福林寺跡磨崖仏 妙光寺山磨崖仏

                   野洲の磨崖仏
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1.はじめに   野洲市には磨崖仏が残されています。  JR野洲駅から歩いても行ける近距離にあります。 20080125magaibutsu-yasumap.jpg 国道8号線に近い野洲中学校 の背後には低い山が連なってお り、学校に向って左右の2箇所 に、福林寺跡磨崖仏(A)と妙 光寺山磨崖仏(B)があります。  駅から野洲中までは約1.5 キロ、徒歩約20分で、歩くと きは裏道がありますが、左図で は割愛しています。       ↓国道8号線から見た野洲中学校      20080125yasuchugaku.JPG   2.福林寺跡磨崖仏   まずは福林寺跡磨崖仏(ふくりんじあとまがいぶつ)を訪ねてみましょう。  国道8号線の交差点から100メートルほど進むと野洲中学校の正門があり  ます。学校に向って左側の道路です。学校を右に見ながら少し坂道を登ると  行き止まりに駐車場があります。ここで車を下り、駐車場の山手側の一段高  い位置にある道路へ上がります。   道路は野洲中の裏側に伸びており、校舎と平行しています。  山側に道路と平行して小さな川があり、磨崖仏はこの川を渡った先にありま  す。 20080118magaibutsu (03).jpg ←野洲中の裏に伸びている道路  (福林寺跡磨崖仏へは左折   妙光寺山磨崖仏へは直進)   ↓磨崖仏まで90メートルの表示  20080118magaibutsu (04).jpg   駐車場から道路へ出るときと道路から橋を渡るときは、柵をすり抜けなけ  ればなりません。この柵は、猪の散歩をお断りするためのもので、人間は手  を使って自由に開閉できます。橋を渡って100メートルほど進めば、磨崖  仏に対面できます。ここまではハイヒールでも楽に歩けるでしょう。 20080118magaibutsu (05).jpg  緩やかな斜面の雑木林の中に、仏様が静か に佇んでいました。 大きな石に観音菩薩一体と如来像二体が刻ま れています。      20080118magaibutsu (06).jpg            ↓端正な観音菩薩           20080118magaibutsu (08).jpg   この磨崖仏は室町時代初期(14世紀)の作だそうです。  一番美しい観音菩薩の周りにはタガネの跡が残っています。割り取ろうとし  て手を加えた跡です。 20080118magaibutsu (07).jpg ←痛々しいタガネの跡      ↓  20080118magaibutsu (09).jpg   大きな石に刻まれた磨崖仏は他にもあります。  およそ40メートル離れた所に、地蔵菩薩の刻まれた大きな石がありました。 20080118magaibutsu (11).jpg  石の三面に地蔵菩薩が刻まれています。  この石の一部は、割り取られたのかも 知れません。 20080118magaibutsu (13).jpg 20080118magaibutsu (12).jpg 20080118magaibutsu (14).jpg  磨崖仏は他にもあります。 小さな石仏も多数あります。  20080118magaibutsu (15).jpg 20080118magaibutsu (17).jpg  「史跡福林寺址」の碑が建っています。 その奥にある割られた大きな石にも、い くつかの仏像が刻まれていたのでしょう。 20080118magaibutsu (16).jpg   明治から大正にかけて、ここから沢山の仏像が持ち去られ、その多くは大  阪や堺の富豪の庭に置かれたそうです。    福林寺は、天武天皇の時代(7世紀末)に建立されたそうです。いつ消失  したのかは不明ですが、およそ500年前までは存在していたことが明らか  なようです。   現在の野洲中学校は、かつての福林寺の境内に建っているようです。   3.妙光寺山磨崖仏   妙光寺山磨崖仏(みょうこうじさんまがいぶつ)は、妙光寺山の山腹にあ  ります。妙光寺山は、近江富士と呼ばれる三上山に連なっています。   福林寺跡磨崖仏からは1キロほど離れています。   まずは野洲中学の裏の道を歩きます。  この道は校舎の2階位の位置にあります。500メートルほど川沿いに歩き、  交差する道路を右折して200メートルほど歩くと、磨崖仏への入り口があ  ります。 