「鮭児の時知らずタン」 第29話
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お姉さんは時知らずタンの目を見て、もう振り上げた手を下ろす事が出来なくなりました。 時知らずタンはもう力が抜けてしまったお姉さんの下から何とか抜け出すと、お姉さんの手を下ろしてギュッと抱きしめました。 「暖かい…。お姉さん、とっても暖かい…。生きてます。私も…、お姉さんも」 時知らずタンはお姉さんの涙の暖かさを腕に感じました。 「…私、あなたにひどい事したわ…」 「私を群れに戻そうとしてくれたんですよ」 「…私、あなたを何度も殴ったわ…」 「だからどうしたんですか…?」 「………私…、私……、ごめんなさい…」 お姉さんは耐えきれなくなって、謝りながら泣きました。今までとは違う泣き方で泣きました。それは何だか子供みたいな泣き方で、時知らずタンはお姉さんの事が可愛いなぁと思いました。 だから、もっと…、ギュッとお姉さんを抱きしめました |