「鬼面(おにおもて)」後書き

  魔人ファン多しと言えど、如月(の先祖)×水角なんて極道なカップリングを捏造するのは私くらいなものでしょう。え、あれのどこがカップリングかって?カップリングですとも、ええ。ゲームで何やら因縁めいたことを匂わせていたので、勝手にくっつけさせていただきました。

   物思えば 沢の蛍も 我が身より
       あくがれ出づる たまかとぞ見る
                  和泉式部

  古文の授業で出てきたこんな句に惹かれ、「あさきゆめみし」を読んで六条御息所に共感する、私はそんな高校生でした。女の情念が躰を離れ漂うという描写に何故かひどく身に迫るものを覚えたのでした。
  大学では能楽部に入りました。(汗で面を駄目にした、というのは実際に聞いた話です。)自分では「葵上」の仕舞を舞う機会を得ませんでしたが、地謡などを経験し、やはり強く惹かれるものを感じました。当時はまだ創作らしい創作をしていませんでしたが、いつか御息所の生霊(いきすだま)をモチーフに何か書きたいと心の奥で願っていたのかもしれません。
  泥眼の面を実際に間近で見たことがあります。百年…もしかすると二百年の年を経てきたその小さな面は、飴色に透き通って見えました。

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