− 人が住んでいる琵琶湖の島 −

                          沖 島
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1.はじめに   琵琶湖には「沖島、竹生島、多景島、沖の白石」の4つの島があります。  この中で、人が住んでいるのは沖島だけです。   淡水湖で、人の住んでいる島があるのは世界でも珍しいそうです。   沖島には、万葉の時代以前から人が住んだようですが、本格的に住みつい  たのは、保元・平治の乱(1156−1159年)による源氏の落武者だそ  うです。 20060928okishima (1).jpg 私の家から沖島行きの港までは、車で わずか30分位です。 そんな至近距離に居ながら、これまで訪 ねたことがありませんでした。 ←野洲市の湖岸から見た沖島   ↓「休暇村近江八幡」から見た沖島  20030928okishima (2).jpg   俳句仲間と行くことが決まったときは、海外旅行に出かけるときのように  気持が高まりました。 2.沖島への行き方   近江八幡市の北方の「堀切港」から、「沖島漁港」行き通い船があります。 20061012okishimamap.jpg   所要時間は10分弱です。 通い船は毎日9−11往復ありますが、 昼間は2時間に1回です。  値段は片道400円。ただし、島民は 200円ですから、どこかの国がそうだ ったように、私たちにとって沖島は外国 みたいなものです。  長命寺港からは外国人でも(!)片道 200円ですが、1日1往復だけです。 その上、沖島発7:10、長命寺発11 :25ですから日帰りはできません。 20061012okishima (3).jpg ←堀切港から沖島を見る   ↓船を待つ人たち    (窪んだところが沖島漁港)  20061012okishima (4).jpg 3.島民の生業(なりわい)   沖島の生活は、漁業に負っているようです。  沖島漁港は沢山の漁船で埋め尽くされていました。ざっと数えたところ、  80艘くらいありました。漁に出かけている船もあるでしょうから、もっと  あるでしょう。1軒1艘以上所有しているそうです。   島民人口は、かつては800人位だったこともあるそうですが、現在はお  よそ450人で、家は120戸位だろう、ということでした。 20061012okishima (18).jpg ←船で埋め尽くされた漁港  ↓沖島漁港会館 20061012okishima (5).jpg    20061012okishima (13).jpg  漁は網を曳くだけではありません。 エリ漁という伝統的な漁法も採られてい ます。 (エリの漢字=魚偏+入) ←沖島付近のエリ   島に平地は見当たりません。  野菜はどうしているのか、お年寄りに尋ねたところ、島の裏側(漁港と反対  側)にある畑で野菜を作っているということでした。   かつては船で本土(と呼ぶのかどうか知りませんが)まで畑仕事に出かけ  た時期もあったそうです。    20061012okishima(26).jpg  島の裏側に回ってみました。 あまり広くない畑で野菜が育っていまし た。畑で野菜の面倒を見ているのは女性 ばかりでした。 ←小石の敷き詰められた湖岸   ↓旧・石切り場に近い野菜畑  20061012okishima (20).jpg   浜辺はきれいな白っぽい石で覆われていました。  畑の境界には、あちこちで薄い石が積み上げられていました。どうやら、人  工的に手を加えられた石が使われているようです。   島の案内書を読んでみると、かつて、江戸時代から昭和40年代まで、沖  島は採石場として栄えました。石英班岩と呼ばれる良質の石は、明治時代の  琵琶湖疎水、南郷洗堰、国鉄東海道線などの工事に使われたのだそうです。 4.町の家並   沖島には広い平地がないので、家は軒を接して建てられ、通路は家に挟まれ  た軒下です。 20061012okishima (21).jpg ←二人並んで歩くのが困難な通路    ↓   20061012okishima (6).jpg 20061012okishima (7).jpg  懐かしい手押しポンプを見つけました。 現在は上下水道が完備していますが、か つては琵琶湖の水を汲んでいた家庭が多 かったようです。 ←まだ健在なポンプ 20061012okishima (11).jpg  露地で小魚を炊いている主婦に出会いました。 「ごり」という小魚を、大きなたらいに一杯洗っ ていました。  ここでは「うろり」と呼んでいるそうです。 ←「うろり」を炊く主婦        ↓     20061012okishima (12).jpg   島にはお寺がふたつ、神社がひとつありました。  奥津嶋神社は、漁港から歩いて5分足らずの小高い丘の中腹にありました。  石段を登ってみると、町の家並が見下ろせました。     