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「湿地:水、生命及び文化」
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第8回締約国会議
バレンシア,スペイン,2002年11月18-26日
1.経済的に重要な多くの種の産卵場や成育場として果たす大切な役割をはじめとして、マングローブ生態系が提供するさまざまな生態学的財とサービスの大きな重要性に加え、マングローブの経済的、社会的、環境的な重要性、特に漁業、生物多様性、沿岸の保護、レクリエーション活動、教育、沿岸・陸棚域の水質にとっての重要性を認識し;
2.多くの地域住民と先住民の存続が、マングローブ生態系の生産性と健全さにかかっていることも同じく認識し;
3.マングローブ生態系のある国では、この生態系がその沿岸域の自然のプロセスを調節し生物多様性を維持するために重要なこと、ならびに多くの種、特に魚類、軟体動物、甲殻類、渡り性及び留鳥の水鳥、海洋ほ乳類、及び絶滅のおそれのある種が、マングローブとその周辺地域に生態学的に依拠していることを重ねて認識し;
4.現在のサンゴの白化現象の広がり、及び、第8回締約国会議文書11(COP8 DOC.11)と決議Ⅷ.3で認識されたようにこの白化現象が将来増大するとの「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の予測に鑑みて、健全なマングローブ生態系は炭素を隔離し海面上昇や嵐を緩衝するなどにより、マングローブに関連のあるサンゴ礁、海草藻場、潮間帯干潟とともに、気候変動と海面上昇の影響を緩和するうえで重要な役割を果たしうることを認識し;
5.この広く認識されているマングローブ生態系の重要性にもかかわらず、計画策定や管理、規制面での適切な仕組みのないまま、マングローブとその周辺地域を利用し、あるいはマングローブ生態系への淡水や潮の流れを遮るような人間の活動による破壊や劣化の結果として、マングローブ生態系の面積は多くの国で減少し続けていることを憂慮し;
6.祖先たちの社会で行われていたマングローブ生態系の持続可能な利用法について、いちだんと多くの知識が得られるようになっていること、及びこの生態系の保全と持続可能な利用についての経験と技術的知識は、国及び世界のレベルで普及させるべきであることを認識し;
7.マングローブ生態系についての優良実践例と技術的知識を交換する仕組みを、世界のレベルで強化し、かつこの交換を役立てる必要性と同時に、マングローブ生態系における生物多様性の持続可能な利用の知識や関心を有する地域住民、及び国内または国際的な組織から適宜協力を得て、地域住民の間でもこの活動を推進して強化する必要性に留意し;
8.ラムサール条約の締約国が「1997-2002年戦略計画」の行動6.2.3により、マングローブ生態系が国際的に重要な湿地のリストに十分選出されていないこと、及びマングローブ生態系の特定と指定に関する手引きが今回の締約国会議で採択されたこと(決議Ⅷ.11)を認識し;
9.マングローブ生態系は、河川流域、及びそれよりさらに広い、マングローブのある沿岸域で起こる生態学的プロセスに依存し、加えてこうした流域や沿岸域で起こる社会経済的なプロセスの影響を受けること、及びこの生態系の価値と機能を発揮し続ける能力は、河川流域管理に関する決議Ⅶ.18、今回の締約国会議で採択された各湿地単位の管理計画策定に関する手引き(決議Ⅷ.14)、水の配分と管理に関する決議(決議Ⅷ.1)、及び統合的沿岸域管理に関する決議(Ⅷ.4)で認識されたように、より大きな規模での持続可能な土地利用管理にかかっていることを認識し;
10.持続不可能な活動によって消失または劣化した潮間帯湿地の不可欠な一部分として、マングローブ生態系に言及している決議Ⅶ.21を想起し;
11.世界各地でマングローブ生態系の消失とダメージを引き起こしている主因に、持続不可能な利用慣行、生息地の破壊、水文環境の変化、汚染、持続不可能な方法による養殖があると述べている決議Ⅷ.11の付属書を想起し;
締約国会議は、
12.領域内にマングローブ生態系を有する締約国に対して、この生態系に有害な影響を及ぼす可能性のある国の政策と戦略を見直して適宜修正すること、また人間の権利、利用、伝統的な習慣とともに生物多様性の維持の重要さを認識しつつ、人間集団にとってのこの生態系の価値と機能を保護し再生するための対策を講じること、及びその保護のために国際的レベルで協力し、地域的、世界的な戦略に合意するよう要請する;
