古民家再生、伝統工法の復興に向けて

建築基準法の壁

 ただ、伝統工法で家を建てることを遂行するに当り、一番の問題点は、現行の建築基準法でした。皆さんもよく御存知の通り、家は壁で持っているという基準法の決まりです。これは壁量計算という、まったく、構造計算でもなんでもない「木造2階建てまでの建物には構造計算は不要です。」という法条文のもとに「構造計算をしなくてもよい、しかしまあ、それだけじゃなんだからちっと壁面の数でも決定しておこうか」というような主旨の元で壁量計算という新たな項目を造り、確認申請を提出する際、この計算義務化しました。

 この計算は非常に簡単なもので、一般の人でも誰でも出来るような代物であったことから、設計士の資格を有する人たちにとっては、いとも簡単に自分の手で計算でき、又チェックする側もいとも簡単に出来るわけで、木造においては構造計算不要な為、設計士達がどんどん確認申請業務を日常ごとくこなし、いわゆる飯の種になり得たわけです。

 鉄骨や、RC造りになれば常に構造計算が必要で、この分野においては同じ建築士でも専門屋さんがいます。ここで構造設計をして構造計算され、プランが構造設計のために変更になることすらしばしば起きていたわけです。デザイナーと構造屋さんとが分離作業で建物の精度、強度を守って来た長い歴史があります。しかし、木造においてはこの歴史がありません。なぜなら、木造は構造計算しにくい事と、構造計算そのものがそもそも難しい、設計士の中でも100人に1人いるかいないかの割合でしか構造屋さんが育ちません。殆どの設計士はデザイナーさんになってしまう、国の制度として、このデザイナーさんに大きな表彰を与え、構造屋さんは、難しいにもかかわらずいつも黒子の存在としてしか存在しえないのが現状です。

 姉歯建築士の偽装問題の根源をなすものは、偽装を見破るのに見破る人達があまりにも少なすぎるということと、黒子の存在としてしか構造屋さんが存在しえなかったことなのです。これは鉄筋、鉄骨の世界の話ですが、木造の場合、その黒子すら存在しえないのですから推して知るべしといえます。

 木造は構造的には何ら考察がなされていないということが言えます。その変わりにそのこと正統化するために壁量計算において仕様規定なるもの設け、やれコンクリート立ち上がり基礎が必要とか、土台と立ち上がり基礎をアンカーボルトでしばれとかスジカイを入れ、耐力壁では柱とかパネルとか金物で土台固定せよとか、がんじがらめするしか、構造計算不在という立場と正統化出来なかったというのが本当の所ではないでしょうか。

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