20061012okishima (10).jpg  瓦葺きの家は、いずれも切妻作りです。 切妻作りの屋根が、触れ合うばかりに密 集しています。 ←漁港方面の家並  ↓神社下の家並(上方は湖面)  20061012okishima (9).jpg   沖島漁港のある表側の生活用道路は、東西1キロ程度かと思われます。 20061012okishima (14).jpg  道幅は車1台がやっと通れる位です。 自動車は走っていません。 唯一の動力車は、(多分)耕運機です。 ←ガスボンベの運搬   車の走っていない島で思いついたのは、ベネチアです。  しかし、ベネチアにあっても(多分)沖島にはないものがあります。それは  橋です。   沖島に「ないもの」をいくつか列挙してみましょう。    ・自動車用道路     ・自動車       ・交通信号                 ・橋          ・日本全国を覆っているクモの巣(=電線)         ・商業用広告      ・交番(推測)    ・医院(推測)               なくて困るものもあるでしょうが、廃棄ガスや交通事故などのように、  なくてよいものの方が多いでしょう。   5.十四の瞳   学校はどうなっているのでしょうか。  近江八幡市立沖島小学校がある、というので足を延ばしてみました。    20061012okishima (15).jpg  穏やかな風景を眺めつつ、漁港から5分ほど歩 くと、山の中腹に石垣が見えました。 旧小学校跡だそうです。 鳶(とんび)がゆったりと舞っています。  がけ崩れ防止の工事が行われていました。 ←民家のある風景     ↓旧小学校跡   20061012okishima (23).jpg   そこから3分ほどで小学校に着きました。  予想外に立派な校舎に驚きました。実は、ここへ来る前に郵便局に寄ったと  ころ、小学生の紙細工作品が飾ってあり、小学生は7人だけだということを  聞いていました。それにしては立派な校舎です。 20061012okishima (16).jpg  きれいな木造二階建て校舎は山を背に して建ち、前には琵琶湖が広がっていま す。学童留学生を受け入れたら喜ばれそ うです。 ←十四の瞳の小学校   ↓対岸の休暇村を望む  20061012okishima (19).jpg 20061012okishima (17).jpg  中学生は本土(?)の中学に船で通っ ているそうです。  「わかば」という通学用の船が小学校 前に係留されていました。 6.句会   今回、沖島を訪ねたのは、俳句同好会による吟行のためです。  島を歩いて作った句を1人2句提出することになっていました。島内を見学  し、昼食を摂った後、句会が開かれました。昼食は、漁港会館で働いている  女性が調理してくださったお弁当を呼ばれました。「うろり」入りのお汁が  空腹にしみ入りました。作句の時間は昼食を含めて1時間半でした。  20061012okishima (22).jpg 場所は沖島漁港の建物内です。 私は30分ほどかけて、何とか2句をひ ねり出しました。  大鍋にうろりを炊ける島の秋    校舎跡鳶停(とど)めて島の秋 ←漁港建物内での句会   うーん、同じ季語では能がないな。  ベネチアを想い起こさせるような、静寂を感じさせるような句を詠みたいも  のだが、うまい言葉が見つからないわい。  うーん、うーん、..無駄な努力はしないで、港でも散歩してこようっと。   句会の後、水産物屋さんでお土産を買って帰りました。  島に渡ったのは堀切港発10:15、帰りは沖島漁港発16:00でした。 7.おわりに     沖島は、観光客の誘致には力を入れていないようです。  例えば、堀切港には観光客用の駐車スペースが用意されていません。  ということは、この島の人々は経済的に裕福な生活をしているのに違いあり  ません。     今回の沖島訪問では、私は吟行以外にふたつ狙いがありました。  ひとつは、ホームページに載せる(この記事を書く)材料を集めること。  ふたつ目は、休暇村主催の写真コンテストに応募するための撮影をすること  です。最優秀賞は、休暇村ぺア無料宿泊券(3万円相当)です。   句会では、全く予想外に、私の「うろり」の句が最多得票でした。  この栄えある1等賞の賞品は、「うろり」の佃煮でした。(¥500?)  写真コンテスト用の撮影は、残念ながら、3万円から限りなく遠ざかったも  のばかりでした。                    (散策:2006年10月12日)                   (脱稿:2006年10月26日)   参考図書:・沖島に生きる   小川 四良 淡海文庫 ------------------------------------------------------------------
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