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決議Ⅹ.31「湿地システムとしての水田の生物多様性の向上」
呉地 正行,日本雁を保護する会・ラムネット日本
[JAWAN通信 № 92(2008-12-25)より了解を得て掲載]
2008年の10月28日−11月4日に韓国昌原市で、世界の湿地の保全と賢明な利用をめざす、ラムサール条約第10回締約国会議(COP10)が開催された。ほぼ3年ごとに行わるこの会議がアジアで開催されたのは第5回の釧路会議以来15年ぶりのことになる。
今回の会議では水田が大きな注目を浴びていた。水田は稲を栽培する農地だが、湿地の植物である稲を栽培するために、水田には水が張られる。これをラムサールの眼で見ると、水田は一時的に水がある人工湿地となる。水田は、農地と湿地の機能を併せ持つ「農業湿地」で、稲が数千年間もアジアで栽培され続けてきたことも、その「湿地」機能と関係が深い。ラムサールの関係者が水田に関心を示す最大の理由も、適切な水田農業は湿地の持続可能な利用の可能性を秘めているからだ。今回の会議では日韓政府が共同で、水田の生物多様性向上に注目した、水田決議案Ⅹ.31(「湿地システムとしての水田の生物多様性の向上」)を提出し、本会議での審議を経て採択された。
ラムサールでは、これまでは農業の湿地への負荷面だけが強調されてきた。しかし2002年の第8回会議で、農業に関する決議Ⅷ.34「農業、湿地及び水資源管理」が初めて採択され、その後は環境負荷を減らす農法を積極的に支援することにより、農地の生物多様性が高め、持続可能な農業湿地の利用を可能にするという考えが一つの流れになって来た。今回の水田決議は決議Ⅷ.34を踏まえて、これを水田という農業湿地で具体化するものだ。環境に配慮した持続可能な水田農業を後押しする国際的な追い風も吹き始めた。今回の会議には、FAO(国連食料農業機関)が初めて参加し、水田の生物多様性を評価するサイドイベントを開催し、これ以外にも水田に関わるイベントも数多く見られ、会議全体の水田に対する関心を高めていた。とりわけ、私たちが関わった、日韓の環境、農業NGOや生協、企業など 100団体以上が加盟した日韓ラムネット主催の、水田決議を支援するサイドイベント「世界の水田〜その生物多様性と持続可能性」には、他に比べ圧倒的に多い 200名余りの人々が、アジア、アフリカ、欧米などからバランスよく参加し、水田決議への関心の高さと国際性を現場で強く実感した。
これらの中で特に6)は、最も大きな成果と考えている。2004年に日韓の限られた環境NGOの発意により始まったこの決議採択へ向けた運動は、添付した年表が示すように、次第に環境団体だけではなく、日韓の農業関係者、生協、企業なども巻き込み、共通認識の輪を広げながら、NGOが水田決議素案を作成し、それを日韓政府に示しながら、決議案の提出権を持つ両国政府を様々な形で支援し、その成果が2008年のCOP10での決議採択となった。決議採択は大きな成果だが、その過程自体も、水田を素材にした湿地の賢明な利用についての理解を深める啓発活動だったことと、NGOと政府が目的を達成するために協働できたことは、決議採択以上に大きな成果と言えるだろう。
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URL: http://www.biwa.ne.jp/%7enio/ramsar/ovrf1.htm
Last update: 2012-03-27, Biwa-ko Ramsar Kenkyu-kai (BRK).