「鮭児の時知らずタン」  第27話
「歩けるわよ!でも、もう真っ直ぐに歩く事もまともに出来なくなったのに!足を動かすだけでも痛いのに、それでも貴方は私に歩き続けろっていうの!?」
 お姉さんは泣きながら時知らずタンに言いました。
「そうです。歩いて下さい!」
 お姉さんはまた時知らずタンを叩きました。
「貴方は!貴方は普通に歩けるから!そんなひどい事が言えるのよ!」
 少しの胸の痛みを感じながら時知らずタンは言いました。
「そうです!私はまだ歩けます!」
 お姉さんはまた時知らずタンを叩きました。それでも時知らずタンは言いました。
「私はまだ歩けます。そうです。まだ、歩けます。だから、私と一緒に歩いて下さい。真っ直ぐ歩けないなら私がそばにいます。右目が見えないのなら、私が目になります。だから…」
 耐えきれず時知らずタンは泣き出しました。
「だから、私と一緒に歩いて下さい…!!」
 お姉さんは泣きながら時知らずタンをたたき続けました。
「ひどいよ…」
 でも、もう時知らずタンを叩く手に力が入りませんでした

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