20080118magaibutsu (19).jpg  ここの入り口にも開閉自由の柵が設け られています。 ここから磨崖仏まで400メートルです。  こちらの磨崖仏は山の中腹にあるため、 山道を登らなければなりません。 ←磨崖仏入り口   山道は狭いので、一人ずつしか歩けません。  この斜面は山の北側にあるので湿気が多く、道の脇には羊歯(しだ)が茂っ  ています。 20080118magaibutsu (20).jpg ←羊歯の多い登り道     ↓掘り返された跡    20080118magaibutsu (21).jpg   このあたり一帯の山には、隣接する三上山(近江富士)も含めて、猪が生  息しています。一人で黙々と登っていたら、猪は逃げずに道を歩いてくるか  も知れません。狭い急な道を猪が上から駆け下りてきたら大変です。  200メートル位歩くと、道路に掘り返された跡がありました。猪がミミズ  を探して掘った跡に違いありません。   と、そのとき、上の方で動物のうめき声が聞こえたと思う間もなく、大   きな猪が道の急斜面を駆け下りてきました。私は急いで木の陰に身を寄   せようとしましたが、足を滑らせて倒れてしまいました。突進してきた   猪の牙が私のわき腹に突き刺さりました..  というような事故が起きることもあり得ると思い、猪の写真を撮りながら避  けるにはどう動いたらよいか、思いを巡らしながら登りました。 20080118magaibutsu (22).jpg  さらに少し登ると道が平坦になり、岩 屋がありました。 入り口からここまで、高さにして100 メートル位は登ったでしょうか。 野洲の平野部を見下ろすことができます。 ←岩屋 20080118magaibutsu (26).jpg ←斜面に生い茂っている羊歯   ↓木の間から見る平野部  20080118magaibutsu (27).jpg  20080118magaibutsu (24).jpg  岩屋から平坦な道を100メートル位進むと、 頭上に磨崖仏が見えました。  大きな石の一部に、畳1枚余りのくぼみが作ら れ、地藏菩薩が彫られています。  お地藏様は北東を向いています。 20080118magaibutsu (23).jpg                 20080118magaibutsu (25).jpg   石全体は黒ずんでいますが、地蔵菩薩が彫られている部分は白っぽくなっ  ています。多分、地元の人が拭き清めているのだろうと思います。  地蔵菩薩は蓮華台に立ち、左手に宝珠、右手に錫杖を持っています。  写真からはよく分かりませんが、履(くつ)をはいています。   下から見上げたときの疑問は、何故か全体がやや左に傾いていることです。  また、蓮華台のある下の彫り込み部は、水平でなく、左下がりになっていま  す。なぜこのように不安定な形状になっているのでしょうか。   後日、資料を読んだところ、この磨崖仏は「書込み地蔵」とよばれている  そうです。「元亨(げんこう)四年甲子(きのえね)七月十日 大願主経貞」  という銘が、仏像には珍しく、彫られているそうなのです。     そこで、写真を拡大して見たところ、菩薩像の(向って)右側と左側に銘  が刻まれていることが分かりました。  大願主経貞の銘(左側)        元亨四年甲子七月十日の銘(右側)     ↓             ↓ 20080118magaibutsu (25B).jpg           20080118magaibutsu (25A).jpg   元亨(げんこう)四年(1324年)は、後醍醐天皇の御代で、地蔵信仰  の盛んな物情騒然たる時代だったそうです。   妙光寺山磨崖仏は、およそ700年にわたり、東方を見つめてきたのです。 4.おわりに   野洲に磨崖仏が在す、ということは大分前から聞いていました。  ふとしたきっかけで急に思い立ち、ようやく対面を果たすことができました。   我が家から磨崖仏近くの野洲中学校までは、約1.2キロという至近距離  です。立派な史蹟が身近な所に残されていることを実感しました。   関連記事:1.三上山縁起        2.狛坂磨崖仏                     (散策:2008年1月18日)                   (脱稿:2008年1月31日) ------------------------------------------------------------------
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