勧告4.1:湿地の再生について
勧告6.15:湿地の再生
決議.17:湿地の保全と賢明な利用のための計画策定の要素としての再生
決議.24:失われた湿地生息地等の機能の補償
決議.16:湿地の再生の原則とガイドライン

f)侵入外来種

決議.14:侵入種と湿地
決議.18:侵入種と湿地

g)地域社会、先住民と社会的価値

勧告5.8:湿地保護区で湿地の価値の普及啓発を促進する方法
勧告5.10:1996年の25周年記念湿地キャンペーン
決議.21:湿地の現状に関する評価の報告
勧告6.3:ラムサール条約湿地管理への地域住民及び先住民の参加
決議.8:湿地の管理への地域社会及び先住民の参加を確立し強化するためのガイドライン
決議.9:1999−2002年ラムサール条約普及啓発プログラム
決議.14:ラムサール条約湿地及びその他の湿地に係る管理計画策定のための新ガイドライン
決議.36:湿地の管理及び賢明な利用のための手段としての参加型環境管理

h)民間部門の参加

i)奨励措置

決議.15:賢明な利用原則の適用を促進する奨励措置
決議.23:湿地の賢明な利用を達成するための手段としての奨励措置

j)広報・教育・普及啓発

勧告4.4:湿地保護区の設置
勧告4.5:教育と研修
勧告5.8:湿地保護区で湿地の価値の普及啓発を促進する方法
勧告5.10:1996年の25周年記念湿地キャンペーン
決議.19:教育と普及啓発
決議.9:1999−2002年ラムサール条約普及啓発プログラム
決議.31:2003−2008年広報教育普及啓発プログラム

総合目標2.国際的に重要な湿地:すべての締約国が、持続可能な開発のための条約湿地の適切なモニタリング及び管理など、「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」を適切に実施するよう促し、援助する。

勧告4.7:ラムサール条約の施行の改善のための措置について
勧告4.8:ラムサール条約湿地の生態学的特徴の変化について
勧告5.3:湿地の重要な特徴及び湿地の保護区に関するゾーニングの必要性
決議5.7:ラムサール条約湿地及びその他の湿地の管理計画策定
決議5.9:国際的に重要な湿地選定のためのラムサール基準の採択
決議.1:生態学的特徴の定義の実施、条約湿地の生態学的特徴を記載し維持するためのガイドライン、及びモントルーレコードの運用のためのガイドライン
勧告6.2:環境影響評価
決議.11:国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン
決議.16:ラムサール条約と影響評価:戦略・環境・社会的影響評価と、決議.9で採択された影響評価の追加ガイドライン
決議.10:湿地リスク評価の枠組み
決議.23:ラムサール条約湿地の境界変更と湿地生息環境の補償に関する問題
決議.6:湿地目録の枠組み
決議.7:湿地の生態学的特徴、目録、評価及びモニタリングに係るラムサール条約の手引きの不足と整合性
決議.8:湿地の現状及び傾向の評価と報告、並びにラムサール条約第3条2項の実施
決議.10:国際的に重要な湿地のリストの戦略的枠組みとビジョン実行の向上
決議.11:十分に選出されていないタイプの湿地を国際的に重要な湿地として特定し指定するための追加手引き
決議.13:国際的に重要な湿地(ラムサール条約湿地)に関する情報の拡充
決議.14:ラムサール条約湿地及びその他の湿地に係る管理計画策定のための新ガイドライン
決議.15:湿地管理を推進するための「サンホセレコード」
決議.20:条約第2条5項に基づく「緊急な国家的利益」の解釈及び条約第4条2項に基づく代償措置検討のための一般的手引き
決議.21:ラムサール条約湿地情報票における条約湿地の境界の正確な記述
決議.22:国際的に重要な湿地の選定基準を満たさなくなった、あるいはかつて満たしたことのないラムサール条約湿地に関する事項
決議.33:一時的な湿地を特定し、持続可能な方法で管理し、国際的に重要な湿地として指定するための手引き
決議.36:湿地の管理及び賢明な利用のための手段としての参加型環境管理
決議.38:水鳥個体数推定と国際的に重要な湿地の特定及び指定