13.領域内にマングローブ生態系を有する締約国に対して、直接または間接的にマングローブ生態系の構造と機能に影響しうる活動に対する環境影響評価及び戦略的環境影響評価を行い、その結果に基づいて、国の政策と規制の枠組みの面で、この生態系の保全、統合的管理、及び持続可能な利用を促進するよう同じく要請する;
14.関係締約国に対して、マングローブ生態系の被覆面積とその保全状況、及びその利用の形態と程度に関する情報を最新化すること、ならびに湿地の現状と傾向に関する決議Ⅷ.8でラムサール条約事務局と科学技術検討委員会(STRP)に求められた作業を支援するため、両者にこの情報を提供するよう強く勧める;
15.領域内にマングローブ生態系を有する締約国に対して、その保全、統合的管理、及び持続可能な利用に関する情報を交換するよう同じく強く勧める。地域住民や先住民がこれに全面的に関わる場合はこの情報交換は特に効果的である;
16.締約国に対して、また資源が許すならばラムサール条約事務局及びSTRPに対して、マングローブ生態系の持続可能な管理を目的とした環境的に健全な技術の移転に関するイニシアティブに協力し、これを利用者が使えるようにするよう要請する;
17.属領も含め、領域内にマングローブ生態系を有する締約国に対して、「戦略的枠組みと国際的に重要な湿地のリストに関するビジョン」(決議Ⅶ.11)で求めた「条約湿地の一貫性のある国内ネットワーク及び国際的なネットワーク」を構築することを目的として、その能力と国内規則にしたがい、選定基準を満たすマングローブ生態系を国際的に重要な湿地のリストに加えるための指定をすること、またその指定を行う際には、地域住民や先住民にとって、その自給自足生活の糧と文化的な価値という面で重要な条約湿地に特に重点を置くよう同じく要請する;
18.すべての関係締約国に対して、決議Ⅷ.5及び他の条約や関連協定によって承認されたラムサール条約、移動性野生動物種の保全に関する条約(CMS)及びアフリカ・ユーラシア渡り性水鳥保全協定(AEWA)の共同作業計画を適宜踏まえて、一貫性のあるフライウェイ規模の条約湿地ネットワークの構築に貢献するため、渡り性鳥類及び非渡り性鳥類に対するマングローブ生態系の重要性を認識し、決議Ⅶ.11で採択された「戦略的枠組み」に定める基準4、5、6に基づき、該当するマングローブ生態系地域を条約湿地に指定するよう同じく要請する;
19.すべての関係締約国に対して、マングローブ生態系を有する条約湿地について管理計画を策定する際には、「ラムサール条約湿地及びその他の湿地に係る管理計画策定のための新ガイドライン」その他、今回の締約国会議で採択された手引き(決議Ⅷ.1、決議Ⅷ.4、決議Ⅷ.14)を適用し、マングローブ生態系と関係のある河川流域や沿岸域で生じる生態学的及び社会経済的要因を考慮し、広大な範囲に及ぶ土地利用計画や管理が、水の流れの改変、汚染物質や堆積物の流入、外来種などにより、マングローブ生態系に悪影響を及ぼさないように確実を期すことを奨励する;
20.すべての関係締約国に対して、気候変動と海面上昇の影響を緩和するうえでマングローブ生態系が果たす役割を、特に海抜の低い土地や小島嶼開発途上国における場合を中心に十分に認識し、この生態系が気候変動と海面上昇から引き起こされる影響に確実に対処できるようにするため、必要な適応措置をはじめとする管理計画を策定するよう同じく奨励する;
21.すべての関係締約国に対して、自国のマングローブ生態系を劣化させている要因を特定するとともに、この生態系がそのさまざまな価値と機能を提供できるように、この問題に関して今回の締約国会議で採択された手引き(決議Ⅷ.16)を用いてその再生に努めるよう強く要請する;
22.ラムサール条約事務局に対して、既存の適当なパートナーシップ及び国際組織や地域的な組織との協定を通じ、マングローブ生態系とその資源の保全、統合的管理、及び持続可能な利用の促進に向け、財源の確保と技術協力推進のためにあらゆる努力を払うよう要請する。
[和訳:『ラムサール条約第8回締約国会議の記録』(環境省 2004)より了解を得て再録,2005年,琵琶湖ラムサール研究会.]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う.]
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