■かまいたちの夜リレー小説篇とは

ゲーム「かまいたちの夜」に登場する人物で、ペンションシュプールでの出来事をリレー小説にしてみようという企画です。

 

「かまいたちの夜リレー小説篇」 ログ

  真っ白な銀世界。その中を颯爽と滑り降りてくるのは、僕ではなくて…真理。
ずざざざーと、僕の横にかっこよく到着。
「透、なかなか上達したじゃない」
ようやくボーゲンができるようになった僕に微笑みかける真理。僕の大学の同級生。美人でスタイルが良くて…そんな彼女がおじさんの経営するペンション宿泊の旅行に僕を誘ってきた。どうして僕が誘われたか、謎だけどこれを機会に真理と親しくなろう、と思っている。

夕方に近づく頃、さっきまでの青空が嘘のように雲に覆われ始めた。
「なんだか雲行きあやしくなったね。」
「今夜は吹雪くかもね。早くペンションに向かったほうが良いね」
僕たち二人は、真理のおじさんの経営するペンション「シュプール」に向かった。ペンションに着く頃には吹雪になっていた。
「早めに帰ってきて正解だったね。」
僕たちはそう言いながら、雪深い山の中にある、ロッジ風のおしゃれなペンションに足を踏み入れた。
  カランカラン…ドアを開くと、まず呼び鈴の音が僕達を迎えてくれる。どこか懐かしくて暖かい響きだ。
「はーい、いらっしゃいませ…あら。」
玄関口に現れたのは、優しそうな小柄な女性だった。年のころは30代から40代前半といったところか。
「おばさん、お久しぶりです。」
真理がペコリと頭を下げる。つられて僕もちょこんとお辞儀をした。どうやらこの女性は、オーナーである真理のおじさんの奥さんらしい。
「まあまあ、真理ちゃん。大変だったでしょう吹雪いてきちゃって。ちょっと待っててね。」
オーナー夫人はいったん引っ込むと、バスタオルを2枚抱えて来る。今度は、中年の男性がエプロンで手を拭きながら一緒に現れた。

「ああ、いらっしゃい、真理ちゃん。」
「おじさん、明日までお世話になります。お洒落なペンションでびっくりしちゃった。」
僕らはおばさんに手渡されたバスタオルで雪を払い、髪を拭きながらおじさんに挨拶した。
おじさんは満面の笑みだ。きっと自慢の姪なのだろう。
閑古鳥が鳴いているから…という理由で招かれたペンションだが、奥の広間には人影が見えるし、おじさんもおばさんも暇なようには見えない。きっとかわいい姪のために便宜を図ってくれたに違いない。
「こちらは、一緒にスキーに来た…」
なんとなく微笑しながら調子を合わせてきた僕だが、ついに紹介のときがやってきた。
真理が僕をどう紹介するか、聞いてみたい気もする。それともここは男らしく、自分で切り出すべきか。
僕は・・・・・
  「真理の彼女の…」
僕は男らしく切り出そうとした。しかし、彼女という言葉に敏感に反応した真理は、僕に肘鉄をくらわした。ぐっ…
「私の大学の同級生の透君です。」
おじさんたちには、にこにことした顔を見せているが、ちらっと僕の方を見ると、何を言い出すのよ、と言った顔でにらまれた。おとなしくしとけば良かったか…。
そんな僕たちのやりとりを見ていたのか、小太りのおじさんがやって来た。
「ははは、若いっちゅうもんは、いいもんやな。そこの兄ちゃん、ふられたからって、あきらめたらあかんで。女っちゅうもんは、強引にいった方が案外ころっといくもんやで。」
まだ振られてなんかいないよ、と言いたかったがそこは我慢。
「ごめんなさいね、うちの人ったら。」
小太りのおじさんの横にいる女の人がすまなそうな顔で見ている。強引にこの人を奪ったのだろうか…おじさんには不釣合いなきれいな人だ。このおじさんが、あんなきれいな人と結婚できるんだから、僕もいけるかも。なんて思っていたら、
「透君、こちら宿泊客の香山誠一さんと、春子さん。大阪の会社の社長さんなんだよ。」
オーナーが紹介してくれた。
香山夫妻に、僕と真理の自己紹介しようか。今度は…
  「僕達、大学の同級生で。こちらはオーナーの姪の真理です。」
無難に答えた。
「そうかそうか、あの真理ちゃんがこんなに大きくなったか。」
「あのう…初めて会うんですが…」
そんなやりとりをしばらくした後、オーナーが荷物を置いてきたら?と声をかけてくれたので、僕達は2階にある部屋に向かった。残念ながら、僕と真理は別々の部屋だ。
「ああ、疲れた。」
日ごろ運動不足の僕は、かなり疲れていた。2つあるベッドの片方に荷物を放り投げて、もうひとつのベッドに身を投げた。うとうとしかけていたところ、コンコンというノックの音が聞こえてきた。誰だろう?
  「誰ですか?」そう言ってドアを開けると、そこには真理が立っていた。
  「夕食だって。」
どうやら、夕食のために起こしにきたようだ。僕と真理は、一階の食堂へ向かった。
席に着いたとたん、真理が小声で話し掛けてきた。
「ねえねえ、あの二人、あやしくない?」
真理の目線をたどると、部屋の中だというのに、黒いトレンチコート、帽子、サングラスをかけた男と、あごひげが生えた、山男のような人が、もくもくと食事をしていた。
「ねえ、透。あの二人、どんな関係だと思う?」
僕は…
 
