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ナガキ ネムリ

弱く愚かしいリントたちの中で
唯一戦う力を持つものであるクウガを
重々しい響きを立て
ゆっくりと棺の蓋が覆っていく。
やがてしっかりと閉じられた石棺に
そっと我が手を滑らせてみる。
松明のはぜる音だけが響く聖堂で
冷たく固い手触りが指に伝わる。

ようやくこのゲゲルも終りを迎えた。
これで、すべての戦士の行く末を見届けた。
今度のクウガは黒き四つ角のものにはならず
究極の闇はもたらされなかった。
白き四つ角のもの
あどけない“ン”のものと
もろともに眠る道を選んだ。
今度の眠りはいささか長くなりそうだ。

音もなく背の高い影が横を過ぎる。
白と黒の衣をまとった、我と同じ“ラ”の傍観者。
彼もまた戦いに取り残された。
寡黙な審判者は聖堂の奥にそっとドドゾを据えた。
再び我が横を通るとき
布と髪の間から覗く目がかすかに細められる。
我もそっと唇の端を上げて応える。
白と黒の審判者はゆるやかに表へと歩み去る。
これから彼も自ら眠りにつくのだ。
何度も繰り返された無言の別れ。

じりじりと音を立て、松明が燃え尽きてゆく。
そろそろ我も眠ることにしよう。

外では風が白いものを巻き上げ踊らせていた。

岩肌に手を沿わせ、ゆっくりと目を閉じる。
下肢がほどけ、大地に溶け込んでゆく。
地の中からさまざまなものがじわじわと染み込んでくる。

この地で
我が体は
葉を茂らせ
花を咲かせ
実を結び
枯れ果て
やがて芽吹く。
次のゲゲルが始まるまで
何度となく。

そして、新たなゲゲルで
我は
戦士たちの
どのような行く末を
見ることとなるのだろうか。



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