「鮭児の時知らずタン」  第28話
 お姉さんは手を振り上げたまま振り下ろす事が出来ず、グスグスと泣きました。
「お姉さん、私…。私、馬鹿だから、みんながどこに向かっていたのかまだ分からないんです」
 口が切れてしまって、口を開くと痛かったけどゆっくりと泣くのを堪えながら、噛み締めるように言いました。
「もうみんなは行ってしまいました…。私一人じゃもうどこに行けばいいか分かりません……、お願いです。見捨てないで下さい。お願いですから、私を見捨てないで下さい…」
 もう泣かない。だから…
「真っ直ぐ歩けないなら私がそばにいます。右目が見えないのなら、私が目になります。だから…、私の道しるべになって下さい…」
 だから、私はお姉さんと歩いていきたい。時知らずタンはそう思いました。

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