モントルーレコード:勧告4.8、決議5.4、決議.1、.12、.8
ラムサール諮問調査団:勧告4.7、決議.14、.12

総合目標3.国際協力:「ラムサール条約の下での国際協力のためのガイドライン」の積極的適用を通して国際協力を促進し、また、特に湿地の保全と賢明な利用のために、追加の財政援助及び技術援助を集める。

決議4.4:条約第5条の履行についての決議
勧告4.11:国際機関との協力について
勧告5.4:ラムサール条約と地球環境ファシリティー及び生物多様性条約との関わり
勧告5.6:ラムサール条約におけるNGO(非政府組織)の役割り
決議.9:生物多様性条約との協力
決議.10:地球環境ファシリティー(GEF)とその実施機関−世界銀行、国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)との協力
決議.4:整合性のある情報管理のための基盤作りを含む、他条約との協力提携
決議.19:ラムサール条約の下での国際協力のためのガイドライン
決議.5:多国間環境協定及びその他の組織とのパートナーシップと協働
決議.30:条約の実施を高めるための地域イニシアティブ
決議.42:オセアニア地域の小島嶼開発途上国
決議.43:南米地域のための小地域戦略
決議.44:アフリカの開発のための新たなパートナーシップ及びアフリカ地域におけるラムサール条約の実施

地中海湿地フォーラムイニシアティブ:勧告5.14、勧告6.11、決議.22、決議.30
渡りルート協定:勧告3.2、決議4.4、勧告4.12、勧告6.4、決議.37

総合目標4.実施能力:条約がその使命を達成するために必要な実施機構、資金及び能力を確保する。

勧告5.4:ラムサール条約と地球環境ファシリティー及び生物多様性条約との関わり
勧告5.5:多国間及び二国間の開発協力プログラムへの湿地の保全と賢明な利用の取り込み
勧告5.6:ラムサール条約におけるNGO(非政府組織)の役割り
勧告5.7:国内委員会
決議.21:湿地の現状に関する評価と報告
決議.3:国際的な団体とのパートナーシップ
決議.5:ラムサール条約湿地保全及び賢明な利用のための小規模助成基金(SGF)に対する批判的評価及びその将来的運用
決議.26:西半球の湿地に関する研修と研究のための地域ラムサールセンターの創設
決議.28:財政及び予算
勧告7.4:未来の湿地イニシアティブ
決議.25:2003−2008年戦略計画
決議.26:2003−2005年の3年間におけるラムサール条約2003−2008年戦略計画の実施及びCOP9の国別報告書
決議.28:科学技術検討委員会の運用規則
決議.29:湿地保全及び賢明な利用のためのラムサール小規模助成基金の評価及びラムサール条約基本財産の設立

開発援助

勧告3.4:湿地に関して開発機関が負う責任について
勧告3.5:開発機関についての事務局の役割りについて
勧告4.13:湿地に関する多国間開発銀行の協力について
勧告5.4:ラムサール条約と地球環境ファシリティー及び生物多様性条約との関わり
勧告5.5:多国間及び二国間の開発協力プログラムへの湿地の保全と賢明な利用の取り込み
決議.10:地球環境ファシリティー(GEF)とその実施機関−世界銀行、国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)との協力

研修:

勧告4.5:教育と研修について
勧告6.5:さらなる湿地管理者研修プログラムの確立
決議.41:中央及び西アジアにおける研修及び研究のための地域ラムサールセンターの設立

総合目標5.締約国:条約の加入をすべての国に広める。

勧告1.1:締約国数の拡大、地理的適用範囲の拡大について
勧告1.2:開発途上国援助について
勧告3.6:アフリカ諸国のさらなる締約国加入について
勧告3.7:中央アメリカ、西インド諸島、南アメリカ諸国の更なる締約国加入について
勧告3.10:アジア及び環太平洋諸国の更なる締約国加入について
勧告6.18:太平洋諸島地域の湿地の保全と賢明な利用


ラムサール条約第8回締約国会議の記録 [和訳:『ラムサール条約第8回締約国会議の記録』(環境省 2004)より了解を得て再録,2005年,琵琶湖ラムサール研究会.]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う.]

[ PDF 171KB ]   [ Top ] [ Back ]    [ Prev ] [ Index ] [ Next ]


Valid HTML 4.01!    Valid CSS!