「鮭児の時知らずタン」  第51話
「でも、流石に食べきれなかった。飲み込みきれなくて、慌てて吐き出そうとしたけれどヒレが喉に引っかかってどうしても吐き

出せなかった」
 お姉さんはシャチの口から血が流れているのを見つけました。
「血が…。さぞ苦しかったでしょう…」
「ええ、のたうち回ったわ。口の中にある肉をかみ砕いて尾びれを噛み千切って、無理矢理飲み込もうとしたけど、喉に詰まって

しまって…、吐く事も飲み込む事も出来なかった。そのうち段々息まで出来なくなった。なんだか、もうボーッとしてきて…。寂

しかった」
「寂しかった?」
「ええ。寂しいと思った。ずっと長い間一人で生きてきて、そんな事思った事はなかったのに…、可笑しいわね」
 そう言ってシャチは少し寂しそうに笑いました。その笑い声は何だか悲しいと時知らずタンは思いました。
 ふと時知らずタンはどこかで近くでカニさんが食べ物を取り合う声が聞きました。

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