  「知らない、でも、この場所には似つかない人たちだね。」
  「そうよね。山男みたいな人はともかく、もう一方のほうはどうみても場違いよ。」
  もう一度、2人の男性客を見てみた。帽子に、サングラス・・・まるで素顔を隠しているかのようだ。スキーをしに来たとも思えない、一体あの人たちは何をしにきたのだろうか、と僕は疑問を持った。
「わあ、おいしそう。」
真理の声にふと我に返ると、従業員らしい、ポニーテールの女の子がスープを運んできたようだ。
「へえ、ここのペンション、おじさんとおばさんの二人でやってるのかと思ったら、従業員も雇ってるんだ。」
「ああ、あなたがオーナーの。話には聞いています。スキーシーズンは、結構お客さんが多いので、バイトを雇っているんですよ。」
話によると彼女、みどりさんともう一人、俊夫さんという人がバイトで雇われているらしい。真理はみどりさんと話に花を咲かせていて、さっきの二人組のことは忘れてしまったようだ。みどりさんに、二人組のことを聞いてみようか、直接すぎるから、宿泊客のことをそれとなく聞いてみようか・・・真理のおじさんのペンションなのに、こんなことを聞くのは失礼にあたるだろうか・・・僕は悩んだところ・・・
  聞いてみると、「あぁあの二人?あの二人は私の友達
  に騙された人
  達なんだー。」とおじさんは笑顔で言った
  「ちょっとおじさんそれ本当なの!?」と真理はびっくりしたように聞いた。
真理じゃなくても普通の人ならびっくりするはずである。
友達に騙された人なんだと笑顔で言われたら・・・。
「ちょ、ちょとまってよ、冗談だよ。確かに友人の友達だけど騙されてなんかいないよ!」
あまりにも真理が本気にしたため逆におじさんもびっくりしたようだ。

おじさんがいなくなると、それとなく真理に聞いてみた。
「おじさんっていつもああなの・・・?」 
  すると、真理は困ったような顔をしてこう言った。
「これが、なけりゃ…ね」
どうやら、オーナーの小林さんはついつい冗談を言うクセがあるようだ。
「おじさんはね、このペンションを経営する前には“山伏”だったの。
“違いの分かる大人の山伏大会”で優勝したことがあるんだけど…。この調子で冗談を言い歩くものだから、“ザ・ダンディー山伏会”から勧告を受けてしまって…。」
そうか、それでこのペンションの経営に踏み切ったというわけか。あの著名な“ザ・ダンディー山伏会”から勧告を受けたのであっては、ここは一発得意のギャグを効かせて、全く関連のない仕事に進みたくなるのも分からなくもない。僕は、オーナーに親近感を感じた。
その時だった…
  「ぐわあああああああああああ!!!」
今まで聞いたことのないおぞましい悲鳴がきこえた
  「な、なんだ?」
「誰かの悲鳴?」
僕と真理は顔を見合わせた。
「俊夫!?」
「俊夫君!」
ばたばたと、みどりさんと小林さんが駆け出して行った。
「俊夫って…バイトの人?」
真理は不安そうに僕の手を握って来た。僕も小林さんたちについて行くべきか…真理についててやるべきか…
  「真理ちょっとここで待ってて!!」僕は言った。
「いやここにいて!!」真理は言う。
「でも・・・・」思わずなにもいえなくなった。
「わたしもいく!!」真理が言った。
「そっか、じゃぁいこう!」
2人は走って小林さんたちについって言った。

  走っていると真理はころんだ。
「あぁ!」
「お前らは後からこい!
 おれはさきにいく!」小林さんは言った。
「あぁ。」僕は言った。
真理は
  「ごめんね。」と言った。
足を見るとけがをしていた。
「・・・・・!!」
  それにしてもただ走っていただけでそんな簡単に転ぶだろうか・・・?
よく辺りを見ると何かが近くに落ちていた。
『?』
鉄アレイだった。
なんでこんなところに鉄アレイが?
よく調べようとした瞬間・・・!
『うわっ!』
思わず手をひっこめてしまった。
なんとそこには真っ赤な血がたっぷりとついていた!
『な、なんで・・・!』
真理と僕は明らかに不自然なその血をただ呆然と眺めていた。
その時どこからか悲鳴が聞こえてきた。

[ 次のページ ]